認知症検査
認知症検査とは?
認知症検査とは、認知機能の低下などについて調べる検査です。検査方法は大きく「神経心理検査」「画像検査」「リスクを調べる検査」に大別され、複数の検査と問診、診察を組み合わせて診断されます。
神経心理検査
【特徴】
紙とペン、道具、PCなどを用いて知能・記憶・言語等に障害がないかを評価
【種類】
・長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
・ミニメンタルステート検査(MMSE)
・MoCA(モントリオール認知評価)
・臨床認知症評価尺度(CDR)など
画像検査
【特徴】
MRIやCTなどの装置を使い、脳の状態を撮影し画像で評価
【種類】
・頭部MRI/MRA
・VSRAD®
・頭部CT
・脳SPECT
・脳PET(FDG-PET)など
リスクを調べる検査(血液検査)
【特徴】
採血によりアルツハイマー型認知症の原因となる物質を調べ、将来的なリスクを評価(ただし、確定的に将来の発症を予測するものではない)
【種類】
・MCIスクリーニング検査
・APOE遺伝子検査 など
認知症検査の目的
認知症検査の目的は、認知機能の状態の把握です。認知症であるかどうかは、複数の検査の結果と問診・診察などを踏まえ総合的に診断します。認知症かどうかの診断には、検査結果だけでなく、医師による総合的な評価が必要です。
また、将来的な認知症のリスク評価を目的として行う検査もあります。代表的な検査がMCIスクリーニング検査です。MCI(軽度認知障害)とは認知症の前段階の状態を指し、この段階で適切な対処を行えば認知症を予防したり、進行を遅らせたりすることが期待できるとされています。なお、全てのMCIが認知症へ進行するわけではなく、改善する例も報告されています。
一般的な脳ドックでは認知症の確定診断は行いません。しかし、脳ドックのプランによっては脳の萎縮具合を調べるVSRAD®︎、アルツハイマー型認知症の原因となる物質を調べるMCIスクリーニング検査、APOE遺伝子検査など、認知症の診断の補助となる検査が受けられることがあります。
認知症検査で見つけられる病気
認知症検査は、認知機能の状態の把握に役立ちます。また、脳ドックなどで行われる画像検査・血液検査では、下記の病態のリスクや、脳の疾患が発見されることがあります。
- 脳血管性認知症のリスク
- アルツハイマー型認知症のリスク
- MCIのリスク
- 脳出血
- 脳梗塞
- 脳腫瘍
など
認知症検査の結果の見方
認知症を調べるための神経心理検査は、時間・場所、計算、記憶などの項目を点数で評価するものが一般的です。代表的な長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の場合、全9項目30満点のうち20点以下だと認知症の疑いがある、としています。
画像検査では、おもに脳の萎縮等の状態を画像で確認します。アルツハイマー型認知症の診断を助けるツールであるVSRAD®︎※の場合、脳の記憶に関わる部分(海馬・扁桃および海馬傍回の大部分)の萎縮具合を下記の数値で表すことがあります。
※VSRAD®は診断補助ツールであり、単独ではアルツハイマー型認知症を診断できません。
数値0~1:関心領域内の萎縮はほとんど見られない
数値1~2:関心領域内の萎縮がやや見られる
数値2~3:関心領域内の萎縮がかなり見られる
数値3以上:関心領域内の萎縮が強い
参考:エーザイ株式会社「ブイエスラド®解析シリーズ2 解析結果レポートのみかた」
認知症検査の注意点
認知症の診断は、複数の検査、問診・診察、本人の症状や生活機能、家族への聞き取りなどを総合的に評価したうえで、認知症外来やもの忘れ外来、脳神経内科といった専門科が行います。検査結果のみで自己判断するのではなく、専門医の診察を受けることが重要です。
脳ドックでは認知症の確定診断は行いませんが、MRIやVSRAD®︎などの検査により脳の萎縮などについて調べることは可能です。
【関連記事】
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MCIスクリーニング
頭部MRI・MRA検査
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この記事の監修ドクター
この記事は、以下の医師による監修を受け、MRSO編集部が作成しています。

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)