2015.7.13

自覚症状の乏しい糖尿病! 今と過去の血糖値を知ることで早期発見

自覚症状が現れたときでは遅すぎる病気

糖尿病糖尿病は、かなり進行しなければ自覚症状が現れない。それだけに、自覚するころには相当病態が進んでいるケースが多い。また、自覚症状がないだけに、例え検査などで糖尿病が発見されても、治療を受けないというケースも珍しくはない。

けれども注意すべきなのは、糖尿病に随伴して現れるその他の病気である。特に脳血管障害などは、死に至るケースも考えられるため、予防措置を講ずる必要がある。つまり、糖尿病の検査を受けて、まずは発症の有無を確認するのが大切だ。

今現在の血糖値の状態を見る検査

糖尿病の検査は、採尿および採血によって行われる。採尿に関しては、尿中の糖を確認する。結果が陽性か陰性かによって、糖尿病の可能性をある程度見極めることができるが、実際、採尿だけで確定診断を下すことは難しい。そこで行われるのが、続く血液検査である。これは血糖値測定と呼ばれるもので、採血をするタイミングによって、次の3つに分けることができる。

  • 随時血糖値検査
  • 早期空腹時血糖検査
  • 75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)

「随時血糖値検査」では、食後からの時間をとくに決めずに採血を行う。この検査で血糖値が200mg/dL以上であれば「糖尿病型」と診断される。

「早期空腹時血糖検査」では、早朝、空腹な状態で採血を行う。この検査で血糖値が126mg/dL以上であれば「糖尿病型」と診断される。

「75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)」では、早朝、10時間以上絶食した状態で採血を行う。その名の通り、水に溶かした75gのブドウ糖を飲んで負荷を与え、負荷後30分、1時間、2時間後に採血を行い、血糖値を測定する。負荷を与えた2時間後の値が200mg/dL以上であれば「糖尿病型」と診断される。

これらは、今現在の血糖値の状態を知る検査といえる。ちなみに「糖尿病型」というのは、あくまで「糖尿病の疑いが強い」といった状態でしかない。

過去1〜2ヶ月の血糖値の状態を見る検査

次に、血液中のHbA1c(ヘモグロビンA1c)を調べることで、過去1~2ヶ月の血糖値の状態を知ることが可能だ。HbA1cが6.5%以上であれば糖尿病型と診断される。ではなぜ、過去の血糖値を調べる必要があるのだろうか。

血糖値というのは、日々の食事内容によって大きく変動する。例えば、検査の数日前から暴飲暴食を行っていたら、その食生活がそのまま血糖値に反映されることもあり得る。

そのため先ほど挙げたような、今現在の血糖値を知るだけでは、糖尿病と診断することはできないのだ。そこで、糖尿病と確定診断を下すには、先ほどの3つの項目のうちのどれか1つと、このHbA1cが「糖尿病型」と診断されれば、その時点で「糖尿病」と確定診断が下されることになっている。

このように糖尿病というのは、たった1回の採血でわかるような単純な病気ではない。けれども、早期発見することによって、全身の健康に大きく寄与することは間違いない。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部