2016.8.25
肝臓がん

肝臓がんの検査方法と治療法

沈黙の臓器「肝臓」

Medical X-Ray Scan - Liver日本人の2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで死亡すると言われているが、医療技術の進化により早期発見が可能になってきている。がんの検査方法と治療法シリーズ第4回は、自覚症状が乏しく発見が遅れがちな「肝臓がん」について紹介する。

肝臓では2000種類にも及ぶ化学反応が起こり、人体の恒常性に貢献している。毒物を分解したり、アルコールを代謝したりと、生命活動を営むうえで必要不可欠な臓器だ。そんな肝臓を構成している肝細胞には、さまざまな負担がかかっていることもあって遺伝子にエラーが生じやすく、その結果生じるのが悪性腫瘍である肝臓がんだ。

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超音波検査、CT検査、MRI検査、3つの画像検査の特徴を比較

肝臓がんでは、おもに超音波検査、CT検査、MRI検査が行われる。まずはこの3つの特性を比較した表を見てもらいたい。

被曝 時間 血管 リアルタイム
超音波 なし 短い 見やすい 見にくい
CT あり 長い 見にくい 見やすい 不可
MRI なし 長い 見やすい 見にくい 不可

まず、検査を受けるうえで気になるのが被曝の有無であるが、放射線を使用しているのはCTのみで、そのほかの検査では被曝のリスクはない。検査時間については、MRIが最も長く30分程度で、超音波検査とCT検査は数分程度終わることが多い。超音波検査に関しては、リアルタイムで肝臓の状態を把握でき、気になる部位があればとくに時間をかけて調べることも可能である。

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肝臓がんにもっとも適した検査法とは

肝臓がんの検査は、超音波検査、CT検査、MRI検査と血液検査を組み合わせて行われている。

肝臓は血液の貯蔵庫でもあり、血流が豊富な臓器である。それだけに、水分の多い臓器を鮮明に描写できる画像検査が求められる。CTは骨という硬組織を写し出すのに優れた検査法であるため、この点においてはMRIに劣る。なぜなら、肝臓は体の深部にある臓器であり、骨が描写されてしまうと肝心な病変部が見えにくくなる場合が考えられるからだ。MRIであれば、もともと軟組織の描出に優れ、血管の造影も得意としている検査であるため、肝臓がんとの相性は非常によいといえる。

一方、超音波検査も軟組織の描出に優れた画像検査であり、肝臓がんとの相性はよい。ただ、超音波検査では、病変部の輪郭や大きさなどを大まかに把握する程度にとどまるため、MRIほどの精度の高さは期待できない。けれども、リアルタイムで検査部位を変えたり、手軽に処置を受けられたりするなど、初期診断においては何より優れた検査法といえるだろう。そのため臨床の現場では、それぞれの検査法の特性を踏まえながら、臨機応変に使い分けていることが多い。これに血液検査なども加えて、確定診断を下すこととなる。

肝臓がんの治療法

肝臓がんの治療はおもに、切除術、肝動脈塞栓(そくせん)術、焼灼(しょうしゃく)療法の3つで行われる。切除術は文字通り、腫瘍を含む病変部を外科手術によって切除する方法だ。肝動脈塞栓術は肝臓がんの細胞へ血液を供給している血管を閉塞し、死滅させるのが目的である。焼灼療法はラジオ波と呼ばれる高周波を用いて、腫瘍組織を熱で死滅させる治療法だ。ちなみにラジオ波は、電気メスという形でも医療の現場で活用されている。

これらの治療法は、腫瘍組織の数が少なく、比較的小さいケースで適応されることが多い。腫瘍の大きさが3cmを超えたり、4つ以上の大きなものになったりすると、化学療法や緩和ケアがメインとなる。沈黙の臓器と言われ、自覚症状が現れにくい肝臓だからこそ、定期的に、超音波検査、CT検査、MRI検査などの画像検査を受けることをおすすめしたい。

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上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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Colorda編集部