2015.10.22

古傷の痛みが起こるのはなぜ?

治ったはずの痛みが甦るしくみ

古傷すっかり直ったはずの、昔にケガした部位や手術をした部位が、季節の変わり目や雨が降る前、寒くて身体が冷えたときなどに痛むのはなぜだろうか。

じつはこの現象、見た目は完治したようでも、皮膚の下の筋肉組織が完全に修復されていないために起こると言われている。また血流が悪くなったり、筋肉の伸縮がうまくいかなくなったりすると痛みを感じやすい。患部の疼痛だけでなく、痛みは交感神経と関わるので、頭痛や吐き気など神経系の症状として表れる場合もある。

痛みを感じるきっかけは「天気」と「ストレス」

身体の痛みから、「雨が降りそうだ」という予想を的中させてしまうことがある。これは、内耳にある気圧受容器が、気圧に対して反応するためだ。気圧の低下を内耳でキャッチすると、交感神経の働きが活発化し、血管の収縮が起こる。すると古傷やまわりの痛覚神経が高ぶり、痛みが生じる。同時に内耳の反応によってリンパ液に波が起き、身体を動かしたかのような間違った情報が脳に送られ、さらに交感神経を刺激してしまう。

また、炎症物質のヒスタミンの発生、水分代謝が妨げられて起こるむくみがつらい症状を助長させる。古傷がうずくのも、天気や気圧の変化によって肉体が受けたストレスが原因だという。また傷にまつわる人や事柄を思い出すと、痛みを再び感じる場合があるのは、不安や恐れといった精神的ストレスが自律神経のバランスを崩すからだ。

古傷の治療法や薬はあるのか?

主に、酔い止め薬が治療薬として用いられている。酔い止め薬は、内耳の神経とリンパの働きを鎮めるため、気圧変化が身体に与える刺激を和らげることができる。古傷が痛み出すのが、天気の悪くなるどれくらい前なのかを把握して飲むのがコツだ。天気予報をこまめにチェックしておくのも対策としてよい。急な変化がストレスを誘発するため、事前の心積もりは安心につながる。薬以外には、しっかりと睡眠をとり身体を休ませ、規則正しい生活を送ることが大切だ。リラクゼーションや瞑想、ストレス解消で交感神経が優位にならないよう心がけを。古傷がある部位は、お風呂上がりにゆっくりストレッチをして筋肉の硬直を防ぎ、精神的にもリラックスしよう。ストレスに強い身体を作るために、自律神経が整うウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動もおすすめだ。

気圧の変化やストレスが引きがねで、痛みがぶり返す古傷。運動や呼吸で自律神経のバランスをコントロールし、身体の血流をよくして筋肉の緊張を和らげよう。また、ストレスをためない健康的な生活は、日常でできる対応策だ。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部