2017.9.25

糖尿病には「1型」と「2型」がある。生活習慣でリスクが高まるのは…?

脳卒中、心筋梗塞、腎症など、さまざまな合併症を引き起こす糖尿病の怖さ

糖尿病とは、「インスリン」と呼ばれるホルモンの分泌が少なくなったりうまく働かなかったりすることで、血液中のブドウ糖量が増えて、血糖値が高い状態になる疾患だ。血糖値が高い状態が続くと、全身の血管が傷つき、次第に血管障害による脳卒中や心筋梗塞、細小血管障害による腎症、網膜症、末梢神経の障害から壊疽(えそ)などの合併症を引き起こす。

そもそもインスリンは、血糖値を下げる働きをするホルモンで、食事で摂取した炭水化物が消化されてできたブドウ糖(血糖)の上昇に反応し、臓器が血糖を取り込み、エネルギーとして利用したり蓄えたりすることを促進する働きをしている。また、たんぱく質の合成や細胞の増殖にも関わっている。このようなインスリンの働きによって、ヒトの血糖値は一定に保たれるのだ。

糖尿病の原因は、遺伝子要因や、インスリン分泌が少ない傾向にある日本人の体質など先天的なもののほか、過食や運動不足などの生活習慣が挙げられる。

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1型糖尿病と2型糖尿病とは? 発症年齢にも違いあり

糖尿病の種類を大別すると1型と2型がある。このふたつにはどのような違いがあるのだろうか。

まず、大きな違いは、発症する年齢だ。1型は子ども含む若い人が多いのに対し、2型は中高年に多い。一般的に「糖尿病」というと2型を指し、その患者数は全体のおよそ95%となっている。

1型糖尿病

体内にあるリンパ球が間違って、インスリンをつくっている自分自身の膵臓のβ細胞を破壊してしまうことで発病する。自分の体内でインスリンを作ることができなくなってしまい、インスリンの分泌が困難になってしまう。なぜβ細胞を壊してしまうのか、ということについてははっきりと解明されていない。生活習慣病での、先天性の病気でもなく、遺伝して同一の家系内で何人も発病することも滅多にない。インスリンがないと、グルコースを細胞内に取り組むことができず、血管内にグルコースが溢れてしまうため、血糖測定をしながら、毎日注射でインスリンを補給し続けるしかない。痩せ型の人がなりやすく、小児期に発症することが多い。

また、1型のなかでも進行速度によって、「劇症1型糖尿病」「急性発症1型糖尿病」「緩徐進行1型糖尿病」の3種に分けられる。最も多いのは、発症後、数ヶ月でインスリン依存状態になる「急性発症1型糖尿病」である。

2型糖尿病

遺伝的要素に加え、過食、運動不足などの生活習慣が原因となる場合が多い。血糖値が高い状態が続き、血管を傷つけ負担をかけると、「糖尿病腎症」「糖尿病神経障害」「糖尿病網膜症」といった合併症のほか、心筋梗塞や脳梗塞など生命に関わる病を引き起こす可能性がある。これらは糖尿病管理を怠っていると進行し、糖尿病の症状が出ておよそ5年で発病すると言われている。

2型糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンの働きが低下することによって起こる。これを、「インスリンの作用不足」といい、こうした状況が引き起こされると、血液中のブドウ糖をうまく処理することができず、血糖値の高い状態が続く。

インスリン作用不足の原因として、インスリンの分泌量が低下する「インスリン分泌障害」と、インスリンが分泌されているにも関わらずインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」の二つがある。肥満や運動不足、食べ過ぎといった生活習慣の乱れが、これらを引き起こすと考えられている。

一般的に、2型糖尿病は肥満の人がなりやすいが、痩せ型の人も発症する。2型糖尿病は症状を自覚しづらいこともあり、気づかないうちにどんどん進行しているという症例も多々あるので、注意が必要だ。

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糖尿病を発見する検査とは?

糖尿病は、血液検査により、空腹時血糖値、随時血糖値、HbA1c(ヘモグロビン エーワンシー)値を調べることで判明する。健康診断や人間ドックでは、空腹時血糖値やHbA1c(ヘモグロビン エーワンシー)値のふたつの結果が出ていることが多い。

基準値は、以下の通りで、ひとつでも当てはまると糖尿病と診断される。

  • 空腹時血糖値 126以上
  • 随時血糖値  200以上
  • HbA1c値 6.5%以上

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糖尿病患者数316万人超え! 発症しやすいのは男性? 女性?

2016年11月に、30万世帯74万人を対象に厚生労働省が行なった『国民健康・栄養調査』では、「糖尿病が強く疑われる者」は男性15.5%、女性9.8%と報告されている。また、厚生労働省が3年に一度行っている『平成26年患者調査の概況』(2014年10月実施)によると、糖尿病と診断され継続的に受療している患者数は、およそ316万6千人で、うち男性はおよそ176万8千人、女性はおよそ140万1千人となっている。割合で言うと男性55.8%、女性44.2%だ。これらの結果から、男性のほうが糖尿病になりやすい環境にあると考えられる。

現在の医療では糖尿病の完治は難しいと言われている。1型は原因不明ともされ、患者とその家族の精神的負担も大きい。2型糖尿病の場合、健康診断で予兆がわかる場合も多く、自己管理で防げる可能性もある。まずは、自分の身体で何が起こっているのかを知るために健康診断を欠かさず受けることが重要であり、糖尿病という病気について知ることも必要だ。

*参考
・国立研究開発法人国立国際医療研究センター「糖尿病ってなに?」
・認定特定非営利活動法人・日本IDDNネットワーク
・MSD「患者さんのための糖尿病ガイド」
・厚生労働省「平成26年(2014)患者調査の概況」
・厚生労働省『平成26年(2014)「国民健康・栄養調査」の結果』

・生活習慣から糖尿病を発症するリスクは食事の多様化などによって年々高まっています。定期的な健診・検査で発症リスクを確認しましょう!(糖尿病検査施設一覧へ)>

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部