2015.7.16

脳細胞が死ぬ病気! 認知症を検査で発見するメカニズム

早期発見ができれば、重症化を防げる

認知症認知症は、言うまでもなく脳の病気である。そのため、症状が進行していくにつれ、脳の組織にもさまざまな異常が現れてくる。それは脳の委縮であったり、血流の変化だ。注意すべきなのは、先に「物忘れ」といった症状が現れるのではなく、まず脳に病変が出現するということである。

つまり、定期的に認知症の検査を受けておけば、早期発見へとつながり、症状が現れる前に手を打つことも可能だ。認知症というのは、発見が早期であればあるほど、治療の余地が生まれるため、検査の重要性が強く叫ばれているのだ。

認知症の早期発見にはPET検査が有効

認知症の検査では、まず「長谷川式知能評価スケール」を用いたスクリーニングテストが行われる。これは簡単な知能テストで、認知症の症状がどの程度現れているかを確認するために実施される。その後、認知症の疑いが出てきた場合は、精密検査へと入る。

これまで、脳の精密検査にはCTやMRIといった装置が用いられてきたが、これでは初期の病変を捉えることは難しい。そこで活用され始めたのが、SPECTやPETによる検査である。

SPECT(スペクト)とは「単一光子放射断層撮影」と呼ばれる画像診断法で、静脈内に放射性同位体を注入し、放出されるガンマ線を検出してその分布を断層画像にすることで脳の血流の変化を観察する。

PET(ペット:positron emission tomography)は「ポジトロン断層法」と呼ばれる画像診断法で、そのメカニズムはほぼSPECTと変わらないが、脳の病変を観察するという点では、さらに精度が高いといる。なぜならPETであれば、血流の状態以外にも、グルコースや酸素、それから神経伝達物質などが脳の各部位でどれくらい消費されているかを知ることができるのである。

これは、初期の認知症を発見する上で、非常に有益な情報を得ることができる。ちなみに、委縮や梗塞が起こっている脳の組織では、血流が減少し、グルコースや酸素などの消費量も少なくなっている。

脳細胞が減少していく速度を緩めるために

認知症はおもに、アルツハイマー型、レビー小体型、脳血管性認知症の3タイプに分けることができる。それぞれ原因や病態は異なるが、脳に異常が現れてくるという点では共通している。

脳の組織に委縮や変性が起これば、時間や場所の見当識が弱まり、言語能力も衰えていく。認知症の検査で病変を早期発見することができれば、こうした症状を緩めることが可能だ。
場合によっては、症状を完全に止めることができるかもしれない。

それだけに、認知症の検査というのは定期的に受けていきたいものである。一度認知症を発症してしまうと、日々、脳細胞は減少し続けていく。その速度を緩めるなり止めることが何よりも重要といえる。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部