小麦が肥満や高血圧、糖尿病の原因
『小麦は食べるな!』(日本文芸社)という本が話題になっている。著者であるウイリアム・デイビス医博はアメリカの著名な循環器専門医。2,000人以上の肥満患者に小麦食品の摂取を止めさせた臨床経験から国民的肥満病蔓延は小麦が最大原因であるとし、北米で130万部のベストセラーとなった。デイビス博士は小麦に品種改良と遺伝子導入が繰り返された結果、グルテンなどの含有タンパク量がヒトの耐性限度を超え、アレルギーを引き起こし小腸粘膜上皮に炎症が起きてしまうセリアック病や、肥満、高血圧、糖尿病、脳疾患を起こしていると警鐘を鳴らす。実際、米国ではグルテンに対する免疫反応が引き金になって発症する自己免疫疾患であるセリアック病が人口の1%を超えたため、どこのレストランでも普くグルテンフリーメニューを提供している。
認知機能にもグルテンが悪さをする?
そんななか、グルテンが認知機能にも影響を与えている可能性が指摘され話題を呼んでいる。オーストラリアのモナッシュ大学消化器病学のイェーランド博士らの研究グループは、セリアック病患者に「脳の霧」と呼ばれる症状がしばしば観察されることに注目した。この「脳の霧」と言われる症状は、集中力が散漫になったり、短期記憶が不正確になったり、ときに言葉が出てこなかったり、軽度認知機能障害と考えられる。
博士らは11名のセリアック病の患者にグルテンフリー食を指導し、12週後と1年後に言語流暢度、注意力、運動機能、認知テストなどの認知機能検査を行った。その結果、セリアック病の腸病変が改善している患者では同時に認知機能も改善していることが判明した。
グルテンが認知機能を障害する機序は、未だに明らかにされていない。しかしグルテンに含まれる「エクソルフィン」というアミノ酸が数個つながった構造を持つペプチドが、脳のオピオイド受容体と呼ばれる、麻薬のような作用発作に関与する部分に結合することが動物実験で示されてきており、脳に霧がかかる原因が追求されている。