島根県大田市久利町久利726-4
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松江市は島根県の県庁所在地で、山陰の中核都市として発展してきました。2005年に八束郡の7町村と、さらに2011年に八束郡東出雲町と合併し、現在の市域になりました。2018年には中核市に移行しています。中核市とは政令指定都市と並ぶ日本の大都市制度の一つであり、地方自治法にもとづき定める政令によって指定される人口20万人以上の市を示します。2021年4月1日現在、62市が指定されています。
2021年8月現在の人口は約20万人(住民基本台帳による)です。国勢調査によると、松江市の人口は2000年をピークに減少に転じています。なお、日本全体のピークは2008年、島根県全体の直近のピークは1985年です(いずれも国勢調査をもとにした推計人口)。
国立社会保障・人口問題研究所によれば、現状のままでは2045年には約17.5万人に減少すると推計されています。2021年8月現在における65歳以上の高齢者人口は約6万人で、高齢化率は29.9%です。2020年10月の日本全体の高齢化率は28.8%であることから、松江市の高齢化率は全国よりもやや高いと言えます。多くの地方自治体同様、人口が減少しているのに対して、高齢者の人口は増加しています。
健康寿命とは、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間を指します。日常生活に制限のない、自立した状態で過ごせる期間と言えます。
松江市では、国が定める「65歳の日常生活動作が自立している期間の平均」を健康寿命の指標としています。下記は、松江市の65歳時の平均余命、日常生活動作が自立している期間の平均、およびその差です。松江市ではその差を「要介護期間」としています。要介護期間(不健康である期間)が長くなるほど医療費や介護費がふくらみ、公費負担が増大する要因になります。
男性 | 女性 | |||||
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2008年 | 2013年 | 増減 | 2008年 | 2013年 | 増減 | |
65歳の平均余命(歳) | 18.83 | 19.14 | +0.31 | 24.20 | 24.28 | +0.08 |
65歳自立期間の平均(歳) | 17.24 | 17.60 | +0.36 | 20.94 | 21.03 | +0.09 |
要介護期間(年) | 1.59 | 1.54 | -0.05 | 3.26 | 3.25 | -0.01 |
松江市では、「健康寿命を延ばす」という基本目標を達成するために「65 歳平均自立期間」を伸ばすことをひとつの指標としています。2013年の「65歳平均自立期間」は、男性17.60歳、女性21.03歳で、2022年度までに男性17.93年、女性21.21年にすることを目標値として定めています。
1981年以降、日本人の死因の第1位はがんです。以降、生活習慣病を主因とする疾患が上位を占めています。生活習慣病とは、生活習慣(食、運動、喫煙、飲酒等)が影響する一部のがんや心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)、糖尿病などを指します。人口動態調査によると、松江市と日本全体の死因とその割合は下記のようになっています。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
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松江市※2019年 | 悪性新生物(がん)28.2% | 心疾患12.6% | 老衰10.1% | 脳血管疾患7.5% | 肺炎5.3% |
日本全体※2019年 | 悪性新生物(がん)27.3% | 心疾患15.0% | 老衰8.8% | 脳血管疾患7.7% | 肺炎6.9% |
松江市の死因順位は日本全体と同じです。生活習慣病の三大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)の合計割合を見ると、日本全体が50.0%なのに対し、松江市は48.3%と1.7ポイント低く、なかでも心疾患は2.4ポイント下回っています。一方で、老衰が1.3ポイント上回っており、日本全体と比較して相対的に老衰で亡くなる方が多く、高齢化が進んでいることが要因として考えられます。
日本では、厚生労働省の指針に基づき、自治体主導で実施されている「5大がん検診」と呼ばれるがん検診があり、全国各自治体とも受診率の向上を目指しています。5大がん検診は、胃がん、子宮がん(子宮頸がん)、肺がん、乳がん、大腸がんの5つの検診を指します。
5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく住民票のある自治体で受診することができます。検診の種類によって対象年齢や頻度は異なりますが、受診費の一部もしくは全額が公費で負担されます。ただし、企業に勤めている方などは、企業による健康診断にがん検診が含まれていることが多いため、自治体主導のがん検診受診者は国民健康保険加入者や後期高齢者医療保険加入者を含む、「勤務先などでの受診機会のない人」が中心です。
