奈良県奈良市七条町95-1
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奈良市は奈良県の県庁所在地です。東大寺や春日大社など、歴史ある文化財が多くのこる街として知られています。1898年の市政施行により奈良市となり、2002年に中核市に移行し、今日まで奈良県の中心として市政を続けています。中核市とは、地方自治法に基づき政令によって指定される人口20万人以上の市を指します。2021年現在、62市が指定されています。
2021年12月現在の人口は約35.5万人です。奈良市の人口は、2005年をピークに減少が続いています(いずれも住民基本台帳による)。なお、日本全体のピークは2008年、奈良県全体のピークは1999年です(いずれも国勢調査をもとにした推計人口)。国立社会保障・人口問題研究所によれば、現状のままでは2030年には約32.7万人に減少すると推計されています。
2021年6月現在における65歳以上の高齢者人口は約11.1万人で、高齢化率は31.5%です。2020年10月の日本全体の高齢化率は28.8%であることから、奈良市の高齢化は全国よりも進んでいると言えます。多くの地方自治体同様、人口が減少しているのに対して、高齢者の人口は増加しています。
健康寿命とは、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間を指します。日常生活に制限のない、自立した状態で過ごせる期間と言えます。
2021年現在、奈良市の健康寿命は公開されていません。参考として奈良県の平均寿命と健康寿命、およびその差をまとめました(カッコ内は全国平均)。平均寿命と健康寿命との差(不健康である期間)が長くなるほど医療費や介護費がふくらみ、公費負担が増大する要因になります。
奈良市 | 参考:奈良県 | |||
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平均寿命※2015年 | 平均寿命【A】※2015年 | 健康寿命【B】※2016年 | 不健康である期間【A-B】 | |
男性 | 81.9歳(80.8歳) | 81.4歳(80.8歳) | 71.39歳(72.14歳) | 10.01年(8.66年) |
女性 | 87.6歳(87.0歳) | 87.3歳(87.0歳) | 74.10歳(74.79歳) | 13.20年(12.21年) |
奈良県の2016年現在の健康寿命は、男性71.39歳、女性74.10歳です。都道府県の順位では、男性は28位、女性は40位です。全国平均と比較すると、奈良県の健康寿命は全国平均よりやや短く、不健康である期間は長い結果になっています。奈良県では、2022年度までに健康寿命を全国1位にすることを目指して健康づくりへの取り組みを続けています。
1981年以降、日本人の死因の第1位はがんです。以降、生活習慣病を主因とする疾患が上位を占めています。生活習慣病とは、生活習慣(食、運動、喫煙、飲酒等)が影響する一部のがんや心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)、糖尿病などを指します。人口動態調査によると、奈良市と日本全体の死因とその割合は下記のようになっています。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
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奈良市※2019年 | 悪性新生物(がん)29.6% | 心疾患14.9% | 老衰9.3% | 肺炎6.9% | 心疾患6.4% |
日本全体※2019年 | 悪性新生物(がん)27.3% | 心疾患15.0% | 老衰8.8% | 脳血管疾患7.7% | 肺炎6.9% |
奈良市の死因順位は3位まで日本全体と同じですが、4位と5位が逆になり、肺炎、脳血管疾患の順になっています。ポイント数では、1位のがんや3位の老衰が日本全体を上回っています。奈良市は日本全体に比べて高齢化率が高いため、老衰の割合も高いと考えられます。
日本では、厚生労働省の指針に基づき、自治体主導で実施されている「5大がん検診」と呼ばれるがん検診があり、全国各自治体とも受診率の向上を目指しています。5大がん検診は、胃がん、子宮がん(子宮頸がん)、肺がん、乳がん、大腸がんの5つの検診を指します。
5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく住民票のある自治体で受診することができます。検診の種類によって対象年齢や頻度は異なりますが、受診費の一部もしくは全額が公費で負担されます。ただし、企業に勤めている方などは、企業による健康診断にがん検診が含まれていることが多いため、自治体主導のがん検診受診者は国民健康保険加入者や後期高齢者医療保険加入者を含む、「勤務先などでの受診機会のない人」が中心です。
