岩手県盛岡市西仙北1-17-18
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盛岡市は岩手県の県庁所在地で、1889年の市町村制施行により人口約2.9万人の都市として誕生しました。およそ400年の伝統を持つ南部鉄器や、伝統食であるわんこそばが有名です。近年では1992年4月に都南村、2006年1月に玉山村と合併し、2008年4月に中核市へと移行しています。中核市とは、地方自治法に基づき政令によって指定される人口20万人以上の市を指します。2021年現在、62市が指定されています。
盛岡市の2021年8月1日現在の人口は約28.9万人(住民基本台帳による)です。国勢調査によれば、盛岡市の人口は2000年をピークに減少に転じています。2011年から2013年まで一時的に人口が増加しましたが、2014年以降は再び減少しています。なお、日本全体のピークは2008年、岩手県全体の直近のピークは1985年です(いずれも国勢調査をもとにした推計人口)。国立社会保障・人口問題研究所によれば、現状のままでは盛岡市の人口は2045年には約24.3万人に減少すると推計されています。
2020年10月1日現在における65歳以上の高齢者人口は約8.0万人で、高齢化率は28.0%です。2020年10月の日本全体の高齢化率は28.8%であることから、盛岡市の高齢化率は全国よりもやや低いものの、多くの地方自治体と同様に、高齢者の人口は増加傾向です。
健康寿命とは、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間を指します。日常生活に制限のない、自立した状態で過ごせる期間と言えます。
下記は、盛岡市の平均寿命と健康寿命を示した表です(カッコ内は全国平均)。盛岡市の健康寿命は、寝たきりの状態である期間を要介護2〜5以外として独自に算出されています。平均寿命と健康寿命との差(不健康である期間)が長くなるほど医療費や介護費がふくらみ、公費負担が増大する要因になります。
男性 | 女性 | |||||
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2010年 | 2015年 | 増減 | 2010年 | 2015年 | 増減 | |
平均寿命 | 79.4歳(79.6歳) | 80.4歳(80.8歳) | +1.0 | 86.4歳(86.4歳) | 86.8歳(87.0歳) | +0.4 |
健康寿命 | 77.79歳 | 78.9歳 | +1.11 | 82.9歳 | 83.13歳 | +0.23 |
不健康である期間 | 1.61年 | 1.5年 | -0.11 | 3.5年 | 3.67年 | +0.17 |
盛岡市の平均寿命は全国平均よりわずかに低いです。健康寿命は介護保険要介護認定に基づく方法で算出されているため全国平均と比較することはできませんが、2010年と2015年を比較すると男女ともに延びが見られ、とくに男性の健康寿命は+1.11と順調に延びています。盛岡市では「第2次もりおか健康21プラン」に沿って健康寿命の延伸を目指した取り組みが行われています。
1981年以降、日本人の死因の第1位はがんです。以降、生活習慣病を主因とする疾患が上位を占めています。生活習慣病とは、生活習慣(食、運動、喫煙、飲酒など)が影響する一部のがんや心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)、糖尿病などを指します。人口動態調査によると、盛岡市と日本全体の死因とその割合は下記のようになっています。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
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盛岡市※2019年 | 悪性新生物(がん)26.8% | 心疾患15.2% | 脳血管疾患9.9% | 老衰8.0% | 肺炎6.2% |
日本全体※2019年 | 悪性新生物(がん)27.3% | 心疾患15.0% | 老衰8.8% | 脳血管疾患7.7% | 肺炎6.9% |
盛岡市のおもな死因順位を見ると、日本全体の3位と4位が逆転しており、脳血管疾患の割合が日本全体より1.1ポイント高い値となっています。また、三大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)で亡くなる割合は51.9%で、日本全体の50.0%を1.9ポイント上回っています。脳血管疾患が多い傾向は県全体でも見られ、岩手県の脳血管疾患の年齢調整死亡率※(2015年)において男性が全国ワースト3位、女性が全国最下位でした。岩手県民が脳血管疾患で亡くなる割合が高い要因のひとつとして、岩手県民の食塩摂取量が多いことが挙げられています。
※年齢調整死亡率:人口構成の異なる集団間での死亡率を比較するため、死亡率を一定の基準人口に当てはめて算出した値のこと
