2016.3.14

免疫力を高めるには、腸内環境を整えるべし!

免疫力を高めるためにするべきこと

fat cells inside the blood vessel疲れやすい、常にだるいと感じたとき、まず疑うのは年齢のせいではないだろうか。「以前はもっと無理がきいたのに」と思ってしまいがちだが、あながち歳のせいだけではない。実は免疫力の低下が関係しているのだ。年齢には抗えないが、免疫力は生活習慣や食生活で高めることができる。

では、この免疫力を高めるためにはどうすればよいのか。免疫細胞の活性には、腸内細菌の数が大きく関係している。つまり、腸内細菌を増やせばいいのだ。

免疫力と腸内細菌の密接な関係

免疫細胞は、血液の流れに乗って体内をめぐり、ウィルスやがん細胞など体内の異物を攻撃している。免疫細胞は腸内細菌の刺激を受けることで、十分な戦闘能力を持つ細胞へと育つ。すなわち、腸内細菌の助けを借りなければ、強く戦闘能力の高い免疫細胞がつくれないのだ。

また、免疫細胞も腸内細菌作用をしている。東京大学大学院と理化学研究所の共同研究チームが、過剰な免疫反応を抑制する免疫系のT細胞によって、腸内細菌のバランスが保たれていることを明らかにした。免疫細胞と腸内細菌の密接な相互作用により、私たちの身体は健康を維持しているのだ。

健康は腸内細菌のバランスから

腸内フローラという言葉を聞いたことはないだろうか? ヒトの腸には100種類以上、約100兆個の腸内細菌が住み着いている。その様子がまるでお花畑のように見えることからこの名が付いている。最近の研究により、この腸内フローラの乱れが、自己免疫疾患、アレルギー疾患、肥満症、がんなど、さまざまな疾患を引き起こすことがわかってきている。

そこで、腸内細菌のバランスを人為的に調整する治療法が試みられるようになった。たとえば、便移植だ。抗生物質の連続的な投与により、クロストリジウム・ディフィシルという抗生剤が効かない細菌が腸内で異常繁殖し、腸炎を発症することがある。こういった疾患を持つ患者に、健康な人から便を移植し、腸内細菌叢のバランスを整えることによる優れた治療実績が報告されている。

日常で腸内細菌を増やすには、ヨーグルト、チーズ、漬け物などの発酵食品や、ゴボウ、レンコン、大根など食物繊維を含む野菜を食べるとよい。菌が生きて腸に届くという製品も多く販売されているのでうまく取り入れたい。また、保存料で使われているソルビン酸などの摂り過ぎには注意をしよう。添加物により腸内細菌が殺菌されてしまう恐れがある。腸内細菌の不足による免疫力の低下を防ぐためにも、必要以上に抗菌や除菌に敏感になるのはおすすめできない。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部