奈良市が実施しているがん検診の種類と費用は下記の通りです。太字は、奈良市独自の取り組みです。
種類 | 検査項目 | 対象者 | 受診間隔 | 費用 |
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胃がん | 問診、胃部X線検査(バリウム)または胃内視鏡検査(胃カメラ)※原則肺がん検診と同時実施 | ・バリウム:40歳以上・胃カメラ:50~70歳の偶数年齢の方 | ・バリウム:年1回・胃カメラ:2年に1回※同一年度内にはバリウムあるいは胃カメラのいずれか一方のみ受診可能 | ・バリウム:1,000円・胃カメラ:4,000円 |
子宮頸がん | 問診、子宮頸部細胞診、内診 | 20歳以上女性 | 2年に1回 | 2,000円 |
肺がん | 問診、胸部X線検査、喀痰検査 | 40歳以上 | 年1回 | 500円※喀痰検査希望者は別途 600円 |
肺がん低線量CT検診 | 問診、胸部低線量CT撮影 | 50歳・60歳 | 10年に1回 | 6,000円※同一年度内に胃内視鏡検診を受診の場合 5,000円 |
乳がん | 問診、マンモグラフィ | 40歳以上女性 | 2年に1回 | 2,000円 |
大腸がん | 問診、便潜血検査 | 40歳以上 | 年1回 | 1,000円 |
奈良市のがん検診は、基本的には厚生労働省の指針に沿っています。奈良市独自の取り組みとして、肺がん低線量CT検診があります。低線量で撮影することで、通常のCTよりも低い被曝量で検査を受けることができます。低線量であっても、胃がんを示す陰影の有無を調べるには十分であり、さらに、微小な肺がんや見つかりにくい部位に発生した肺がんには単純X線よりも有効であるとされています。奈良市では、肺がん低線量CT検診において、胃がん検診との原則同時受診とすることや、胃内視鏡検査の同一年度内受診によって受診費を減額するなどして受診率の向上を図っています。
奈良市のがん検診の無料クーポンは下記の通りです。
種類 | 対象者※当該年度内に下記の年齢に達する方 | 無料になる検査項目 |
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子宮頸がん | 20歳女性 | 問診、内診、子宮頸部細胞診 |
乳がん | 40歳女性 | 問診、マンモグラフィ |
また、次の方は無料でがん検診を受診することができます。 ・生活保護受給世帯の方 ・市民税非課税世帯の方
下記は、奈良市が実施した2015年度から2019年度の各がん検診の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
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2015年度 | 3.0% | 37.9% | 3.1% | 39.5% | 28.5% |
2016年度 | 2.3% | 18.3% | 1.3% | 19.6% | 10.4% |
2017年度 | 2.9% | 16.7% | 1.1% | 17.6% | 9.9% |
2018年度 | 3.4% | 16.5% | 1.0% | 16.9% | 9.4% |
2019年度 | 3.2% | 16.4% | 0.9% | 16.8% | 9.2% |
下記は、自治体主導のがん検診における2015年度から2019年度の日本全体の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
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2015年度 | 6.3% | 23.3% | 11.2% | 20.0% | 13.8% |
2016年度 | 8.6% | 16.4% | 7.7% | 18.2% | 8.8% |
2017年度 | 8.4% | 16.3% | 7.4% | 17.4% | 8.4% |
2018年度 | 8.1% | 16.0% | 7.1% | 17.2% | 8.1% |
2019年度 | 7.8% | 15.7% | 6.8% | 17.0% | 7.7% |
奈良市のがん検診受診率は、胃がん・肺がん検診が日本全体を大きく下回っています。子宮頸がん・乳がん・大腸がん検診は2015年度の受診率が高かったものの、その後は日本全国とほぼ同水準で推移しています。また、受診率はほとんどの検診で年々低下している傾向にあり、これは日本全体においても同様の傾向です。
