肌表面や内部の細胞を傷つけ、皮膚がんや肌の老化を引き起こす紫外線
昨今、紫外線による健康や美容への悪影響が判明し日焼け止めの重要性が増している。今回は、日焼け止めに含まれている添加物「紫外線吸収剤」の安全性について紹介する。
まず、紫外線について説明しよう。紫外線は波長の長いものからA波(UV-A)、B波(UV-B)、C波(UV-C)の3つに分けられるが、このうち、地上に届き人体に影響を及ぼすのはA波(UV-A)、B波(UV-B)のふたつだ。
A波(UV-A)は、肌の奥まで届き、じわじわとダメージを引き起こす。最近の研究では、このA波(UV-A)が、シミやシワなどの肌老化を引き起こすといわれている。一方、B波(UV-B)はエネルギーが強く、日焼けしてすぐに肌が赤くなったり、水ぶくれが起きたりする原因になる。浴びすぎると、皮膚がんの原因にもなりかねない。紫外線カットは、老若男女、皆が日頃から気をつけたほうがいいだろう。
日焼け止めの「紫外線吸収剤」に要注意
日焼け止めを選ぶときに気をつけたい成分は、「紫外線吸収剤」だ。肌表面で紫外線を吸収して化学反応を起こし、肌内部へ紫外線が入るのを防ぐ役割を持つ。ブロック効果は高いが、紫外線を吸収するときに、肌にチクチクした刺激を感じたり、赤み、湿疹があらわれたりする場合がある。悪化すると身体のタンパク質と結びついてアレルギーを引き起こすことも。
日焼け止めに使われているおもな紫外線吸収剤は、以下の3つだ。
t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン
紫外線のUV-Aを吸収する紫外線吸収剤。
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル
UV-Bを吸収する。つけ心地をよくするために使われる油分との親和性が高いため、多くの日焼け止めに使用されている紫外線吸収剤。
オキシベンゾン-3
UV-A、Bの両方を吸収でき、高いSPF値の日焼け止めに使われることが多い紫外線吸収剤。
紫外線吸収剤より肌に優しい「紫外線散乱剤」。しかし落とし穴も!?
紫外線吸収剤に比べて刺激が少ないのが、「紫外線散乱剤」だ。天然成分であるため、ノンケミカルと呼ばれる。UV-A、Bともに反射させるが、汗に弱い、紫外線を防ぐ力が弱い、肌なじみが悪くべたべたする、白く浮くなどの短所がある。また、紫外線にあたると活性酸素を作り、肌を酸化させてしまう性質がある。
紫外線散乱剤のおもな成分は、粘土や金属から作られている酸化チタン、酸化亜鉛などで、ファンデーションやパウダーにも使われている。最近では、使用感や効果をよくするために、粒子を細かくナノ化した製品が販売されているが、皮膚や呼吸器から金属が体内に入って蓄積する可能性があると懸念されている。また、刺激が少ないとされているが、肌質に合わなければ炎症やトラブルを招くことがあるので注意したい。
肌質にあわせて、日焼け止めを選ぼう
紫外線吸収剤、紫外線散乱剤のいずれでも、肌荒れや皮膚炎を起こす可能性はある。また、日焼け止め成分のみならず、ほかに含まれる防腐剤、界面活性剤、保湿剤、香料などの添加物が症状の原因になることもある。
日焼け止めを選ぶときは、
- SPF値が15~30程度
- 石けんで落とせるもの
- 酸化しにくいもの
- 界面活性剤やシリコン、ポリマーといった刺激の強い成分が極力含まれていないもの
などを基準に選んでほしい。また使用するときは、肌に優しい日焼け止めをこまめに塗り直し、日傘や帽子で紫外線をブロックすることも大切だ。
万が一、日焼け止めを使用して肌荒れが起きたら、アレルギー性の皮膚炎になる前に専門医を訪ねることが第一だ。

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)