京都府宇治市六地蔵奈良町9番地
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宇治市は京都府南部に位置する市で、京都へ電車で約20分、大阪へは約50分の場所にあります。全国有数のお茶どころであり、特産品の宇治茶は高級茶として知られています。また、世界遺産である平等院や宇治上神社をはじめとする史跡も数多くのこっています。
2022年1月1日現在、宇治市の人口は約18.4万人(住民基本台帳による)です。国勢調査によれば、宇治市の人口は1955年以降増加傾向で推移し、2010年にピークを迎えたのち2020年現在まで微減傾向です。なお、京都府の人口ピークは2004年、日本全体のピークは2008年です(国勢調査をもとにした推計人口)。国立社会保障・人口問題研究所の2018年時点の推計によれば、宇治市の人口は現状のままでは2045年には約12.9万人に減少するとされています。
2021年10月1日現在、宇治市の65歳以上の高齢者人口は約5.5万人で、高齢化率は29.8%です。2020年10月の日本全体の高齢化率は28.8%であることから、宇治市の高齢化率は全国よりもやや高いと言えます。多くの地方自治体と同様に生産年齢人口(15〜64歳)は減少傾向にある一方、高齢者の割合は上昇しています。
健康寿命とは、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間を指します。日常生活に制限のない、自立した状態で過ごせる期間と言えます。
下記は、2016年の宇治市の平均寿命と健康寿命、およびその差です(カッコ内は全国平均)。宇治市の健康寿命・平均寿命は、「健康日本21(第2次)」で用いられているものと同様のプログラムで算出しています。平均寿命と健康寿命との差(不健康である期間)が長くなるほど医療費や介護費がふくらみ、公費負担が増大する要因になります。
平均寿命※2016年 | 健康寿命※2016年 | 不健康である期間※2016年 | |
---|---|---|---|
男性 | 82.01年(80.98年) | 80.32年(79.47年) | 1.69年(1.51年) |
女性 | 87.64年(87.13年) | 83.91年(83.84年) | 3.73年(3.29年) |
2016年現在の宇治市の健康寿命は、男性80.32年、女性83.91年です。男女とも平均寿命と健康寿命のいずれも全国平均を上回っている一方で、日常生活に制限のある「不健康である期間」(平均寿命と健康寿命の差)も全国平均をやや上回っています。このことから、宇治市民は全国平均より寿命が長いものの、寝たきりなどの状態にある期間も比較的長いことがうかがえます。宇治市では「宇治市健康づくり・食育推進計画」を策定し、市民の生活習慣病予防やがん検診受診率向上を通じて健康寿命の延伸に取り組んでいます。
1981年以降、日本人の死因の第1位はがんです。以降、生活習慣病を主因とする疾患が上位を占めています。生活習慣病とは、生活習慣(食、運動、喫煙、飲酒等)が影響する一部のがんや心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)、糖尿病などを指します。人口動態調査によると、2019年の宇治市と日本全体の死因およびその割合は下記のようになっています。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
---|---|---|---|---|---|
宇治市※2019年 | 悪性新生物(がん)30.3% | 心疾患15.6% | 脳血管疾患7.4% | 肺炎6.4% | 老衰5.4% |
日本全体※2019年 | 悪性新生物(がん)27.3% | 心疾患15.0% | 老衰8.8% | 脳血管疾患7.7% | 肺炎6.9% |
宇治市の死因順位をみると、日本全体では老衰が3位であるのに対して、宇治市では老衰が5位と低いのが特徴的です。老衰の割合が日本全体よりも3.4ポイント下回っている一方で、がんの割合は日本全体を3.0ポイント上回っています。この要因のひとつとして宇治市のがん検診受診率が低いことが考えられます(「4-1.宇治市のがん検診受診率の現状」参照)。定期的にがん検診を受けてがんを早期発見・早期治療することが、健康的に長生きをするために重要であると言えます。
日本では、厚生労働省の指針に基づき、自治体主導で実施されている「5大がん検診」と呼ばれるがん検診があり、全国各自治体とも受診率の向上を目指しています。5大がん検診は、胃がん、子宮がん(子宮頸がん)、肺がん、乳がん、大腸がんの5つの検診を指します。
