2016.11.25
慢性閉塞性肺疾患(COPD)

日本人の死因第10位「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」の検査方法

心不全や呼吸不全のリスクもある肺の炎症性疾患

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日本の死因トップ10の病気と検査方法シリーズ第7回は、2014年の人口動態統計月報年計で16,184人が死亡したとされる慢性閉塞性肺疾患について紹介する。

慢性閉塞性肺疾患とは、肺気腫と慢性気管支炎によって発症する肺の炎症性疾患だ。息切れや喘鳴が日常的に起こるようになり、重症化すると心不全や呼吸不全を引き起こすこともある。厚生労働省による平成26年の人口動態統計月報年計(※1)によると、慢性閉塞性肺疾患は日本人の死因順位10位に位置している。

慢性閉塞性肺疾患の検査方法

慢性閉塞性肺疾患では、以下の検査が必要に応じて実施される。

  • スパイロメトリー
  • エックス線検査
  • CT検査

まずはスパイロメトリー検査からはじめ、慢性閉塞性肺疾患の可能性が高まれば、肺の状態を画像診断していく。

肺機能を調べるスパイロメトリー

スパイロメトリーと呼ばれる肺機能検査が行われる。これはスパイロメーターという装置を用いて肺機能を調べる検査だ。スパイロメーターにはホースが付属されており、そこから息を吸い込み、吐き出すことで肺機能の状態を調べることができる。

この検査で重要なのは、1秒率と呼ばれる検査項目で、これが70%未満だと慢性閉塞性肺疾患が疑われる。1秒率とは、息を吐き出す際の最初の1秒間で、全体の何%の息が吐きだされるかを計測した値だ。基準値を下回った場合は、気管支拡張薬を吸入して再度、1秒率を計測する。それでも基準値に達しない場合は、慢性閉塞性肺疾患の可能性が非常に高い。

ちなみに気管支拡張薬を吸入するのは、病態が薬によって変化するかしないか、つまり可逆的か不可逆的かを確認するためである。もしも気管支拡張薬によって1秒率が改善されれば、衰えた肺機能は薬や治療で治癒が可能で可逆的と判断され、気管支喘息などの疾患が疑われることとなる。

エックス線検査やCT検査で、その他の疾患と鑑別

スパイロメトリーで慢性閉塞性肺疾患の可能性が高まれば、肺腫瘍といったその他の疾患と鑑別するために、エックス線検査やCT検査が行われる。画像検査によってその他の疾患が除外されれば、慢性閉塞性肺疾患の診断が下され、治療を始めることとなる。

喫煙歴が鍵となる病気

慢性閉塞性肺疾患は、日本人の死因第10位に位置しているが、患者数は男女で大きな差が存在している。男性のみ年間の死亡数が13,002人であり、その大半が男性であることがわかる。また、喫煙率との相関も強いため喫煙習慣のある男性は、早期に一度、スパイロメトリー検査を受けることをおすすめする。

※1 平成26年(2014)人口動態統計(確定数)の概況(厚生労働省)

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部