2016.5.23

薬で血圧が下がるのはなぜ? 自分に合った降圧剤を

日本人にもっとも多い生活習慣病「高血圧」

Pharmacy高血圧とは、上の血圧「収縮期血圧」が140mmHg以上、下の血圧「拡張期血圧」が90mmHg以上と定義されており、収縮期血圧と拡張期血圧の基準値のどちらか一方、または両方を超えると、高血圧と診断される。放っておくと心臓病、腎臓病、脳卒中などの病気になることがある。

厚生労働省「平成26年患者調査」によると、高血圧の患者数は約1010万800人にのぼり、日本人の生活習慣病のなかでもっとも多い数字だ。また、50代以上の男性の4人に1人が、血圧を下げる薬「降圧薬(降圧剤ともいう)」を服用しているというデータもあり、忙しくストレスのある毎日のなかで、生活習慣の見直しなど自力で血圧を下げることは難しく、薬に頼らざるを得ない状況が垣間見える。

降圧薬は一般的に、一度飲み始めると毎日飲み、長期間服用し続ける必要がある。正しく飲まないと効果が得られない場合があるので、どのようなものがあり、どのような仕組みで血圧を下げるのか、きちんと知っておく必要があるだろう。

降圧薬はやみくもに飲んでも血圧は下がらない

降圧薬は多くの種類があるが、そのなかから患者の血圧の状態やそのほかの病気の有無などに応じて、処方される。日本高血圧学会の『高血圧治療ガイドライン』では、第一選択薬を「積極的適応がない場合の高血圧に最初に投与すべき降圧薬」とし、カルシウム拮抗剤、アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬、利尿薬の4種類が紹介されている。β(ベータ)遮断薬は第一選択薬ではないが、心不全や頻脈、狭心症、心筋梗塞後に積極的な適応があるとされている。
降圧薬治療にあたっては、1日1回の投薬の薬を優先したり、低用量からはじめたり、副作用をきたすことなく降圧効果を高めるために適切な組合せで併用するなど、様々な観点から医師が選択する。さらに、高血圧以外の疾患で処方されている薬との相互作用に注意が必要なので、自分の身体の状態や病気について、医師にきちんと伝えることが重要だ。

また高血圧にはタイプがあり、塩分の取りすぎからくるもの、内臓脂肪型の肥満からくるもの、特定のホルモンの過剰分泌に由来するものなど様々。タイプに合わせた降圧薬を飲まなければ、十分な効果は期待出来ないので、まずは血圧タイプを正確に見極めることも大切だ。

降圧薬で血圧が下がる仕組みを知って正しい服用を

東京都健康長寿医療センターの桑島巌氏によると、日本人の高血圧はおもに2種類のタイプがあるという。「血管パンパン型」と「血管ギュウギュウ型」だ。まず、血圧中の水分が増えることで血管の壁にかかる圧が上がる「血管パンパン型」。日本人の7割がこのタイプにあたり、塩分のとり過ぎが原因だ。血液中の余分な水とナトリウムを尿として体外に出すことが必要なため、「利尿薬」がよく効く。

また、65歳以上の人に多い血管が縮んでしまう「血管ギュウギュウ型」は、ARBやACE阻害剤により、体内でつくられる酵素の働きを阻害し血圧を下げる方法を用いる。さらに、血管を拡張し利尿の作用もあるカルシウム拮抗剤は、両方のタイプに効果がある。降圧剤によって利尿を促したり、血管の収縮を防いだりすることで血圧が下がる仕組みだ。

自分に合った降圧薬の服用が何よりも大切。2種類の降圧薬を飲んでいるのに血圧が下がらなければ、合っていない可能性がある。副作用も含め医師に相談をし、場合によってはセカンドオピニオンも考えてみよう。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部