日本では、厚生労働省の指針に基づき、自治体主導で実施されている「5大がん検診」と呼ばれるがん検診があり、全国各自治体とも受診率の向上を目指しています。5大がん検診は、胃がん、子宮がん(子宮頸がん)、肺がん、乳がん、大腸がんの5つの検診を指します。
5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく住民票のある自治体で受診することができます。検診の種類によって対象年齢や頻度は異なりますが、受診費の一部もしくは全額が公費で負担されます。ただし、企業に勤めている方などは、企業による健康診断にがん検診が含まれていることが多いため、自治体主導のがん検診受診者は国民健康保険加入者や後期高齢者医療保険加入者を含む、「勤務先などでの受診機会のない人」が中心です。
盛岡市が実施しているがん検診の種類と費用は下記の通りです。太字は、盛岡市独自の取り組みです。
種類 | 検査項目 | 対象者 | 受診間隔 | 費用 |
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胃がん | 問診、胃部X線検査(バリウム)または胃内視鏡検査(胃カメラ) | 40歳以上 | 年1回 | ●バリウム・集団:1,300円・個別:2,800円●胃カメラ・個別のみ:3,600円※内視鏡検査前に必要な感染症検査やピロリ菌検査などを実施した場合は、別途自己負担あり |
子宮頸がん | 問診、内診、子宮頸部細胞診 | 20歳以上女性 | 年1回 | 1,800円 |
肺がん | 問診、胸部X線検査、喀痰検査※喀痰検査は医師が必要と認めた方のみ | 40歳以上 | 年1回 | ・胸部X線検査:1,000円・胸部X線検査+喀痰検査:1,700円 |
乳がん | 問診、視触診、マンモグラフィ | 40歳以上女性 | 2年に1回 | 1,900円 |
大腸がん | 問診、便潜血検査 | 40歳以上 | 年1回 | 1,100円 |
前立腺がん | 問診、血液検査(PSA値) | 55歳以上男性 | 年1回 | 1,000円 |
盛岡市のがん検診は、基本的には厚生労働省の指針に沿っています。胃がん検診で胃内視鏡検査(胃カメラ)を40歳から受けられるのが特徴です(国の指針では50歳以上)。また、国の指針にはない前立腺がん検診も55歳以上の男性を対象に実施しています。
盛岡市のがん検診の無料クーポンは下記の通りです。
種類 | 対象者※年齢は当該年度3月31日時点で判定 | 無料になる検査項目 |
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子宮頸がん | 21歳の女性 | 問診、視診、子宮頸部細胞診 |
乳がん | 41歳の女性 | 問診、視触診、マンモグラフィ |
また、70歳以上の方は無料でがん検診を受診することができます。 その他、下記に該当する方は事前申請によりがん検診などの検診費用が無料となります。 ・生活保護受給中の方 ・中国残留邦人など支援給付制度が適用される方 ・市民税が、本人を含め世帯全員が非課税(年税額0円)の方 ・65歳以上で後期高齢者被保険者証をお持ちの方(医療施設の窓口にて保険証を提示)
下記は、盛岡市が実施した2015年度から2019年度の各がん検診の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
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2015年度 | 10.2% | 21.8% | 17.8% | - | 15.0% |
2016年度 | 10.9% | 14.3% | 9.7% | - | 7.0% |
2017年度 | 11.2% | 13.0% | 9.3% | 16.9% | 6.7% |
2018年度 | 9.2% | 12.4% | 9.1% | 16.2% | 6.6% |
2019年度 | 9.4% | 12.3% | 8.7% | 15.6% | 6.3% |
下記は、自治体主導のがん検診における2015年度から2019年度の日本全体の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
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2015年度 | 6.3% | 23.3% | 11.2% | 20.0% | 13.8% |
2016年度 | 8.6% | 16.4% | 7.7% | 18.2% | 8.8% |
2017年度 | 8.4% | 16.3% | 7.4% | 17.4% | 8.4% |
2018年度 | 8.1% | 16.0% | 7.1% | 17.2% | 8.1% |
2019年度 | 7.8% | 15.7% | 6.8% | 17.0% | 7.7% |
