2016.7.14
肝臓がんの腫瘍マーカー

肝臓がんの腫瘍マーカー「PIVKA-Ⅱ」

肝臓がんはビタミンK不足と深い関係がある

Human liver cancer organ as a medical symbol of a malignant tumor red cell disease as a cancerous growth spreading through the digestive system by alcohol and other environmental toxic reasons.体内にがんの腫瘍ができると、特殊な物質が大量につくられ、血液中に出現する。その特性を利用した血液検査が腫瘍マーカーだ。腫瘍マーカー最前線シリーズ、10回目の今回は「PIVKA-Ⅱ」について紹介する。

PIVKA-Ⅱは肝臓がんに陽性を示す腫瘍マーカーとして知られている。Protein Induced by Vitamin K Absence-II の略称で、ビタミンKが欠乏した場合に血液に現れる、異常な血液凝固因子である。

そもそもビタミンKには、血液凝固を促進する働きがあり、プロトロンビンと呼ばれる血液凝固性物質の産生に不可欠だ。ビタミンKが欠乏すると、本来産生されるべき正常なプロトロンビンが減少し、異常な血液凝固因子が産生される。そのうちのひとつがPIVKA-Ⅱだ。

肝臓に異常が生じることでも、正常な血液凝固因子が作れずにPIVKA-Ⅱを多く産生する。これはおもに肝臓がんによって引き起こされるため、PIVKA-Ⅱは肝細胞がんの腫瘍マーカーとして利用されている。

・全国の肝臓がん検査が受診できるプランをお探しならこちら>
・肝臓がんの検査が可能な全国の医療施設をお探しの方はこちら>

PIVKA-Ⅱの基準値

PIVKA-Ⅱの基準値は40mAU/ml以下(固相型EIA法)。

固相型EIA法とは、エイテストPIVKA-Ⅱと呼ばれるもので、肝臓がんに対する感度が非常に高い検査方法だ。この導入によって診断精度が向上している。とくに腫瘍のサイズが大きいほど陽性率も高まる。

肝臓がんの腫瘍マーカーには、ほかにα-フェトプロテイン(AFP)があるが、PIVKA-Ⅱとの相関は低いため、血液検査の際には、AFPとPIVKA-Ⅱを併用することで、診断の精度を高めることも可能だ。

・全国の肝臓がん検査が受診できるプランをお探しならこちら>
・肝臓がんの検査が可能な全国の医療施設をお探しの方はこちら>

PIVKA-Ⅱが異常値を示した場合は、肝細胞がんを疑え

PIVKA-Ⅱが異常値を示した場合は、肝細胞がんが疑われる。慢性肝炎や肝硬変といった肝疾患でも陽性を示すことがあるが、肝細胞がんでは50%以上の陽性率(有病者において検査が陽性となる確率)であるのに対し、肝硬変では陽性率が10%と低い。そのため、陽性率の差で識別することができ、肝細胞がんと肝硬変との鑑別に有用である。

また、ビタミンKの代謝を阻害してしまう、ワーファリンなどの抗凝固剤を投与されている人や、ビタミンKのサイクルを阻害するセフェム系抗生物質を服用している人は異常値を示す場合がある。これらの薬を服用していない場合は、肝細胞がんの可能性が高い。ともあれ、PIVKA-Ⅱのみで確定診断を下すことは難しいため、AFPを併用したり、超音波検査や画像検査などを受けたりすることが必要となる。

・全国の肝臓がん検査が受診できるプランをお探しならこちら>
・肝臓がんの検査が可能な全国の医療施設をお探しの方はこちら>

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部