一般的に脳卒中と呼ばれる疾患
脳血管疾患とは、脳卒中に代表される疾患の総称で、脳の血管が破れたり、血栓によって詰まったりすることで発症する。脳細胞も障害を受ける疾患であり、日本人の死因としては脳梗塞や脳出血が大半を占める。厚生労働省による平成26年の人口動態統計月報年計(※1)によると、脳血管疾患は日本人の死因順位4位に位置している。
日本の死因トップ10の病気と検査方法シリーズ第4回は、2014年の人口動態統計月報年計で114,207人が死亡したとされる脳血管疾患について紹介する。
脳血管疾患の検査方法
脳血管疾患の疑いがある場合は、次のような検査が実施される。
- CT検査(Computed Tomography:コンピューター断層撮影)
- MRI検査(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)
- MRA検査(Magnetic Resonance Angiography)
- 頭部血管造影検査(エックス線検査)
- 頸部血管超音波法
これらの検査を組み合わせることで、脳血管の破裂、梗塞、脳動脈瘤の有無などを確認する。
脳血管疾患におけるCT検査
脳血管疾患では頭部CT検査が行われ、脳血管の状態を三次元的に把握することができる。多方向からエックス線撮影を行うことで、微細な血管の破裂や梗塞なども検出することが可能だ。造影剤を用いれば、さらに詳細な血管の状態を可視化することができる。
脳全体の異常を見つけるMRI検査
脳MRI検査は、脳組織全体の異常を検出する検査で、組織内の水素原子を強力な磁力によって刺激、振動させ、そのデータを元に今現在の病態を画像化するものだ。被曝がないだけでなく、水分が多い組織である脳血管や脳組織を描出する点においてはCTよりも優れている。
脳血管の異常を見つけるMRA検査
MRA検査とは、手順や仕組みはMRI検査とほぼ同じものであるが、脳全体に張り巡らされている血管だけを描き出すことができ、脳血管の異常を検出することに特化した検査だ。造影剤を使用せずに、脳の血管のみを観察することができるため、脳血管疾患において非常に有用な検査といえる。
頭部血管造影検査(エックス線検査)
頭部血管造影検査は、頭部に行われるエックス線検査で、脳血管を鮮明に描出するために、ヨード系の造影剤が用いられる。頭部アンギオグラフィーとも呼ばれている。カテーテルを血管内に挿入し、造影剤を直接注入する。くも膜下出血や脳出血の部位を特定したり、脳動静脈奇形を発見したりすることに優れている。現在は、脳の血管の検査は、この検査よりも頭部CTやMRI、MRAが主体で行われているが、開頭手術の術前検査として重要な役割を担っている。
頸部血管超音波法
頸部とは、いわゆる首のことだ。頸部血管超音波法は、頸部に行われる超音波検査で、頸動脈の異常を調べるうえで力を発揮する検査だ。頸動脈は心臓から脳へと血液を運ぶ中継地点であり、ここに異常があると、脳梗塞などを引き起こす原因となる。超音波検査は、プローブと呼ばれる器具を頸部に当てるだけなので、患者の精神的身体的負担は小さい。
このように、脳血管疾患に対しては画像検査全般が有用といえる。そのなかでも病態に合わせて検査法を選択していくことが重要となる。
※1 平成26年(2014)人口動態統計(確定数)の概況(厚生労働省)

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)