2015.5.14

海外人間ドック事情とこれからのトレンドをチェック!

アメリカとヨーロッパの人間ドック事情

海外の人間ドック事情

日本での人間ドックの受診数は右肩上がりで、現在、年間306万人が受診している(※)。では欧米やアジア諸国ではどうだろうか。

アメリカでは、人間ドックという名前はなく、専用の施設もない。簡単な定期検診は一部で行われているが、それすら一般的ではなく、ましてや人間ドックのような、精密検査は数千ドルと非常に高額なため、受診者は企業トップなどの一部の富裕層が中心だ。
アメリカでは、ホームドクター(かかりつけ医)の文化があり、どんな病気も最初に相談し、入院・手術が必要な場合はホームドクターから総合病院を紹介してもらうのだ。検査する場合も、ホームドクターが、個人の病歴や家族の病歴から、必要な検査を判断し注文する。
つまりホームドクターが、ひとりひとりの体質にあわせて、検査項目、検査スケジュールを組んでいくのがアメリカ流だ。

医療大国ドイツでも同様で、予防的な検査は個々の開業医で別々に行われることが多く、人間ドックのような総合的な検査を受診できるところは少ない。
このように、意外にも、欧米ではあまり浸透していない人間ドック。しかし、欧米の日系医療施設では現地日本人向けの人間ドックを実施しているところも多い。このことから、いかに日本人が人間ドックでの健康チェックを大切にしているかがわかる。

今、アジアの「医療ツーリズム」がアツイ!

一方、韓国や中国などのアジアでは、人間ドックへの関心が高まっている。今、注目されているのが、医療を受ける目的で他国へ渡航する「医療ツーリズム」。

韓国のある医療施設では、人間ドック受診者はこの15年間で約200万人にのぼり、このうち海外からの受診者は20万人だという。「医療ツーリズム」向けの特別プログラム(韓国流漢方「韓方」の体質診断)を組んでいるところもある。首都ソウルの公式サイトでも「医療ツーリズム」のコーナーを作り、呼び込みに余念がない。

日本でも「医療ツーリズム」の経済効果が期待され、経済産業省が実態調査をしたり、旅行会社がPET検査ツアーを企画したりしている。「平成23年病院報告」(厚生労働省)によると、医療目的での来日者数は、年間数千人と韓国に比べても少ないが、日本の人間ドックは、検査技術、医療施設ともに世界トップレベルであるため、中国人の富裕層をはじめ、アメリカ人、ヨーロッパ人の受診者も多い。今後、市場が拡大することが予想されている。

海外からも注目されている日本の人間ドック。わたしたちも活用し、健康な生活に役立てたいものだ。

※日本人間ドック学会「2013年『人間ドックの現況』」より

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部