2015.5.25

ドイツに学ぶ、医療と暮らしと「メディカルハーブ」

健康の維持ができて、副作用のほとんどない薬

メディカルハーブ「メディカルハーブ」とは、健康維持のために使う「薬草」「香草」のこと。ハーブの中でも、有効成分が科学的に証明されているハーブを指す。日本の病院で処方される漢方もそのひとつだが、まだなじみが浅い。ドイツではメディカルハーブが人々の暮らしに根付いており、医者にかかる前に、病気の予防と対策にハーブティーを飲むのが一般的。風邪には「エキナセア」、胃腸のトラブルには「ジャーマンカモミール」といった具合だ。医師はみなハーブの知識をもって処方箋を出し、抗生剤を簡単には処方しない。副作用がほとんどないので、妊婦や乳幼児には最適な薬だ。助産師は、おなかの調子の悪い赤ちゃんに「フェンネル」入りのミルクを与えるという。チンキ剤、湿布剤、入浴剤、軟膏剤、芳香浴剤、蒸気吸入剤など、症状に適した形で成分を取りこむ。ここではハーブティーで有効なものをいくつかあげてみよう。

  • 花粉症・・・ネトル、ローズヒップ
  • 過敏性腸症候群・便秘・・・ペパーミント、ジャーマンカモミール、ローズヒップ
  • 高血圧・動脈硬化・・・アーティチョーク、ペパーミント
  • 肝臓の疲れ・・・ダンディライオン、ローズヒップ
  • 糖尿病・・・ニガウリ、ダンディライオン、マルベリー
  • 抑うつ・落ち込み・・・セントジョーズワート、サフラン 

※他の薬との併用、妊娠中、体質によっては効果に異変が出る場合があるので、医師に相談して使用のこと。

ドイツ医療とメディカルハーブのありかた

現代医療とハーブ療法を含む自然療法による「統合医療」を推進するドイツ。無論、ハーブの科学的研究も進んでいる。1978年、ドイツ保健省で「コミッションE」という、ハーブ製品の安全性と有効性を確認する委員会が設立された。現在は医薬品医療機器連邦研究所に属し、世界的な研究機関となっている。また、ドイツの医学部ではハーブの講義が必須で、国家試験にも出題される。医師の資格は更新制のため、試験のたびにハーブについて勉強しなければならない。ほかに、保険は使えないが、国家資格の自然療法士(ハイルプラクティカー)による治療もある。メディカルハーブが根付く背景には、ドイツという国の医療方針が大いに関係している。

メディカルハーブを活かした治療のこれから

メディカルハーブは、抗酸化作用、生体防御機能調整作用、抗菌・抗ウイルス作用、薬理作用、栄養素の補給という5つの働きがある。こうした、自然治癒慮力や免疫力そのものに働きかけるハーブの特性が、感染症、肺炎、認知症などの治療に効果があると期待されている。また、いくつかの病気を併せ持つ患者にそれぞれの薬を出すのではなく、ひとつのハーブでストレスや不眠を含む複数の病因へアプローチできる。結果、減薬と完治後の安定につながっていくという。

私たちの身近にある緑茶やシソ、ショウガやユズなども、じつはハーブの一種。まずは意識的に取り入れるところから始めてみよう。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部