2015.6.4

日本人の口臭はくさい? その原因と予防法

欧米人と比較して、日本人は口臭に鈍感!?

口臭歯の治療技術の先進国であるアメリカでは、歯並びや歯の白さ、口臭への意識が高く、オーラルケアが一般的だ。ハグやキスをする文化があるので、息が臭いことはマナー違反と考えられているのだ。そのため、ドラッグストアには洗口剤やサプリメントなど、数々のブレスケア商品が所狭しと並んでいる。

対して日本は、ハグやキスの習慣がないためか、口臭に鈍感で、欧米諸国と比較すると気にしない人が多いようだ。厚生労働省の調査によると、約3.3万人のうち10%程度が「口臭を気にしている」と回答するにとどまっている(※1)。

口臭の原因は、ずばり舌!

臭いと聞くと、男性のほうが強い印象を受けるが、厚生労働省が行った調査(※2)によると、口臭の原因物質(揮発性硫黄化合物:VSC)の濃度に男女差は認められない。年齢が高いほど濃度が高い傾向はあるものの、年齢もまた、口臭の有意な要因ではない。つまり、老若男女、誰もが口臭を発生するリスクをもっていることになる。

口臭の主な原因は、口の中に生息している菌が、唾液や血液、食べかすなどを分解・腐敗することで発生する、硫化水素やメチルカプタンというガスだ。主に、歯周病やむし歯などの病巣や、歯垢(歯の周りに付く細菌の固まり)、歯石、舌苔(舌の表面に付くコケ状の細菌の固まり)などからガスが発生する。なかでも舌苔の影響が最も大きく、舌の表面の凹凸に、食べかすが多く付着するため、硫化水素が大量に発生してしまう。また、歯周病などの病巣からは、多くのメチルカプタンが発生し、これは硫化水素以上に強い悪臭を放つため、口臭予防の意味でも治療が必要だ。

口臭の予防に、新習慣

まずは、臭いの発生源である舌をケアすることが口臭予防の第一歩だ。日本ではまだ一般的ではないが、アメリカでは舌専用のクリーナーや専用ブラシで日常的にケアし、舌苔を除去している。一般の歯ブラシでは、舌の凹凸の内部に、汚れを押し込めてしまう恐れがあるため、専用ブラシの使用をおすすめする。

また、歯科医院での定期的な検診で、歯周ポケットや虫歯の穴などに歯垢や歯石を除去し臭いのもとを取り除くことも大切だ。日常的に口臭の予防を行うことは、歯の健康が保たれ、歯周病予防にも役立つ。エチケットのみならず口腔内の健康のためにも、今すぐはじめたい。

※1 厚生省(現厚生労働省)保健福祉動向調査(1999年度)
※2 厚生労働省 口臭の実態を把握するための調査(1992年)
※3 厚生労働省e-ヘルスネット

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部