2017.4.3

化粧品添加物「保湿剤」の危険性・安全性とは?

保湿力を高める保湿剤の特徴と、考えられる肌トラブル

保湿剤は、空気中の水分をキャッチしてうるおいをキープする作用のある添加物で、多価アルコール、またはアルコールを表す「~オール」という名称を持つものが多い。化学合成をすることで、保湿性や感触を高めているため、同じアルコール類でも、エタノールのようなスースーとした刺激はないのが特徴だ。

しかし、量をつけすぎたり肌質に合わなかったりすると、炎症、かゆみ、ニキビなどのトラブルが起こるほか、かえって乾燥を招いてしまう場合がある。これら症状の原因としては、防腐や保湿、使用感のよさを高めるために使われている添加物が肌に刺激を与えたり、体内に蓄積されてアレルギーが起きたりすることが考えられる。

刺激や毒性が少ない保湿剤とは?

保湿剤をはじめ、化粧品に使われている添加物のなかには、毒性が強いものもある。1980年に厚生労働省が告示した表示指定成分(旧表示指定成分)には、保湿剤に限らず、アレルギーなどの肌トラブルを起こす、毒性を持つ成分が103種類あげられている。しかし、2001年4月以降、表示指定成分の表示義務が廃止され、代わりに全指定成分を表示することが義務づけられた。これにより消費者は、どの成分が、毒性が高い添加物なのかがわかりにくくなった。消費者は、添加物の毒性や安全性に関して知識を持ち、判断する必要がある。

一般的によく使われている保湿剤は、皮膚刺激や毒性が少ないグリセリン、1,3-ブチレングリコール(BG)。ほかにマルチトール、ソルビトール、NMF(天然保湿因子)、尿素、ヒアルロン酸ナトリウム、1,2-ペンタンジオール(ペンチレングリコール)、1,2-ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール(PEG)、トリメチルグリシン(ベタイン)などがある。

保湿剤でとくに気をつけたい成分2つ

旧指定表示成分で明示されている、なんらかの毒性があるとされている保湿剤2つを紹介する。

プロピレングリコール(PG)

保湿、乳化、殺菌、溶剤の目的で使用される。溶血作用、接触性皮膚炎、発がん、染色体異常を起こす危険性があるとされている。飲むと肝臓、腎臓、心臓、脳へ障害が起こる可能性も指摘されており、ほかの成分の吸収を高める作用が経皮毒を助長させるともいわれている。化粧品、医薬品、歯磨き粉、入浴剤、ウェットティッシュなど多くのものに添加されている。

ジエタノールアミン(GEA)

化粧品、医薬品の保湿剤、乳化剤、柔軟化剤として使われ、接触性皮膚炎を起こす可能性がある。動物実験では、発がん物質のニトロソアミンを生成すること、生殖に関して着床後死亡率と出生後の早期死亡の増加が確認されており、毒性が認められている。トリエタノールアミン(TEA)と呼ばれる同じアミン系の成分も、接触性皮膚炎の原因になる。

化粧品を選ぶ際は、添加物をチェックする習慣を身につけてほしい。人体にある成分に近い添加物を選ぶなど工夫が必要だ。また、分子の小さい合成成分は、浸透がよいだけに刺激や残留性に注意してほしい。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部