2017.6.19

遠隔医療で時短! 通院なしの健康管理術

遠隔医療とは?

これまでは、離島やへき地の患者など対面で診察を行うことが難しい場合に限り、テレビ電話などを使って診察することが認められ、「遠隔医療」と呼ばれてきた。しかし2015年8月、厚生労働省により、この規制が取り払われ、あらゆる患者へと対象が広がった。

また、1997年の遠隔診療通知では、「診療は医師または歯科医師と患者が直接対面して行われることが基本」としていたが、今回の通達では、遠隔診療を行う前に直接の対面診療をすることが必ずしも前提条件ではないことが明示された。つまりは、通院の手間が原因で治療をやめてしまい、病気が重症化しないよう、また医療資源の効率的・効果的な活用を図るために遠隔医療が推進されているのだ。スマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器の急速な普及や、人工知能やクラウドコンピューティングなどの飛躍的な進歩も、遠隔医療を後押ししていると言えるだろう。

遠隔医療でできることは、病理診断、画像診断、遠隔診療、健康管理・相談、遠隔教育など幅広い。たとえば、患者の身体から採取した病変の細胞を観察し、病気の診断を下す専門医である「病理医」が待機する医療施設へ、細胞の標本または画像を送付して診断を行ったり、読影専門医が在籍する医療施設へCTやMRIなどの画像を転送したりすることで、地理的条件に関わらず高度な治療が受けられるようになる。今後、医師対患者では、血圧や血糖値の観察・治療指導、介護が必要な高齢者に対しての診察などが注目されている。

簡単な診察なら、わざわざ通院せずにスマホですませる!

高血圧やメタボリックシンドロームになりはじめる40代前後は、仕事で忙しく、頻繁に病院通いができないのが現実。その結果、通院が続かず治療をやめてしまい、病気が進行することもある。しかし、スマホを使って昼休みにでも簡単に診察が受けられれば、健康管理に大きなメリットがあるだろう。

メディア事業などを展開するポート(株)が開発したアプリ「PORTメディカル」では、医療機関を限定しているが、インターネット上で医師の診察が受けられる。血圧が高い、尿酸値が高い、コレステロールが高いなど10のカテゴリーから自分の病状に合うものを選び、診察を受ける。薬は配送され、支払いはクレジットカード払いが可能だ。また東京女子医科大学との提携では、都市部に住む高血圧の患者を対象に、月1回程度ネット上での診察を実施。血圧のデータを医師に定期的に届けるなど、治療する側にとっても有益だという。

遠隔医療のデメリットは?

医療の効率化や通院の負担を減らす一方で、遠隔医療のデメリットはどのようなことが考えられるだろうか。対面診療ではないため触診や微細な部分での判断ができない、患者の病状に変化が起こったときに、医師がそばに居ればできるはずの適切な処置ができない、などが挙げられる。また、個人情報が通信機器を通して漏洩してしまう危険性も考えられるため、通信障害については、医療機関と患者との間で事前の取り決めをしておく必要がある。

通院の手間がない遠隔医療は、働き盛りの世代やお年寄り、離島などの医療機関が少ない地域にとって大変なメリットになることは間違いない。すべての病院が遠隔医療システムを導入しているわけではなく、身近には感じられていないのが現状だが、自分の病状や環境に照らし合わせて、利用を考える価値はあるだろう。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部