日本人の死因第3位の肺炎
肺炎は肺に生じる炎症性疾患で、ウイルスや細菌が感染することによって発症する。平成22年度までは日本人の死因第4位であったが、平成23年度に脳血管疾患を抜いて第3位となった。日本の死因トップ10の病気と検査方法シリーズ第3回は、2015年の人口動態統計月報年計で120,846人が死亡したとされる肺炎の検査方法について紹介する(※1)。
肺炎の検査方法
肺炎では、問診や聴診のほかに、必要に応じて以下の検査を組み合わせて実施される。
- 血液検査
- 胸部エックス線検査
- 胸部CT検査
- 尿検査
- 喀痰(かくたん)検査
このうち、血液検査や胸部エックス線検査、胸部CT検査は、肺炎を発症しているかどうかを調べるのに有用だ。尿検査及び喀痰検査は、どういったウイルスや細菌に感染しているのかを調べるのに用いられる。
血液検査
肺炎を発症すると、白血球やCRP(炎症が起こった際に生じるタンパク)の増加、赤沈値(赤血球が沈降する速度で炎症の指標)の上昇、血液中の酸素濃度の低下など、血液中にさまざまな変化が現れる。
画像検査
肺炎の疑いがある場合、まず胸部エックス線検査を行うことが多い。肺炎を発症していれば、肺に白い影が確認される。ただ、エックス線検査はあくまで二次元の情報しか得られないため、病変部を見過ごす可能性もある。そこで有用なのが胸部CT検査だ。三次元的な肺の情報を得ることができ、エックス線では検出できない病変を描き出すことも可能だ。
尿検査
肺炎における尿検査では、おもに肺炎球菌とレジオネラに感染しているかを調べる。これらの病原性微生物に感染していると、尿中に特異的な抗体が高い確率で出現する。ただし、特定できる抗体が限られているため、万能とはいえない。
喀痰検査
喀痰検査とは、患者の痰を採取して顕微鏡で調べる検査だ。尿検査とは異なり、病原性微生物そのものを観察することができるため、より精度の高い検査といえる。
肺炎では、これらの検査を組み合わせながら、発症の有無から原因菌の特定までを行っていく。
※1 平成27年(2015)人口動態統計(確定数)の概況(厚生労働省)

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)