人間ドックでは、胃のエックス線検査(胃部レントゲン検査)を受ける前にバリウムを飲む。検査後はバリウムを出しきる必要があるが、下剤を飲んで一定時間経過しても出ない場合は注意が必要だ。医療施設を受診すべき状態やバリウムをうまく出す対策について紹介する。
バリウム検査後はすぐ下剤を飲んだほうがいい?
バリウムが排出できないままでいると、腸で長い時間留まったままになり、水分が過度に吸収されてしまう。その結果、便が硬くなり、さらに排出しづらくなる。
この状態が続くと、便が詰まってしまうだけでなく腸閉塞や腸穿孔(ちょうせんこう)を招く恐れもあるので、下剤は可能な限り早く飲むことが望ましい。また、下剤を飲むだけでなく、多めの水を飲むことも大切だ。
下剤の効果は4~5時間後に現れることが多いが、体質によっては早めに効果が現れて2時間程度で便意を催すこともある。医療施設や職場からの移動中に下剤が効いてくることもあるので、服用のタイミングに関しては各々で調整が必要な場合もあるだろう。
下剤を飲んでからバリウムを出しきるまでの時間
先ほど述べた通り、下剤の効果は通常4~5時間程度で現れるが、バリウムを完全に排出しきるのは早くても検査の翌日だ。
体質によって完全排出まで3日かかることもあるが、多めの水分と一緒に下剤を飲んだのに24時間経っても、白い便(バリウム便)が出ない場合は医療施設を受診することが推奨される。受診先は、レントゲン施設のある消化器内科が望ましい。
6時間経っても排便がなければ、下剤の追加摂取を
下剤を飲み、水分をたくさん摂ったにも関わらず、6時間経過しても排便がない場合は下剤を追加したほうがいいだろう。医療施設によって下剤の処方数は異なるが、一般的には追加摂取用として2回分が処方される。便秘気味の人は、事前申告すれば多めに処方してもらえるので前もって問い合わせておこう。
白い便が出ない、激しい腹痛がある場合も医療施設へ
バリウムを飲んだあとで排出される便は、やや白みがかった色をしている。完全に真っ白ということはあまりない。下剤を服用したあと、数回の排便を経て、便が白っぽい色から通常の茶色に変われば「バリウムを出しきった」と判断できる。
しかし、白い便、白っぽい便が一回も出ず、茶色の便しか出ないのであれば、腸管にバリウムが溜まってしまっている可能性がある。早めに医療施設を受診しよう。
なお、腹痛や下痢、肛門痛などが起きることはあるが、これらは下剤や排便の影響によるものなので過度に心配する必要はないだろう。ただし、激しい腹痛や腹部の膨満感がある場合は、医療施設を受診が必要になる。
「バリウムが出ない」状態を防ぐ対策は?
「下剤を飲んでもバリウムが出ない」状態を防ぐには、下記を守ることが重要だ。
水分を多めに摂る
バリウムによる便秘を防ぐには、排便を促すためにたくさんの水分を摂る必要がある。検査が終了したら、できるだけ早く300ml以上(コップ2~3杯程度)の水を摂取しよう。そのあとも、できれば1時間にコップ1杯程度のペースで水を飲むようにしてほしい。
検査後の食事は便秘を予防するメニューに
検査後の食事に特段の注意点はないが、普段から便秘気味の人は、できるだけ消化のよい食べ物を摂ることが望ましい。また、下記のような水溶性食物繊維を多く含む食べ物は、腸の有害物質を吸着し、排出を促進する効果が期待できるので積極的に摂るようにしよう。
- 野菜(キャベツやゴボウなど)
- 芋類
- 海藻類
- 果物
検査後の飲酒は控える
アルコールの利尿作用は体内の水分を排出し、腸内のバリウムを固まりやすくする原因になる。白い便が通常の茶色の便に変わる「バリウムを出しきったサイン」が出るまでは飲酒を控えよう。

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)