2020.2.3

MRI検査に副作用はあるのか?


MRI検査は脳や脊髄などの病気を発見するために行われる検査だ。人間ドックのオプションとして実施する人も多いが、検査に副作用はあるのだろうか。検査時の注意点もあわせて紹介していこう。

MRI検査の磁場や電磁波で副作用は起きる?

MRI(Magnetic Resonance Imaging)検査とは、大きな磁石でできたトンネル状の装置に入り、「磁場」と「電磁波」を使って患部の内部画像を撮る検査だ。

CT検査とは異なり、局所の断面を縦・横・斜めに自由に撮影できるのが特徴である。頭蓋骨に囲まれた脳や脊髄の診断に優れており、局所の状態を評価したいときや血管の状態を確認したいときなどに実施される。

MRI検査の磁場や電磁波は、特定の状態でなければ人体に害を及ぼすほどの強さではないので、基本的に副作用を心配する必要はない。

MRI検査が受けられない可能性がある状態

以下のケースではMRI検査を受けられないことがあるので注意が必要だ。

心臓ペースメーカーなどを装着している

MRI検査室内には磁場が発生しているため、下記のような「磁性体(磁場に反応する物質)」を身につけている人は、MRI装置や人体に重大な影響を及ぼす恐れがあり、検査を受けられないことがある。

  • 心臓ペースメーカー
  • 除細動器(ICD)
  • 人工内耳
  • 可動型の義眼
  • 植え込み型ポンプ(インスリンポンプなど)
  • 神経刺激装置 など

義歯や体内金属の埋め込みがある

下記のような事例で「体内に金属が埋め込まれている」場合には、MRI検査を受けられないことがある。

  • 脳動脈瘤の手術時に入れた金属クリップ
  • 金属製の心臓人工弁
  • 血管内ステント
  • 金属製の義歯
  • 目の微細な金属片
  • 金属製の義眼底
  • 骨折時に埋め込んだボルト
  • 人工関節
  • 避妊リング
  • 入れ墨 など

近年の治療で体内に埋め込まれる金属は、MRI検査に支障のない材質(純度の高いステンレスやチタンなど)を使っていることがほとんどだ。だが、十数年前だと磁性体が使用されており、検査画像にノイズを発生させる可能性がある。

なお、歯の治療で使われている金属も問題のないことも多いが、インプラント(とくに脱却式)では検査を受けられない場合がある。

また、入れ墨やタトゥーで酸化鉄を含んだ顔料を使っていると、MRI検査による高周波で熱を帯び、やけどを負う恐れがある。いずれも医師への事前申告が必要だ。

閉所恐怖症

MRI検査の装置の中は閉鎖空間のため、閉所恐怖症の人がMRI検査を受けるとパニックを起こし、医療事故につながるリスクがある。

だが近年では、視界の開けたオープン型MRI装置を導入する医療施設も増えてきた。閉所恐怖症の人は、MRI検査装置のタイプを事前に確認することが勧められる。

造影剤を使うMRI検査では、まれに副作用が起こる

病気や検査部位によっては、造影剤を静脈注射(あるいは経口造影剤を服用)して、MRI検査をすることがある。約1~2%と非常にまれにではあるが、この造影剤の影響で下記の副作用が起きることがある。

  • 頭痛
  • めまい
  • 吐き気、嘔吐
  • 熱感
  • 皮膚の異常(じんましん、かゆみ、赤み、むくみ) など

上記の副作用はいずれも軽度で、数日以内におさまることがほとんどだ。だが極めてまれに、呼吸困難や血圧低下などの重い副作用が出ることがある。

アレルギー持ちや腎機能が低下している人はとくに要注意

下記に該当する人は、造影剤による副作用のリスクが想定されるため、造影剤を投与できない場合がある。必ず医師に事前申告をしよう。

  • アレルギー体質
  • 喘息がある(かかったことがある)
  • 腎機能障害がある、人工透析をしている
  • 重度の心不全
  • 過去に造影剤を投与した際、副作用が出たことがある
  • 授乳中

MRI検査を受ける前に確認しておくこと

これまで紹介したように、心臓ペースメーカーや人工内耳などの磁性体を装着している人は、人体やMRI装置に影響を及ぼす恐れがあるため、MRI検査を受けられない。脳の金属クリップや金属製の心臓人工弁、ステントなどを埋め込んでいる人も、検査できない可能性がある。

また、アレルギーや腎機能障害がある人は、MRI検査にともなう造影剤の投与で副作用を起こすリスクがあるので、事前に医師に確認が必要だ。

最後に、下記の物品や装着物についても注意が必要ということを覚えておこう。

金属類や磁気カードは持ち込み厳禁

MRI検査室内に金属類や磁気カード類を持ち込むと、画像が乱れるだけでなく、磁力で金属が引っ張られて飛んだり、装置に引っついたりする恐れがある。

  • スマートフォンや携帯電話
  • 時計
  • アクセサリー類
  • メガネ
  • ヘアピン
  • キャッシュカードやクレジットカード
  • 定期券 など

補聴器や添付式磁気治療薬もNG

おもに高齢者が注意したいのが、補聴器や添付式磁気治療薬(ピップエレキバン®️など)を着用してのMRI検査だ。

補聴器をつけたまま検査を受けると、磁場の影響で補聴器内部の部品が破損する可能性がある。
また、添付式磁気治療薬やカイロも装置に影響を与えることがあり、画像の乱れの原因になったり、やけどなどの怪我を負ったりする恐れがある。

メイクやカラーコンタクトレンズは検査前に外す

過去に手術や既往歴がなくとも、女性が注意すべきことがある。アイメイク、カラーコンタクトレンズだ。

マスカラやアイライン、ラメには、酸化鉄などの金属が含まれているものがあり、MRI検査の影響で熱を帯び、やけどを負う恐れがある。瞳の色を変える目的のカラーコンタクトレンズも、材質的に金属が使われている場合がある。検査前に化粧を落とす、レンズを外すなどの準備が必要だ。

MRI検査にともなうおもな副作用や注意点を紹介したが、その他に細かい確認事項も存在する。事前に医療施設に必ず確認をとるようにしよう。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部