2016.11.17
腎不全

日本人の死因第7位「腎不全」の検査方法

血液をろ過する機能が低下して死を招くことも

Human kidney cross section
日本の死因トップ10の病気と検査方法シリーズ第5回は、平成27年の人口動態統計月報年計で24,532人が死亡したとされる腎不全について紹介する。

腎不全とは、文字通り腎臓の機能が低下、あるいは停止してしまう疾患の総称だ。厚生労働省の平成27年の人口動態統計月報年計(※1)によると、腎不全は日本人の死因順位7位に位置している。
急激に腎臓の機能が低下する急性腎不全と、数ヶ月から数十年の長い年月をかけて腎臓の働きがゆっくりと悪くなる慢性腎不全に分けられ、それぞれ症状の現れ方も異なっている。
急性腎不全では、適切な治療を行ない腎臓の機能を悪化させている原因を取り除くことができれば、腎臓の機能が回復する可能性がある。一方、慢性腎不全では、腎不全の進行に伴い、腎臓の機能が次第に失われていくため、失われた腎機能が回復する見込みはほとんどない。急性腎不全では、尿の出が悪くなったり、全く出なくなったりするが、慢性腎不全では、腎機能低下が軽度である段階では、症状はほとんどないが、悪化してくるにつれて尿の量の増加や浮腫、倦怠感、食欲の低下や息切れといった症状が現れる。

腎不全の検査方法

腎不全が疑われる場合は、次に挙げるような検査が実施される。

  • 尿検査
  • 血液検査
  • 画像検査
  • 腎生検

尿検査や血液検査では、尿中や血液中に現れる様々な物質の濃度を測ることで、腎臓の機能がどれだけ阻害されているかを調べる。画像検査ではエコーやCTなどを用いて、腎臓の病態を視覚的に確認する。腎生検は腎臓の組織を採取し、どういった病態にあるのかを肉眼で確認することができるため腎不全の確定診断には欠かせない検査である。

腎不全における尿検査

腎不全における尿検査では、尿中にタンパク質が検出されるかどうかを調べる。本来、タンパク質は、腎臓の尿細管で再吸収されるため、尿中に現れることはない。腎不全を発症すると腎臓の機能が低下し、タンパク質も水分などと一緒に原尿の材料となってしまうのだ。その結果、尿のなかにタンパク質が検出される。

腎不全における血液検査

腎不全における血液検査では、血中尿素窒素(BUN)、血清クレアチニン、クレアチニン・クリアランスといった物質の濃度を調べる。これらを調べることで、腎臓の機能を数値的に確認することができる。

血中尿素窒素というのは、タンパク質を分解した後に残る残骸のようなもので、正常であれば腎臓の皮質にある糸球体でろ過される。しかし腎不全にかかると、糸球体でろ過されずに血液中に留まってしまうのだ。血中尿素窒素の正常値は、20mg/dl以下である。

血清クレアチニンも尿素窒素と同様に、これもタンパク質の残骸で、本来であれば糸球体でろ過されるはずの物質だ。正常値は男性1.2mg/dl以下、女性1.0mg/dl以下となっている。

クレアチニン・クリアランスは、尿中のクレアチニンと血清クレアチニンの値を調べて、腎機能を評価する検査法で、特に急性腎不全を診断する場合に、非常に有用な検査法だ。

腎不全における画像検査

腎不全では、エコーやCTを用いて腎臓の形態及び大きさなどを評価する。腫瘍の有無や合併症なども確認することができる。

確定診断に必要な腎生検

腎生検は、背部から細い注射針を刺して腎臓の組織を採取する検査法で、腎臓の細胞がどのような状態にあるのかを目視し詳細に知ることができる。腎臓にはたくさんの血液が流れ込んでいるため、腎臓に針を刺すこの検査は出血する危険性もはらんでいるが、個々の細胞の異常も判別できるため、腎不全の確定診断には欠かせない検査だ。

※1 平成27年(2015)人口動態統計(確定数)の概況(厚生労働省)


Colorda編集部