2016.3.28

歩かないと糖尿病になりやすい!

1日の歩行時間30分未満は、糖尿病リスクが1.23倍

Woman Power Walking国立がんセンターの研究チームが、糖尿病発症と歩行に関する研究報告を発表した。解析結果からは、歩行時間の少ない人における糖尿病のリスク上昇が示唆された。対象人数は2万6488人であり、そのうち糖尿病の自覚はないが糖尿病を発症している人は1058人と、全体の4%を占めていた。調査は、対象者の1日の歩行時間を、30分未満、30分、1時間未満、1時間~2時間未満、2時間以上と5つの群に分け、その1日の歩行時間と自覚していない導尿病(血液検査により初めて判明する糖尿病)を有することとの関係を検討したもの。解析の結果、歩行時間が2時間以上のグループと比較して、30分未満のグループが糖尿病になるリスクは1.23倍高いことがわかった。

欧米では歩行と糖尿病の関連性が指摘され研究が進んでいたが、日本では関連性が明らかにされていなかった。今回、研究チームが日本人の歩行時間と糖尿病に罹るリスクを調査したことで、歩行活動が糖尿病予防に有効だと改めて認知されることとなった。

1日に1時間30分~2時間歩こう

今日から一駅分多く歩く、エスカレーターを使わず階段を使うなど、歩く時間は自分の気持ち次第で増やしていける。歩行を含む身体活動は、糖尿病の危険因子の中で修正できる生活習慣のひとつだ。また、多くの観察研究から、身体活動が低いと糖尿病に罹りやすくなることが知られている。厚生労働省は、糖尿病のリスクを避けるためにも、日常生活における歩数の増加を奨励しており、1日当たりの目標値を男性9200歩、女性8300歩に設定している。1000歩は時間にして約10分、距離に換算すると600mほど。1日におよそ1時間30分~2時間歩けば目標達成となる。

糖尿病予防のための、おすすめの歩き方

身体は、運動開始10分以降で血中の糖を、また15分以降で遊離脂肪酸も利用し始めるため、20分以上の継続した運動が有効だ。日常生活の中で歩く場合は、1日に30分を3回に分けるのがよいだろう。強度は「ややきつい」と感じる程度が適切で、心拍数の目安は100~120拍/分。食後1時間後に行うと効果が高く、高血糖状態が抑制される。また、血糖値は、運動後約12~72時間安定を持続させる必要がある。この観点からいっても、毎日歩くことは症状の改善を定着しやすくしてくれる。歩行や運動療法は、血糖コントロール、インスリン抵抗性、脂質代謝の改善と内臓脂肪の減少につながり、血糖値安定の要素である筋肉や肝臓の糖の処理能力を高めることができる。

糖尿病の9割を占めているのは、過食、運動不足、ストレスなど生活習慣が原因で起こるⅡ型糖尿病だ。Ⅱ型糖尿病には、食事と運動での血糖値コントロールが必須になる。予防でも同じことがいえるので、普段から心がけをしておきたい。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部