2016.8.18
食道がん

食道がんの検査方法と治療法

転移が懸念される食道がん

3d rendered illustration of the esophagus日本人の2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで死亡すると言われているが、医療技術の進化により早期発見が可能になってきている。がんの検査方法と治療法シリーズ第2回は、男女ともに罹患数が増加傾向の「食道がん」(※1)について紹介する。

食道は口腔のすぐ奥にある臓器で、口から食べたものを胃に送る働きをしている。日本人の食道がんの90%以上は、扁平(へんぺい)上皮がんと呼ばれる、食道の内面を覆っている粘膜の表面にある上皮から発生するがん。これは大きくなると粘膜下層や筋肉層に広がり、周りの気管や肺、大動脈に広がる可能性がある。また食道の周りにはリンパや血管が豊富なため、別の臓器への転移も懸念されるがんだ。

とはいえ、比較的検査がしやすい部位に存在しているため、食道がんの検査では、先端に小さなカメラを搭載した内視鏡が用いられることが多い。ただ、内視鏡を鼻腔もしくは口腔から食道へと運ぶ際には、痛みや咽頭反射などが発生するケースがあるため、代わりに食道造影検査(エックス線検査)が行われることもある。

内視鏡検査と食道造影検査の比較

食道がんにおける内視鏡検査と食道造影検査のメリットやデメリットを比較してみよう。

検査時間 被曝 組織採取 費用
内視鏡検査 長い なし 高い
食道造影検査 短い あり 不可 安い

内視鏡検査では器具を食道まで運ぶ際に、痛みを伴うケースがある。カメラを口や鼻から通す際に咽頭反射が起きるケースも少なくない。また病変を探すうえで器具を細かく動かすことになるため、苦痛に感じる人も多い。患者の苦痛を和らげるために、麻酔薬や鎮静剤などが用いられるが、反射が強かったり、痛みに弱い体質であったりするケースでは、内視鏡検査は不向きといえる。大きなメリットとしては、検査中に初期の食道がんや気になる病変が見つかった際に、その場で採取できることだ。これは生検にも活かせるし、腫瘍を摘出するという外科治療も同時に行えることを意味している。その分、費用は内視鏡検査の方が幾分高く設定されていることが多い。

一方、食道造影検査は、バリウムを飲んで、それが食道を通過するところをX線で撮影する検査だ。苦痛は少なく、検診として有用であるとされている。けれども、この検査はいわゆるエックス線検査であり、一定の被曝は避けられない。また、得られる情報がX線画像ということもあり、食道における大まかな病変は見つけやすいが、細かな病変の検出には劣っていると言わざるを得ない。

食道がんの治療法

食道がんの治療ではおもに、内視鏡治療、外科手術、化学療法、放射線療法の4つが行われる。このうち内視鏡治療が実施されるのはステージ0と呼ばれる極めて初期の病変に対してだ。それ以降のステージでは、必要に応じてその他の3つの治療法を組み合わせていくことになる。いわゆる集学的治療と呼ばれるもので、組み合わせ方はそのときの患者の状態や医師の治療方針によって大きく異なってくる。

このように食道がんは、できるだけ初期の段階で発見することで、治療もシンプルな方法を採ることが可能だ。飲酒や大食など、食道に負担がかかりやすい人は、定期的に内視鏡検査や食道造影検査を受けて、病気の早期発見に努めたいところである。

※1 主要部位別の年齢調整率の近年の傾向 がん情報サービス(ganjoho.jp)An updated report on the trends in cancer incidence and mortality in Japan, 1958-2013. Katanoda K, Hori M, Matsuda T, Shibata A, Nishino Y, Hattori M, Soda M, Ioka A, Sobue T, Nishimoto H. Jpn J Clin Oncol. 2015 (in press)

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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Colorda編集部