盛岡市のがん検診受診率を見ると、胃がん・肺がん検診は日本全体を上回っていますが、そのほかの検診は日本全体をやや下回っています。近年の推移としては全検診とも受診率は低下傾向にあり、日本全体においても同様の傾向を示しています。
2016年度から一部の受診率が顕著に低下している要因としては、地域保健・健康増進事業報告における受診率の算定法の対象者が変更されたことが考えられます。また、過去に国のがん検診推進事業として、大腸がん検診、乳がん検診では40~60歳の間で5歳おき、子宮頸がん検診では20~40歳の間で5歳おきに無料クーポンが配布されていました。しかし、2016年から大腸がん検診は事業の対象外になり、2017年から子宮頸がん検診と乳がん検診の無料クーポンは検診開始年齢(子宮頸がん検診20歳、乳がん検診40歳)のみになりました。これら無料クーポン対象外の影響が受診率低下につながっていると考えられています。このため、自治体によっては独自の無料クーポンを配布したり、キャンペーンを実施したりして、受診率向上に努めています。
がん検診の受診率向上やがん予防に向けて、盛岡市では次のような取り組みを行っています。
・肝炎ウイルス検査の実施 一部の市民を対象にB型およびC型肝炎ウイルス検査を実施。肝硬変や肝臓がんの発症リスクとなる肝炎ウイルスの早期発見と早期治療を目的としている。対象は過去に一度も肝炎ウイルス検診の受診歴がない40歳以上の市民。受診費は40歳無料、41歳以上1,000円。
・「検診だより」を利用したがん検診の啓発活動 「検診だより」は盛岡市健康増進課が作成している折り込みチラシ。毎年検診が始まる時期に「広報もりおか」とともに全戸配布することでがん検診の受診を促している。盛岡市で実施する検診の内容や、検診を実施している医療機関、検診無料クーポン、がん検診の自己負担額などについてわかりやすく記載されている。
・定期健康相談の開催 生活習慣病予防や健康づくりについて保健師や管理栄養士などに無料で個別相談できるイベントを定期開催している。開催場所は各地区の保健センターなど。健康相談に加えて体重と体組成計の測定(体脂肪率、内臓脂肪レベル、筋肉量、基礎代謝量、推定骨量、体内年齢など)、血圧測定を無料で受けられる(要事前予約)。相談時間は一人あたり20分程度。事前に盛岡市健康増進課へ電話申し込みが必要(2021年度は一部日程中止)。
盛岡市では、盛岡市在住の国民健康保険被保険者および後期高齢者医療被保険者を対象に、人間ドックの費用の一部が助成されます。助成内容は下記の通りです。
【対象者】 盛岡市在住の国民健康保険被保険者で指定の医療施設で人間ドックを受診する方 ※同じ年度内ですでにがん検診を受診した方、特定健康診査もしくは後期高齢者健康診査をすでに受診した方は原則対象外
【助成額】 20,000円(乳がん検診または子宮がん検診を受診する場合は24,000円)
助成対象となるには、いくつかの条件があります。 ・受診は市内の契約医療施設のみ ・40歳以上の国民健康保険被保険者は「特定健康診査」と「人間ドック」を、後期高齢者医療被保険者は「健康診査」と「人間ドック」を、同日に同一医療機関で受診 ・同一年度内に1回のみ
人間ドックの助成申し込み方法や詳細については盛岡市サイトで確認してください。
盛岡市は健康寿命の延伸を目標として「第2次もりおか健康21プラン」に沿った市民の健康づくりを推進しています。市民の健康増進のために行われている盛岡市のユニークな取り組みについてご紹介します。
・もりおか健康得とくポイント 市民の健康づくりを推進する盛岡市独自のポイント事業「もりおか健康得とくポイント」を実施。おおむね20歳以上の盛岡市民が対象。事業対象の健康教室に参加をすると50ポイント、また禁煙チャレンジで50ポイント、さらに禁煙達成者には100ポイントを付与。獲得したポイントは「MORIO-Jポイント」として1ポイント=1円で加盟店などにて使用することができる。
・ほねケア検診(骨粗しょう症予防検診) 骨粗しょう症予防のため、かかとの骨の強度を測定する「ほねケア検診」を実施。予防のための栄養と運動の指導も行っている。費用は一律1,500円で、対象は30〜70歳の盛岡市民。年1回まで。ただし、すでに骨粗しょう症の診断を受けたり、治療したりしたことがある方、以前に精密検査の対象となったことがある方は対象外。
・幅広い検診者を対象とした健康診査の運用 健康診査の受診を促すことで健康意識を高めたり、生活習慣病などの病気を早期発見したりする機会を提供。盛岡市は健康診査にいくつかの種類があり、一般的な健康診査(40歳以上の生活保護受給者などが対象)に加えて、18〜39歳の女性を対象にした「女性健康診査」や、寝たきりで介護が必要な40歳以上の方を対象にした「訪問診査」、またその介護者を対象にした「介護家族訪問診査」が運用されている。女性健康診査の自己負担額は1,400円。訪問診査ならびに介護家族訪問診査の費用は無料で、健康診査と同等の検査を自宅で受けることができる。詳細は盛岡市サイトを参照。
※本記事は2021年11月時点の情報を元に作成しています。