2016.11.14
60代女性の健康リスク

60代女性が受けておきたい検査

女性特有の高血圧、高コレステロール症

Closeup saline intravenous (IV) drip for patient in hospital.日本人間ドック学会が2014年に受診者を対象に実施した調査によると60歳以上の女性の34.4%が高血圧、47.5%が高コレステロールと診断されている。おもな原因は女性ホルモンの一種であるエストロゲンの減少だ。

エストロゲンには血中の脂質(コレステロール)の代謝を促進したり血管を拡張したりする働きがあるが、50代以降はこれらの機能が急速に低下するため、女性はとくに高コレステロールや高血圧になりやすく、60代を迎えるころには、動脈硬化が進行しているケースも少なくない。

高血圧と高コレステロールが、動脈硬化が心疾患や脳血管疾患を引き起こす

動脈硬化と高血圧は心臓疾患や脳血管疾患の危険因子である。厚生労働省の人口動態統計を見ても60代女性の心臓疾患と脳血管疾患による死亡率は50代と比較してそれぞれ2.9倍、2.2倍となっている。
コレステロール、動脈硬化をはじめ、生活習慣病の進行具合は血液検査で診断できるので、高リスクになる60代ならば年に2回は受診しておきたい。

血管の状況を画像でチェック

日常的な血圧のチェックだけでなく、定期的にCTやMRIなどによる血管の精密検査も受けておいたほうがよいだろう。画像診断により、心筋梗塞の原因となる動脈硬化性冠動脈プラークなどが発見できる。

なかには頭部MRIを行ったところ、過去に無症状の脳梗塞や脳出血を起こしていた痕跡が見られることがある。隠れ脳梗塞と呼ばれるもので、自覚症状なく病気が起こっていたことになる。画像診断を行えば、病気の兆候を早期に発見でき、重篤な発作を引き起こす前に、予防措置をとることが可能である。

60代、高まる全身のがんリスク

国立がん研究センターが発表した全国推計によると60代女性に発症が多くみられる臓器別がん(全体に占める割合)は、乳房(23.7%)、大腸(14.8%)、肺(11.3%)、胃(11.1%)、子宮体部(4.8%)となっている。死亡者数の多い順でみると、乳房(14.2%)、肺(13.7%)、大腸(13.5%)、膵臓(10.6%)、胃(10.3%)だ。

60代は男女にかかわらず免疫力の低下によって全身のがんが多発しはじめる年代。とくに女性は乳がんをはじめ、子宮がん、卵巣がんのリスクもあるので定期的ながん検診は必須である。また、男女ともに死亡率の高い肺がん、大腸がんの発症件数も50代と比較してそれぞれ2.5倍、1.9倍に増加するので、一度、全身を調べておきたい。

全身のがんを検査するのに有効な手段としては、PET検査が有用だ。一回で全身のがんを調べられ、小さながんを発見することもできる検査なので、がんの心配がある人は一度受けておくといいだろう。ほかにもリスクに応じて、MRI(肝臓・胆嚢・膵臓・腎臓・膀胱・子宮・卵巣)、PET-CT(肺)、マンモグラフィー(乳房)、腫瘍マーカー(胃・肝臓・卵巣)、内視鏡(食道・胃・大腸)などの検査を組み合わせて、女性特有のがんを含めた全身のがんをスクリーニングすることもできる。年に一回程度のペースで受診すれば早期発見につながるので、活用を検討してみてほしい。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部