2016.5.16

銀歯が「だるさ」「イライラ」「肌荒れ」の原因に

銀歯の素材であるアマルガムに含まれる有害金属とは?

Dentist holding metal tools「なんとなく不調が続いている」「だるい」「肌荒れが治らない」「イライラする」などに心当たりがある人は、銀歯から溶け出す有害金属が悪さをしているのかもしれない‥

アマルガムとは、「歯科用水銀アマルガム」のこと。主に虫歯に対する治療のために、歯に充填されるもので、一般的に歯科治療で使用されてきた。
アマルガムの成分は、水銀、銀、スズ、銅、亜鉛で、有害金属を含む合金だ。有害金属とは、有害ミネラルとも呼ばれる、人体に害のあるミネラルのことで、水銀、鉛、アルミニウム、カドミウム、ヒ素などに含まれている。大量に水銀を摂ると神経に障害をきたす水俣病に、カドミウムの場合は全身に痛みが生じるイタイイタイ病を発症してしまうなどの例がある。

銀歯に限らず、有害金属は土中や海水に含まれるため、食べ物から身体に摂り込んではいるが、便や尿、汗から排出している。しかし、出し切れずに肝臓や腎臓に蓄積されれば、身体の不調を招くことがわかっている。

銀歯が金属アレルギーや不快な症状の原因になっている

咀嚼による摩擦や劣化によって銀歯が腐食し、有害金属が体内に吸収されている可能性がある。唾液が電解液の役割を果たし、金属がイオン化して体内のタンパク質と結びついて蓄積されると、金属アレルギーを引き起こす原因になる。アレルギーの検査は、肌に数種類の金属をつけて反応をみるパッチテストがあり、皮膚科や大学病院、一部の歯科で受診が可能だ。

ほかにも、銀歯はひどい口内炎、口唇炎、歯肉炎、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)という、手のひらや足裏にできる水泡状の湿疹や皮膚炎などにも関係している。また、不定愁訴とよばれる肩こり、頭痛、不眠、めまい、原因の分からない痛みなどの、不快な症状の出どころが銀歯だという説もある。

いずれにしても、時間をかけて銀歯の金属が体内に蓄積されていくことで症状が現れるので、少しでも早い段階で、銀歯を安全な金属や、金属以外の素材に変更することを検討したい。

セラミックやジルコニア。銀歯以外の虫歯治療方法とは?

かつては、保険診療内で虫歯を治療しようとすると、ほとんどが銀歯になった。30代以上では、銀歯を持っている人も少なくないだろう。しかし今は、金属以外を使う虫歯治療もあるので紹介しよう。

保険診療だと、コンポジットレジンというプラスチックで虫歯を埋める方法がある。保険が3割負担の場合で、小さな虫歯1本につき2,000円程度。難点は、噛みあわせが強くなりすぎる、欠けやすい、着色によって4~5年で黄色化してしまうことだ。

自費診療であれば、セラミックを使っての治療がある。セラミックは強度も高く、一生変色の心配はなく、見た目も綺麗で自分の歯になじみやすい。治療費は、医療施設によっても差があるが、内容により30,000円~120,000円程度だ。最近ではさらに強度が高く、審美性にも優れているジルコニアなども出てきている。自費診療は高額になるケースもあるので、健康面や審美面などの側面から、自分に最適な治療を選んでほしい。

銀歯がアレルギーや不調の原因だとは、なかなか気づきにくい。しかし、知らぬ間に症状が出ていたというようなことは避けたいものだ。原因不明の不調、金属アレルギーを起こしている、口のなかや身体に膿疱や炎症のトラブルがある、銀歯の下で虫歯が広がっているなどの症状があれば、銀歯の再治療を考えてみてもよいだろう。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部