松江市が実施しているがん検診の種類と費用は下記の通りです。太字は、松江市独自の取り組みです。
種類 | 検査項目 | 対象者 | 受診間隔 | 費用 |
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胃がん | 胃レントゲン(バリウム)または胃内視鏡(胃カメラ) | ・バリウム:40歳以上・胃カメラ:50歳以上 | 2年に1回 | ●バリウム個別:1,700円集団:700円●胃カメラ(個別のみ)2,000円 |
子宮がん | 子宮頸部細胞診(該当者のみ子宮体部細胞診)、HPV(ヒトパピローマウイルス)検査※25歳以上はHPV検査も同時受診の必要あり | 20歳以上女性※HPV検査は25歳以上 | 1~3年に1回 | ●子宮頸部細胞診個別:1,100円集団:600円※20~39歳は無料※子宮体部細胞診検査は別途 600円(個別のみ)●HPV検査個別:800円集団:600円 |
肺がん | 胸部レントゲン(65歳以上は結核検診も同時実施) | 40歳以上 | 年1回 | 個別:500円(喀痰検査:600円)集団:200円(喀痰検査:300円) |
乳がん | マンモグラフィ(2方向または1方向) | ・2方向:40~49歳の女性・1方向:50歳以上 | 2年に1回 | ●2方向:1,100円●1方向:800円 |
大腸がん | 便潜血二日法 | 40歳以上 | 年1回 | 個別:400円集団:200円 |
前立腺がん | 血液によるPSA(前立腺特異抗原) | 50歳以上男性 | 年1回 | 個別:300円※健康診査と同時受診の場合は200円集団:200円 |
松江市のがん検診は、基本的には厚生労働省の指針に沿っています。20~39歳の女性は子宮頸部のがん検診を無料で受けられるほか、5歳ごとの節目年齢時にすべてのがん検診を無料で受診できます。また、指針にはない前立腺がん検診を実施しているのが特長です。
松江市のがん検診の無料クーポンは下記の通りです。なお、松江市では「無料クーポン」ではなく「がん検診等無料受診券」と呼んでいます。
種類 | 対象年齢 | 無料になる検査項目 |
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胃がん | 40歳以上5年おき | バリウム(造影剤)による胃レントゲンまたは胃内視鏡(胃カメラ) |
子宮がん | 20~39歳40歳以上5年おき※女性のみ | 子宮頸部細胞診(該当者のみ体部細胞診) |
子宮がん | 25歳以上5年おき※女性のみ | HPV(ヒトパピローマウイルス) |
乳がん | 40歳以上5年おき※女性のみ | マンモグラフィ |
大腸がん | 40歳以上5年おき | 便潜血二日法 |
肺がん | 40歳以上5年おき | 胸部レントゲン検査 |
前立腺がん | 50歳以上5年おき | 血液によるPSA(前立腺特異抗原)検査 |
以下のうち、いずれかを持参した人は、無料でがん検診を受診できます。 ・令和3年度がん検診等無料受診券(対象者に送付されます) ・市民税非課税世帯無料券(市民税非課税世帯対象で、事前申請が必要です) ・生活保護受給証明書 ・福祉医療費医療証(資格証) ・被爆者健康手帳
下記は、松江市が実施した2015年度から2019年度の各がん検診の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
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2015年度 | 1.8% | 19.1% | 5.7% | 15.6% | 9.1% |
2016年度 | 6.4% | 18.8% | 5.8% | 16.8% | 8.3% |
2017年度 | 8.8% | 17.6% | 5.5% | 15.1% | 7.9% |
2018年度 | 8.1% | 17.8% | 5.0% | 15.2% | 7.7% |
2019年度 | 9.0% | 18.6% | 5.2% | 15.9% | 7.5% |
下記は、自治体主導のがん検診における2015年度から2019年度の日本全体の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
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2015年度 | 6.3% | 23.3% | 11.2% | 20.0% | 13.8% |
2016年度 | 8.6% | 16.4% | 7.7% | 18.2% | 8.8% |
2017年度 | 8.4% | 16.3% | 7.4% | 17.4% | 8.4% |
2018年度 | 8.1% | 16.0% | 7.1% | 17.2% | 8.1% |
2019年度 | 7.8% | 15.7% | 6.8% | 17.0% | 7.7% |
松江市の受診率で日本全体よりも上回っているのは、胃がん・子宮頸がん検診です。胃がん検診は、2015年度は1%台でしたが、2019年度には日本全体を上回る9%台まで上昇しています。子宮頸がん検診は、年々わずかに減少しているものの、2016年度以降、日本全体を上回っています。
