2017.8.3
腫瘍マーカー「CEA」

消化器系がんの腫瘍マーカー「CEA」が高かった場合の次のアクションは?

腫瘍マーカー「CEA」が高値になる疾患

腫瘍マーカーとは、癌細胞が作る物質、または体内に癌があることに反応して非癌細胞が作る物質で、それらを組織や体液、排泄物などで検出することが、癌の存在、種類、進行の程度を知る上で目印となるもの。この腫瘍マーカーは、癌スクリーニングや診断、治療経過のモニタリングに使用されているが、一部の腫瘍マーカーは、良性疾患や喫煙といった生活習慣で測定値が上昇することもあり、臨床の現場では、複数の腫瘍マーカーを併用することで総合的に判断している。

そのうちのひとつ「CEA(シーイーエー)」は、「carcinoembryonic antigen」の略称で、癌胎児性抗原のこと。消化器系のがん全般で陽性反応が現れる数値で、この値が高値だった場合は、消化器にがんが発生している可能性が高い。食道がんや胃がん、大腸がんをはじめ、肝臓がんや肝道がん、膵臓がんなどでCEAが上昇する。

ただしCEAは、尿路系のがんや肺がん、乳がんや子宮がんといった、消化器系以外のがんのほか、肝硬変や肝炎、胃潰瘍などの疾患でも高値を示すことがある。

「腫瘍マーカーCEAが高い」=「消化器系のがん」なのか?

腫瘍マーカーCEAの消化器系がんに関する特異性は低い。つまり、血液検査でCEAが高値でも、それだけで胃がんや大腸がんであることは断定できない。消化器に重症度の高い病変が生じるとCEAが血液中に出現するため、先述の通り、CEAは肝硬変や胃潰瘍でも高値を示すことがあるからだ。CEAだけでは発症部位はもちろんのこと、がんか炎症性病変なのかも判断がつかないという点は覚えておきたい。

腫瘍マーカーで「CEA」の数値が高かった場合のチェックポイント

CEAの上昇を人間ドックで指摘されたときは、以下を振り返ってほしい。

・喫煙習慣
・糖尿病

男性の場合、喫煙によりCEA値が上昇することが三井記念病院総合健診センターの研究により明らかになっている。また、糖尿病や自己免疫疾患などを患っている場合でも高値を示すこともあるため、数値上昇の原因を把握するためにも、当てはまる人は医師に告知が必要だ。

腫瘍マーカー「CEA」が高かった場合に実施する精密検査

胃がんや大腸がんが疑われる場合は、血液検査以外にも内視鏡検査や超音波検査、必要に応じてCTやMRIなどの画像診断が行われる。精密検査の結果も併せ、がんの確定診断が下される。

ただし、血液検査の結果は絶対ではない。初回の検査でCEAが異常値を示したとしても、2回目では正常値を示すこともある。初回と2回目であまりにも値の差が大きい場合は、検査自体が適切に行われなかった可能性もあるため、少し期間をあけて、3回4回と検査を実施し経過観察を行う。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部