2020.3.19

予防医療はここまで来ている! 脳梗塞や心筋梗塞も簡単リスクチェック

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長
医学博士、星槎大学 客員教授、相馬市健康対策専門部会委員、相馬市放射能対策アドバイザー
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
内科医として勤務する傍、「女性の総合医」を目指し日々研鑽する。
自身の貧血体験から大学時代より上昌広氏を師事。


人間ドックには、基本の人間ドック以外に、特定の部位や疾患について調べる専門ドックがある。遺伝リスクや年齢リスク、性別リスクなどを考慮して、通常の人間ドックとは別個に受診したことがある人もいるかもしれない。胃がんが気になり内視鏡検査をしたり、肺がんが気になりCT検査を受けたり、脳梗塞が気になり脳ドックでMRI検査を追加したり。しかし、あまたある各がんや脳疾患の専門ドックを毎年複数受けるには、コスト的にも時間的にも限界がある。では、そのうちのいくつかをスクリーニング検査に置き換えて、コストダウン&時短で受診できるとしたら?

実は近年、スクリーニング検査の開発が進んでいる。そこで、今注目したい、がんや脳疾患のスクリーニング検査を紹介する。

スクリーニング検査の本質は、“見つける”のではなくて“リスクを知る”こと

スクリーニング検査は、自分の身体のなかに潜む、年齢や性別、遺伝、生活習慣等を起因とする疾患の“リスクを知る”ために行うものだ。がんや脳の専門ドックのような疾患を“見つける”ための検査ではないので確定診断はできないものの、自覚症状を伴わない疾患の早期発見につなげられる可能性がある。

スクリーニング検査のいちばんの特徴は、より簡便な方法で受けられる点にある。例えば、以下に紹介する胃がん、大腸がん、脳梗塞や心筋梗塞のリスクをスクリーニングするのに必要な検査は、採血による血液検査のみで、検査前の食事制限も不要だ。専門ドックに比べ、身体的にも時間的にも、何よりコスト的にも負担が少なくて済む。

自分の身体の健康状態や疾患リスクを知ることは、その後の健康維持や生活改善に役立つ。社会においても家庭においても重要な役割を担っている忙しい30代~40代にこそ、手軽に受診できるスクリーニング検査を、健康診断や基本の人間ドックと組み合わせて上手に活用することをおすすめしたい。

がんのスクリーニングとして活用されている血液検査

胃がんのリスクを分類する「ABC検診」

胃がんは、近年男女ともに減少傾向にあるといわれているものの、厚生労働省の人口動態統計によるがん死亡データでは、依然として男性の死因の2位、女性の死因の4位(2017年時点)に位置している。

胃がんの原因のほとんどは、「ヘリコバクター・ピロリ菌(通称ピロリ菌)」の感染によるものといわれて久しい。そのピロリ菌の感染を調べるスクリーニング検査が「ABC検診」だ。近年では一部の自治体の健診にも取り入れられているほどメジャーになりつつある検査で、ピロリ菌感染の有無(ヘリコバクター・ピロリ菌抗体検査)と、胃がんにつながる萎縮性胃炎の有無(ペプシノゲン検査)を組み合わせ、胃がん発生リスクをA、B、C、D群に分類することから、その名がついている。医療施設でのABC検診の受診料は、おおむね5000円前後だ。

●「ABC検診」やピロリ菌に関する記事はこちら
胃がんが心配なら、胃カメラやバリウムの前にまずピロリ菌検査!
この検査はなんのための検査?「ピロリ抗体検査」(MRSO)
この検査はなんのための検査?「ペプシノゲン検査」(MRSO)

前立腺がんの可能性を調べる「PSA検査」

前立腺がんは、年々罹患数が増加しているがんで、年齢とともにその率は上昇する。最近では50代の患者が増え、30代、40代での発症も見られるという。前立腺がんは自覚症状がほとんどないため、症状が出てからがんが発見されると、40%がすでにほかの臓器に転移してしまっているといわれている。

「PSA検査」は、腫瘍マーカー検査と呼ばれるスクリーニング検査のひとつで、前立腺がんの腫瘍マーカーである“PSA”を血液検査によって調べる。ちなみに、腫瘍マーカーとは、身体にがんができると体内に作り出される特殊なたんぱく質のうち、体液中に存在して測定可能なもののことをいい、血液検査で腫瘍マーカーの値に異常がみられた場合は、がんの可能性がある。ただ、PSAは前立腺がん以外でも上昇するので、検査結果は慎重に判断しなければならない。受診料は、PSA検査と前立腺超音波検査(前立腺エコー検査)の組み合わせで、5,000~10,000円程度が一般的だ。

