2017.3.27

化粧品添加物「防腐剤」の危険性・安全性とは?

化粧品に防腐剤は必要? おもな目的は?

化粧品は、水や油を含むため雑菌やカビが繁殖しやすい。開封後も常温で保存するものが多く、それも雑菌が繁殖する原因のひとつだ。雑菌やカビが繁殖した化粧品を使えば、当然肌トラブルを起こしてしまう。そこで添加されるのが防腐剤だ。

また、化粧品は薬事法により「3年を超えて性状及び品質が安定なものでなければならず、3年以内に変質する恐れのあるものは『使用期限』を表示しなければならない」と定められている。言い換えると、未開封であれば品質を3年間保証するものでなければならないということになる。生産者の製品管理やコストの事情もあり、この規定が、製品を長くもたせることができる防腐剤の必要性と関わっている。

化粧品に含まれる防腐剤の種類と安全性は?

防腐剤のなかでも、化粧品によく使われている代表的なものをいくつかあげてみよう。

パラベン(パラオキシ安息香酸エステル)

化粧品に最も使用される防腐剤のひとつ。80年以上も前から化粧品に使用されている。人体に対する毒性が低く、微生物やカビに対して効果的である。メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンが主に使用されている。1種類のパラベン単独でも化粧品の長期保存が可能になるが、パラベンや他の防腐剤を組み合わせることで相乗効果が得られ、優れた保存効果を発揮する。パラベンは、化学合成で作られているが、天然物中にも広く存在しており、身近な野菜であるニンジンやトマト、オリーブオイルや菜種油に含まれていることがわかっている。

安息香

香料として利用される安息香は、アンソクコウノキが産出する樹脂のこと。ベンゾインとも呼ばれる。微生物の増殖を抑える働きがあり、食品にも使われている添加物だ。水に対して溶けにくいため、安息香酸ナトリウムをあわせて添加し、水に溶けやすくして使う場合がある。

デヒドロ酢酸ナトリウム

カビ、酵母、酸素下で生育する菌の成長を抑制する添加物で、防腐性が高い。

ヒノキチオール

ヒノキの一種である「ヒノキアスナロ」から採取される薬効成分。さまざまな微生物に対して抗菌作用がある。

フェノキシエタノール

抗菌性は強くはないが、パラベンが効きにくい大腸菌、サルモネラ菌などグラム陰性菌と呼ばれる菌に有効。

防腐剤が皮膚炎を起こすことがある

防腐剤が原因で肌に炎症を起こすことがある。厚生労働省が決めた許容範囲内の配合でも、人によっては発疹や、皮膚がひりひりしたり赤くなったりする。これらの症状は「化学物質過敏症」のひとつであり、「接触性皮膚炎」といわれるもの。すぐに反応しなくても防腐剤が血液中に入り込み、アレルギーを起こす抗体が作られ、ある日突然発症するケースも多い。

また、「防腐剤無添加」と称していても、代わりにBG(ブチレングリコール)、ペンチレングリコールなどの抗菌作用のある保湿剤を使っている場合、それが原因で炎症を起こすこともある。化粧品でかぶれてしまったら、悪化する前に皮膚科に行くことはもちろんだが、まずは基礎化粧品からメイク用品に至るまで、原因と思われる化粧品をつけるのを控えたい。

水分を含まないものや、油分だけで作られているものは防腐剤不使用の化粧品もあるが、多くの市販の化粧品には防腐剤が含まれており、雑菌が繁殖して毒性を生むことを防いでいる。法律が定める品質を担保するためにも必要性がある添加物ではあるが、肌が弱い人などはとくに、必要最低限の防腐剤で品質のよい化粧品を選択することが大切だ。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部