2016年度から一部の受診率が顕著に低下している要因としては、地域保健・健康増進事業報告における受診率の算定法の対象者が変更されたことが考えられます。また、過去に国のがん検診推進事業として、大腸がん検診、乳がん検診では40~60歳の間で5歳おき、子宮頸がん検診では20~40歳の間で5歳おきに無料クーポンが配布されていました。しかし、2016年から大腸がん検診は事業の対象外になり、2017年から子宮頸がん検診と乳がん検診の無料クーポンは検診開始年齢(子宮頸がん検診20歳、乳がん検診40歳)のみになりました。これら無料クーポン対象外の影響が受診率低下につながっていると考えられています。このため、自治体によっては独自の無料クーポンを配布したり、キャンペーンを実施したりして、受診率向上に努めています。
がん検診の受診率向上やがん予防に向けて、松江市では次のような取り組みを行っています。
・土曜・日曜にがん集団健診を実施 土曜か日曜に集団健診を受診できる取り組み。複数のがん検診を同時に受診することができる。
・節目年齢でのがん検診の無料化 節目年齢に該当している方に、無料受診券を送付。4月1日現在の年齢で40歳、45歳、50歳、55歳…と5歳刻みになっており、年齢の上限はない。
・一部の子宮がん検診の無料化 20~39歳の女性は、子宮頸部細胞診検査を無料で受診できる。
・肝炎ウイルス検診の無料実施 肝炎ウイルスの感染による慢性肝炎や肝硬変は、肝臓がんの主要な原因となっている。ウイルスに感染していても数年は無症状のため、肝炎ウイルスの血液検査(B型・C型)の実施は、肝臓がんの予防につながる。これまでに肝炎ウイルス検診(肝炎ウイルス検査も含む)を受けたことのない松江市民は、健康診査(一般、特定、後期高齢者)と同時に、無料で肝炎ウイルス健診を受けられる。
・HPV検査の実施 25歳以上の女性は、子宮頸部細胞診検査を受診する際に、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)に感染しているかどうかを確認するHPV検査を受診することができる。
松江市では、松江市在住の国民健康保険被保険者および後期高齢者医療被保険者を対象に、人間ドック・脳ドックの費用の一部が助成されます。
松江市の人間ドックの助成内容は下記の通りです。松江市国民健康保険被保険者には、「松江市国保人間ドック」を受診した場合に助成されます。
【助成対象者】 松江市在住の国民健康保険被保険者および後期高齢者医療被保険者(75歳以上)
【自己負担額】 ・国民健康保険被保険者:8,000円 ※受診費38,500円に対し30,500円が助成される
・後期高齢者医療被保険者(75歳以上):7,700~8,400円 ※病院、性別により異なる ※後期高齢者人間ドックを受診する場合、後期高齢者健康診査は受診不可
【健診項目(松江市国保人間ドックの場合)】 診察、身体測定、血液一般、呼吸器、循環器、脂質、肝機能、膵機能、腎機能、糖・代謝、肝炎ウイルス、腫瘍マーカー、尿一般、消化器、腹部超音波、眼科的検査、聴力検査、大腸がんなど
年度ごとに助成定員があるため、希望者全員が助成を受けられるとは限りません。募集時期や詳細は松江市サイトで確認してください。
松江市の脳ドックの助成内容は下記の通りです。
【助成対象者】 松江市在住の国民健康保険被保険者および後期高齢者医療被保険者(75歳以上)
【自己負担額】 ・国民健康保険被保険者の場合 10,000円
・後期高齢者医療被保険者(75歳以上)の場合 13,600〜15,200円
受診は市内の契約医療施設のみです。年度ごとに助成定員があり、申し込み者多数の場合は抽選になります。募集時期や詳細は松江市サイトで確認してください。
「機能評価認定施設」とは、日本人間ドック学会が定めている「人間ドック健診施設機能評価」という評価基準をクリアした医療施設です。申請のあった人間ドック施設に対して日本人間ドック学会が受診者目線で審査している取り組みです。
審査項目には、「運営方針、組織の管理体制が確立しているか」や「検査の業務マニュアルは作成されているか」、「感染対策などの危機管理は徹底されているか」といった施設側の安全面に関する基準から、「受診者が快適に受診できるように配慮しているか」や「受診者のプライバシーに配慮しているか」といった受診者側に関する基準まで、多角的な評価基準があります。また、評価基準は5年ごとに改定され、更新審査が行われます。
全国で390以上の施設が認定されており、このうち松江市内の機能評価認定施設は2021年10月現在で1施設あります。
マーソでは、機能評価認定施設から人間ドックのプランを探すことができます。くわしくはこちらをご覧ください。
松江市は2010年に「健康都市まつえ」宣言をおこない「みんなで支え合い 健康寿命をのばそう」を基本理念に、様々な施策をおこなっています。食育とのかかわりを重視し、健康増進計画と食育推進計画を一体的に策定しています。ユニークな取り組みを紹介します。
・歯周病検診 松江市では、40・50・60歳の節目年齢で、歯周病検診を無料で受けることができる。
・「健康まつえ応援団」で事業所と連携 働き盛りの壮年期の健康づくりの一環として、市内の事業所と連携しておこなっている取り組み。登録した事業所は市からの情報を定期的に受け取ったり、市の担当者による健康出前講座を無料で受講したりできる。なお、登録事業者は年1回、取り組み内容を市に報告する。
※本記事は2021年10月時点の情報を元に作成しています。