●「PSA検査」に関する記事はこちら
前立腺がんの早期発見に不可欠な腫瘍マーカー「PSA(前立腺特異抗原)」
この検査はなんのための検査?「PSA(PA)」(MRSO)

世間が注目、1滴の血液によるがん検査キット

血液検査による病気のスクリーニング検査で、昨今注目を集めているのが、2019年11月に東芝から発表された、わずか1滴の血液から13種類のがん(乳がん、胃がん、大腸がん、肺がん、食道がん、肝臓がん、膀胱がん、前立腺がん、膵臓がん、胆道がん、卵巣がん、脳腫瘍、肉腫)が検出できるという検査キット。

東芝と、東京医科大学および国立研究開発法人国立がん研究センター研究所との共同研究により開発されているもので、まだ製品化はされていないが、研究開発レベルでは、2時間以内に99%の精度でなんらかのがんに罹っているかどうかを判定でき、ステージ0の超早期のがんも発見できたという。

2020年から実証試験を開始し、数年内に人間ドックなどでの実用化、将来は国の承認を取得し、公的保険が適用されることを目指す考えだという。さらに、13種類のがんのうち、どのがんに罹っているかを特定する技術の開発も進めるということだ。

脳梗塞・心筋梗塞の将来リスクを予測する「LOX-index®(ロックス・インデックス)検査」

現段階では、脳梗塞や心筋梗塞のスクリーニングとして唯一の検査

現在、年間死亡者数ががんと同水準に及んでいるのが、脳血管疾患や心疾患。うち、「4人に1人」が、動脈硬化を一因とする脳梗塞や心筋梗塞で亡くなっている。

そうした状況のなか、近年受診者数が増加傾向にあるのが「LOX-index® (ロックス・インデックス)検査」。血液中の酸化した「酸化変性LDL(別称:超悪玉コレステロール)」と、それを血管の壁に取り込んで動脈硬化を進ませる「LOX-1」というたんぱく質を測定し、それらを組み合わせた指標LOX-index®によって、動脈硬化の進行から、将来の脳梗塞や心筋梗塞の発症リスクを予測する。

この検査は、日本のNKメディコ社が開発したもので、脳梗塞や心筋梗塞の発症リスクを評価する指標のLOX-index®は、日本国内の約2,500人を11年間調査して研究した成果がベースになっているという。LOX-index®の値が高い人は、今後10年以内での脳梗塞の発症率が3倍、心筋梗塞の発症率が2倍になることがわかっている。さらなる臨床研究が必要だが、現在は、これらふたつの疾患の発症リスク評価検査としては、唯一の検査とされている。

人間ドックのオプションとしても、単独でも受けられるLOX-index®検査

LOX-index®検査は、検査前日や当日の食事制限はなく、採血も5mlという少量で済むことが特徴だ。人間ドックや健康診断と同時に受診することも、単独で受けることもできる。また、検査結果は2週間ほどで詳細なレポートで報告される。脳梗塞や心筋梗塞の発症リスクが高リスク、中高リスク、中リスク、低リスクの4段階に分けられ、リスクが高いと判定された場合は生活習慣の見直しと改善を、さらに必要に応じて、血管の硬さや詰まり具合を調べる二次検査や精密検査が推奨される。

動脈硬化に起因する疾患は、発症までこれといった症状が出ないため、治療を遅らせる原因となっていた。その点、LOX-index®は、動脈硬化が進行していない状態でも動脈硬化のリスクを判定できるため、予防という意味でも、早めの検査、定期的な検査が有効だ。

「肥満気味の人」「脂っこい食事や塩辛い食べ物をよく食べる人」「たばこを吸っているもしくは吸っていた人」「定期的に運動をしていない人」「高血圧、脂質異常症、糖尿病などの持病がある人」は、ぜひ一度、LOX-index®検査を受診することをおすすめしたい。オプション検査としての受診料は12,000~13,000円程度で、医療機関によってはLOX-index®検査を含む動脈硬化ドック15,000円前後のほか、人間ドックにLOX-index®検査を加えた30,000円前後~50,000円程度のプランもある。

●LOX-index®に関する記事はこちら
脳梗塞・心筋梗塞の発症リスクがわかる血液検査「LOX-index®」とは?

手軽に受けられるスクリーニング検査で健康チェックを

人間ドックは、疾患の将来リスクを把握し、早期発見するための予防医療であり、定期的なチェックを続けることに意義がある。健康診断や基本的な人間ドックにプラスオン程度で受診できるスクリーニング検査は、コスト、時間的拘束、身体的負担などから解放されるひとつの選択肢。健康維持のためにも、知っておいて損はない。


Colorda編集部