1日ひとかけらのチョコレートが脳卒中を防ぐ!?
カカオと聞くと、チョコレートやココアといった、職場の休憩時や自宅でのリラックスタイムに、ホッと一息つくための甘いものを想像する人が多いだろう。これらはおいしいだけではなく、気持ちが落ち着き、疲れも和らぐような不思議な力があると感じる人が多いようだ。
じつは、カカオにはさまざまな病気から身体を守る力が秘められていることが、最近の研究で実証されはじめている。2011年、スウェーデンの研究所が、チョコレートの摂取量と脳卒中との関連性についての研究結果を発表した。それによれば、チョコレートを週に60g程度(板チョコ1枚程度)食べる人とまったく食べない人では、食べる人のほうが脳卒中にかかる可能性は17%も低いというのだ。
血圧低下効果をもたらす! カカオは健康維持の大きな味方
カカオは、はるか昔から不老長寿の薬として珍重されていた。そして近年、飛躍的に発展した医学の世界においても、カカオに関する研究は盛んであり、その健康効果は年々注目を集めるばかりである。
カカオに含まれるカカオポリフェノールという物質には、体内の活性酸素の働きを抑える効果があり、がんや動脈硬化を予防することがわかっている。さらに、最近になって、大きな注目を集めているのが、カカオの血圧降下作用である。世界中でじつに150を超える研究論文が、チョコレートは血圧を下げる力があるということを結論づけている。
血圧降下作用を促進するのはカカオポリフェノールの一種エピカテキンという物質だ。チョコレートを食べると、小腸でエピカテキンが吸収される。エピカテキンは、血管内皮の弾力性を強化する働きがあり、それが血圧上昇を抑えることにつながる。要するに、エピカテキンは血管を健やかに若々しく保つ働きがあるのだ。
さらに、アレルギー症状の緩和にも効果が期待されている。カカオポリフェノールはアレルギーの原因である活性酸素の働きを抑制することができるので、アレルギー予防やアレルギー症状の軽減の効果が期待される。
まだまだある! カカオに秘められた健やかさを保つ効果
カカオには、ほかにも秘められた力がある。
「カカオプロテイン」は、カカオに含まれる成分でタンパク質の一種。カカオプロテインの一部は、小腸では吸収されず、そのまま大腸まで届く。大腸に届いたカカオプロテインは、便の元となり便のかさを増す。つまり、カカオプロテインを摂取すると、排便回数の増加や便量の増加、腸内フローラの変化により便通の改善が期待できるのだ。
また、カカオを原料とするチョコレートの香りには、集中力や記憶力を高める効果があることが明らかになっている。「テオプロミン」という成分が、神経を鎮静察せる作用があり、リラックス効果をもたらし、身体的・心理的ストレスを和らげる効果が実証されている。
摂り方次第では逆効果に。カカオを正しくとり入れよう!
さて、健やかな身体を維持するために役割を果たしてくれるなら、カカオを積極的にとり入れようという気持ちを抱いた人も少なからずいるだろう。しかし何事も節度が肝心だ。
たとえばカカオがよいのなら、チョコレートも身体によいのだという考えは必ずしも正解ではない。なぜなら、チョコレートの多くは脂質(ミルク)や糖分といったものが調合され、その分、カカオ要素は薄らいでしまっている。それに気づかずに食べ続ければ、当然過糖気味となり身体にはよくないものへと変貌を遂げる。
効果的にチョコレートからカカオの恩恵を受けたいと思うのなら、カカオ分が多く、ポリフェノールを豊富に摂取することができるダークチョコレートを選ぶのがよい。
最近では健康を意識したチョコレート商品が増え、「カカオ◯%」とわかりやすく記されている。身体のことを考えて、カカオ高配合のチョコレートをひとかけら、リラックスタイムに食べてはいかがだろうか?

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)