2015.12.7

筋肉が認知症を予防する!? 筋肉の驚くべき役割

筋肉量が少ないと認知症や生活習慣病のリスクが上がる

筋肉身体の運動機能を支えたり、脂肪をエネルギーとして燃やしたりと、筋肉は大切な働きを担っている。そもそも人間は筋肉がなければ立っていることすらできない。また、筋肉量が減り、寝たきりになればさまざまな病気にかかりやすくなる。近年、筋肉をつけておけば、認知症をはじめとする生活習慣病にかかるリスクを下げられることがわかり、筋肉の大切さがあらためて注目されている。

たとえば、60分の有酸素運動を週3回、6ヶ月続けると、認知機能が改善することが判明した。運動と栄養で適切な筋肉量をキープすれば、疾病を遠ざけるほか、便秘、腰痛、肩こり、うつ、睡眠障害といったストレスの解消もできる。また、身体を動かすこと自体、精神の安定や自己管理能力を高め、細胞を若返らせるアンチエイジング効果があると言われており、筋肉をつけることは身体にいいことずくめだ。

深刻な「サルコぺニア肥満」とは? 筋肉不足が怖い理由

サルコぺニアとは、加齢にともなって筋肉量が減っていく現象をいう。誰にでも起こることなのだが、だいたい25~30歳ごろから始まり、歳をとるほどに加速していく。原因は運動不足や栄養不足で、これに肥満が加わったサルコぺニア肥満が問題視されている。

放置すると、寝たきりや要介護、生活習慣病のリスクを抱える可能性が高くなる。40代からはとくに筋肉の質や量が下がり始める。個人差はあるが、40歳を境に体型が変わった、持久力がなくなったという自覚が出るのも、筋肉の関与するところが大きい。

すぐできる軽い筋トレとストレッチを毎日!

座った状態で、手を胸の前で交差し、片足で立ち上がることができるだろうか。まっすぐに立ち続けることができなければ、筋肉が足りない証拠だ。軽めで効率のよいトレーニングを2つ紹介する。

太もも裏に効くチェアベーススクワット

両手を腰に当て、足は肩幅に開いて立つ。椅子をうしろに置き、座る一歩手前でもう一度立ち上がる。背中を丸めず、ヒップを突き出すように。1セット10回を3セット。

上背筋に効くシーテッドローイング

椅子に座って胸を張り、次に胸を膝に近づける。腕を伸ばした状態から、肩甲骨を意識して胸の横まで引き上げる。1セット10回を3セット。

無理はせず、慣れてきたら種目や回数を増やしてみよう。また、タンパク質やビタミンを摂らないと筋肉は作られないことも忘れずに。筋肉強化と、疲労を防ぐアミノ酸をもつマグロやカツオ、タンパク質の代謝を助けるビタミンB6を含む唐辛子、ニンニク、パプリカ、ゴマなどがおすすめだ。

運動習慣や筋肉のある身体は、健康的で充実した生活のベースにもなる。肥満や寝たきりから、糖尿病、認知症などにならないよう、年齢を問わず筋肉を保つ心がけを。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部