2015.9.10

血液を調べるだけでわかる、動脈硬化の進行

動脈硬化が原因で起こる、危険な疾患とは?

動脈硬化動脈の内壁にコレステロールなどの脂質が沈着して血管壁が厚く固くなり、血管が弾力を失って脆くなるのが動脈硬化であり、命に関わるさまざまな疾患の原因となる。中高年に特有の症状と思われがちであるが、食物の嗜好や生活習慣が原因で若年層でも動脈硬化が進行しているケースは少なくない。また遺伝的に血液中の脂質が多く、動脈硬化になりやすい体質の人もいるので注意が必要だ。

血流が悪くなるため、高血圧、心臓肥大などの症状が現れる。脂質の作用で血小板が凝集すると血栓が形成されて血管が詰まり、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞など危険な疾患を引き起こすことになる。

動脈硬化の検査

動脈硬化を促進する最大の要因は、血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂質の増加(高脂血症)である。脂質はリポ蛋白(LP)という状態で血液中に存在しているので、血液を検査してリポ蛋白類の濃度を調べれば動脈硬化のリスクを把握することができる。

また、RLP-C(レムナント様リポ蛋白コレステロール)は動脈硬化にともなう脂質代謝異常によって血液中に残留する成分なので、その血中濃度から動脈硬化の進行具合を判断することができる。さらに、RLP-Cは血小板を凝集して血液をドロドロにし、血栓を生じやすくする危険因子でもある。基準値は7.5mg/dL以下である。基準値以上の場合に動脈硬化性の疾患にかかりやすいとされる。

一方、体質的に動脈硬化になりやすいかどうかを判断する基準となるのがLP(a)(リポ蛋白a)の血中濃度である。LP(a)もまたコレステロールを多く含み、動脈壁に脂質を沈着させるリポ蛋白の一種であるが、その血中濃度は食生活などの外的要因とは無関係で個人差が大きく、遺伝的な動脈硬化の危険因子と考えられている。基準値は30.0mg/dL以下を正常とする。

動脈硬化に自覚症状が現れることはほとんどないので、異常を感じたときにはすでに危険な疾患にいたっている恐れがある。生活習慣に心当たりがある場合は勿論であるが、遺伝的な場合もあるので、定期的に検査を受けておくことが重要である。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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Colorda編集部