2016年度から一部の受診率が顕著に低下している要因としては、地域保健・健康増進事業報告における受診率の算定法の対象者が変更されたことが考えられます。また、過去に国のがん検診推進事業として、大腸がん検診、乳がん検診では40~60歳の間で5歳おき、子宮頸がん検診では20~40歳の間で5歳おきに無料クーポンが配布されていました。しかし、2016年から大腸がん検診は事業の対象外になり、2017年から子宮頸がん検診と乳がん検診の無料クーポンは検診開始年齢(子宮頸がん検診20歳、乳がん検診40歳)のみになりました。これら無料クーポン対象外の影響が受診率低下につながっていると考えられています。このため、自治体によっては独自の無料クーポンを配布したり、キャンペーンを実施したりして、受診率向上に努めています。
がん検診の受診率向上やがん予防に向けて、奈良市では次のような取り組みを行っています。
・胃がんリスク検査(ピロリ菌抗体検査およびペプシノゲン検査)の無料実施 胃がんリスク検査として、ヘリコバクター・ピロリ菌感染の有無と胃の萎縮度の検査を実施。いずれも胃がんの有無を調べる検査ではなく、胃がんにつながるリスク因子の有無を調べる検査で、リスク因子が発見された場合には、適切な医療を受けることで胃がんの予防につなげることができる。奈良市では40〜70歳で、過去に胃がんリスク検診を受けたことがない人を対象に助成を行っており、対象者であれば無料で受診できる。
・肝炎ウイルス検査の無料実施 肝硬変や肝臓がんの発症リスクとなり得る肝炎ウイルスの検査を実施している。検査方法は問診と採血で、B型肝炎・C型肝炎の両方あるいはいずれかの検査が可能。受診費は無料。
・肺がん検診と胃がん検診の同時実施 肺がん検診と胃がん検診を原則同時受診としている。市民の手間を減らし、受診率の向上を目指している。
奈良市では、人間ドックの補助や助成は行っていませんが、特定健康診査の受診者を対象に、指定医療施設での頭部MRI検査の助成を行なっています。
【助成対象者】 40〜70歳の国民健康保険被保険者で、同一年度内に特定健康診査を受診している方
【自己負担額】 8,100円
詳細は奈良市サイトで確認してください。
「機能評価認定施設」とは、日本人間ドック学会が定めている「人間ドック健診施設機能評価」という評価基準をクリアした医療施設です。申請のあった人間ドック施設に対して日本人間ドック学会が受診者目線で審査している取り組みです。
審査項目には、「運営方針、組織の管理体制が確立しているか」や「検査の業務マニュアルは作成されているか」、「感染対策などの危機管理は徹底されているか」といった施設側の安全面に関する基準から、「受診者が快適に受診できるように配慮しているか」や「受診者のプライバシーに配慮しているか」といった受診者側に関する基準まで、多角的な評価基準があります。また、評価基準は5年ごとに改定され、更新審査が行われます。
全国で390以上の施設が認定されており、このうち奈良市内の機能評価認定施設は2021年12月現在2施設あります。
マーソでは、機能評価認定施設から人間ドックのプランを探すことができます。くわしくはこちらをご覧ください。
奈良市は、健康寿命の延伸に向け、市民の健康への意識づくり、行動変容、環境づくりの3つを基本方針に、さまざまな取り組みを行っています。ユニークな取り組みを紹介します。
・「奈良市ポイント」の運用 奈良市では、交通系ICカードなどと連携して使用できる独自のポイント制度。奈良市の各種健康イベントやセミナー、ボランディアなどへの参加で奈良市ポイントが付与される。たまったポイントは市の特産品への交換や、バス・タクシーの利用、加盟店舗での支払いなど、幅広く活用できる。
・歩数計アプリで健康づくり スマートホンに歩数計アプリをダウンロードしてウォーキングを行うことで、歩いた歩数などに応じて奈良市ポイントを受け取ることができる。
・20日ならウォーク 毎月20日には、イベントとして集団ウォーキングを実施している。「歩数計アプリで健康づくり」に参加している場合、20日ならウォークで8,000歩以上歩くと、通常のポイントに加えて追加で奈良市ポイントを受け取ることができる。
・健康プログラム「SmaNARA健康6ヶ月チャレンジ」 奈良市の健康増進課のサポートを受けながら健康増進を目指す6ヶ月のプログラム。健康管理シートを受け取り、目標を立ててプログラムに参加する。1ヶ月目と6ヶ月目にそれぞれ振り返りシートを記入して提出し、健康増進課からのフィードバックを受け取る。また、それぞれのタイミングで奈良市ポイントを受け取ることが可能。
・健康チェックコーナー 市の施設内に、健康器具が設置されている。この健康器具は誰でも利用することができる。また、月に1回以上健康チェックコーナーを利用した場合には奈良市ポイントを受け取ることができる。
※本記事は2021年12月時点の情報を元に作成しています。