5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく住民票のある自治体で受診することができます。検診の種類によって対象年齢や頻度は異なりますが、受診費の一部もしくは全額が公費で負担されます。ただし、企業に勤めている方などは、企業による健康診断にがん検診が含まれていることが多いため、自治体主導のがん検診受診者は国民健康保険加入者や後期高齢者医療保険加入者を含む、「勤務先などでの受診機会のない人」が中心です。
宇治市が実施しているがん検診の種類と費用は下記の通りです。太字は、宇治市独自の取り組みです。
種類 | 検査項目 | 対象者 | 受診間隔 | 費用 |
---|---|---|---|---|
胃がん | 問診、胃部X線検査(バリウム) | 40歳以上 | 年1回 | 1,400円 |
子宮頸がん | 問診、視診、内診、子宮頸部細胞診 | 20歳以上で西暦偶数年生まれの女性 | 2年に1回 | 1,600円 |
肺がん | 問診、胸部X線検査、喀痰検査※喀痰検査は満50歳以上で喫煙歴により推奨した方のみ | 40歳以上 | 年1回 | 無料※喀痰検査は別途容器代300円 |
乳がん | 問診、視触診、マンモグラフィ | 40歳以上で西暦偶数年生まれの女性 | 2年に1回 | 1,600円 |
大腸がん | 問診、便潜血検査 | 40歳以上 | 年1回 | 600円 |
前立腺がん | 問診、血液検査(PSA値) | 50歳以上で西暦偶数年生まれの男性 | 2年に1回 | 700円 |
宇治市のがん検診は、基本的には厚生労働省の指針に沿っています。特徴として、国の指針にはない前立腺がん検診を50歳以上の男性に2年に1度実施しているほか、肺がん検診の自己負担額が無料(喀痰検査は別途300円)です。
宇治市のがん検診の無料クーポンは下記の通りです。
種類 | 対象者※年齢は当該年度4月1日時点で判定 | 無料になる検査項目 |
---|---|---|
子宮頸がん | 20歳女性 | 問診、視診、内診、子宮頸部細胞診 |
乳がん | 40歳女性 | 問診、視触診、マンモグラフィ |
受診日に75歳以上の方は無料で受診できるほか、75歳未満で次のいずれかに該当する方は事前に申し込みをすることでがん検診の自己負担が無料になります。 ・市民税非課税世帯の方 ・生活保護世帯の方・中国残留邦人などの支援給付世帯の方
詳細は宇治市サイト等で確認してください。
下記は、宇治市が実施した2015年度から2019年度の各がん検診の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
---|---|---|---|---|---|
2015年度 | 1.3% | 11.0% | 2.0% | 16.1% | 7.8% |
2016年度 | 2.5% | 8.2% | 2.0% | 13.1% | 4.7% |
2017年度 | 2.3% | 8.3% | 2.0% | 13.0% | 4.4% |
2018年度 | 2.1% | 9.2% | 1.7% | 14.0% | 3.9% |
2019年度 | 1.9% | 8.5% | 1.5% | 13.1% | 4.0% |
下記は、自治体主導のがん検診における2015年度から2019年度の日本全体の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
---|---|---|---|---|---|
2015年度 | 6.3% | 23.3% | 11.2% | 20.0% | 13.8% |
2016年度 | 8.6% | 16.4% | 7.7% | 18.2% | 8.8% |
2017年度 | 8.4% | 16.3% | 7.4% | 17.4% | 8.4% |
2018年度 | 8.1% | 16.0% | 7.1% | 17.2% | 8.1% |
2019年度 | 7.8% | 15.7% | 6.8% | 17.0% | 7.7% |
宇治市の受診率はすべての検診において日本全体を大幅に下回っています。とくに胃がん・肺がん検診は1〜2%台で推移しており、受診率の向上に課題があると言えます。また、そのほかの検診の受診率も2016年度以降おおむね横ばいで推移しています。受診者の費用負担を軽くするなど、がん検診への市の取り組みが期待されます。
日本全体のデータにおいて、2016年度から一部の受診率が顕著に増減している要因としては、地域保健・健康増進事業報告における受診率の算定法の対象者が変更されたことが考えられます。また、過去、国のがん検診推進事業として、大腸がん検診、乳がん検診では40~60歳の間で5歳おき、子宮頸がん検診では20~40歳の間で5歳おきに無料クーポンが配布されていました。しかし、2016年から大腸がん検診は事業の対象外になり、2017年から子宮頸がん検診と乳がん検診の無料クーポンは検診開始年齢(子宮頸がん検診20歳、乳がん検診40歳)のみになりました。これら無料クーポン対象外の影響が受診率低下につながっていると考えられています。このため、自治体によっては独自の無料クーポンを配布したり、キャンペーンを実施したりして、受診率向上に努めています。
宇治市では胃がんと肺がん検診を同日に受診できる環境を整備するなどの取り組みで受診率向上を目指しているほか、肝炎ウイルス検査を一部市民に実施してがん予防に取り組んでいます。
・胃がん検診と肺がん検診の同日実施 検診車で市内公共施設を巡回し、胃がん検診と肺がん検診をセットで実施。同日に受けられるようにすることで受診者の手間を減らし受診率の向上を目指している。
・肝炎ウイルス検診の実施 一部の市民を対象にB型・C型肝炎ウイルス検診を実施。肝硬変や肝臓がんの発症リスクとなり得る肝炎ウイルスの早期発見と早期治療を目的としている。対象は市の肝炎ウイルス検診を一度も受けたことがない40歳以上の方。費用は700円。年度内に40・50・60歳になる方には個別検診の案内が送付される。
・受動喫煙防止対策、禁煙対策の実施 学校、病院、行政機関の庁舎、児童福祉施設などでの施設では敷地内での喫煙を禁止しているほか、多人数が使用するオフィスやホテル、工場などでは原則屋内禁煙としている。また、保健師による健康相談の実施や、広報うじを利用した禁煙に関する情報発信を行っている。
宇治市では半日人間ドックもしくは脳ドックを受診する一部の国民健康保険加入者を対象に、人間ドックおよび脳ドックの補助を行っています。補助内容は下記の通りです。
【対象者】 宇治市国民健康保険に1年以上継続して加入している35歳以上の方および宇治市在住の京都府後期高齢者医療制度加入者
【自己負担額】 ・75歳未満 人間ドックのみ:12,540円(子宮がん検診ありの場合13,530円) 脳ドックのみ:9,900円 人間ドック・脳ドックの同時受診:20,790円(子宮がん検診ありの場合21,780円)
・後期高齢者医療制度加入者 人間ドック:30,800円(子宮がん検診ありの場合34,100円) ※定額11,000円を補助 ※脳ドックの補助は未実施
【定員】 ・75歳未満 人間ドック:1,700人 脳ドック:800人
・後期高齢者医療制度加入者 人間ドック:定員なし
市内の契約医療施設のみで受診した場合のみ、費用補助の利用が可能です。申し込み時期や詳細は宇治市サイトで確認してください。
「機能評価認定施設」とは、日本人間ドック学会が定めている「人間ドック健診施設機能評価」という評価基準をクリアした医療施設です。申請のあった人間ドック施設に対して日本人間ドック学会が受診者目線で審査している取り組みです。
審査項目には、「運営方針、組織の管理体制が確立しているか」や「検査の業務マニュアルは作成されているか」、「感染対策などの危機管理は徹底されているか」といった施設側の安全面に関する基準から、「受診者が快適に受診できるように配慮しているか」や「受診者のプライバシーに配慮しているか」といった受診者側に関する基準まで、多角的な評価基準があります。また、評価基準は5年ごとに改定され、更新審査が行われます。
全国で390以上の施設が認定されており、このうち宇治市内の機能評価認定施設は2022年1月現在で1件あります。
マーソでは、機能評価認定施設から人間ドックのプランを探すことができます。くわしくはこちらをご覧ください。
宇治市では「宇治市健康づくり・食育推進計画(2015〜2024年度)」を策定し、健康寿命日本一を目標に掲げて健康増進に取り組んでいます。そのなかでもユニークな取り組みを紹介します。
・宇治市オリジナル健康体操の作成 市民に体を動かす機会を促すことを目的に、宇治市オリジナル健康体操「うー茶んサンバ de 体操」や「チャチャ王国のおうじちゃま」を作成。宇治市サイトで動画を配信しているほか、市内のイベントなどで実施している。
・減塩の推進 宇治市は高血圧に関連した疾患が多いことから「適塩」をキーワードとして食塩を取りすぎない生活習慣を推進している。毎月19日を「食育の日」として市役所食堂で適塩ランチを販売しているほか、適塩に関するパンフレットの作成、健康イベントでの情報発信、宇治市サイトでの適塩レシピの公開を行っている。
・健康づくりや食育を推進するネットワークの立ち上げ 健康づくりや食育に興味を持った市民が、自分にあった地域団体に参加しやすくする取り組みとして地域ネットワーク「宇治市健康づくり・食育アライアンス」を発足。加入している団体は市民団体、大学、企業や病院など。地域団体同士がつながる場としても機能しており、複数団体による健康イベントや教室の開催などさまざまな活動を行っている。
・保健師や栄養士による健康教育出前講座の無料実施 世代ごとに適した体の動かし方や食生活について、保健師・栄養士が高齢者サロンなどに出向いて無料で健康講話や体操を実施。対象は20歳以上の市民および市内在住の団体やグループ。
※本記事は2022年1月時点の情報を元に作成しています。