今、話題の「ケトン体」。
糖質オフダイエットで、一躍有名になったケトン体は
アルツハイマー病の改善や乳がん予防の分野でも注目されている。
「いつまでも若々しく、健康でありたい」という願いを叶える
ケトン体の魅力に迫る。

2016.4.7

アルツハイマー病も改善する! ケトン体ダイエット法

治療薬がないアルツハイマー病

3D medical background with magnifying glass examining brain
アルツハイマー病はいまだに原因不明の進行性の神経変性疾患だ。最終的には寝たきりになる病気で、人口の高齢化とともに患者数が激増しており、日本でもアメリカでも大きな社会問題となっている。アルツハイマー病を発症すると認知機能の低下にともない、物忘れがひどくなり、性格が変容し、行動異常が起きるので、介護に携わる家族は大変な負担を感じることが多い。

これまでのところ有効な治療薬は開発されていない。一般に処方される薬はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤で症状を緩和させることはできるが、病気の進行を食い止めることはできない。

ココナッツオイルでアルツハイマー病が改善!?

2013年に翻訳本を監修した、『アルツハイマー病が劇的に改善した!米国医師が見つけたココナツオイル驚異の効能』(ソフトバンククリエイティブ)の著者であるメアリー・T・ニューポート医師はオハイオ州出身の小児科医だったが、愛する夫スティーブが若年型のアルツハイマー病を発症し、病気が進行する夫を辛抱強く介護するなかで、あらゆる治療の可能性を模索。新薬の臨床試験にスティーブを参加させようと模索するも、病期が進行しすぎていたスティーブは臨床試験の除外基準のために試験に参加できなかった。

そんなとき、メアリーはAC-1202という中鎖脂肪酸を臨床試験を偶然に見つけることになる。この中鎖脂肪酸が、食品として商品化されていることを突き止め、さらにココナッツやパームオイルから抽出できることを突き止める。

さっそく、ココナッツオイルをオートミールに加え夫に食べさせたところ、その日のうちに劇的な症状の改善が観察され、それ以来、ココナッツオイルを3年にわたり食べさせ続けた。結果、アルツハイマー病の症状を改善させ、病期の進行を食いとどめることに成功した。

ケトン体に秘められた力

アルツハイマー病は、最近では3型糖尿病とも呼ばれている。アルツハイマー病の脳では、インスリンの効きが極端に悪くなっているためだ。インスリンの効きが悪くなると、神経細胞はグルコースが使えなくなり、神経変性を起こして記憶障害などの神経症状を悪化させると考えられている。

しかし、神経細胞はグルコース以外にケトン体をエネルギー源として利用することが可能なのである。ケトン体とは、体内の脂肪を分解する際、肝臓で産生されるもので、ダイエット法も注目されている。アルツハイマー病を発症して、一旦、グルコースが使えない状態に陥っても、ケトン体が供給され続ければ、神経細胞はエネルギーを産生し続け、その活性を保つことができる。メアリーはこの食事療法の発見により、夫スティーブの治療効果を安定させることに成功したのである。

メアリー・T・ニューポート医師の著書は、これまで病気の進行を止める薬が無かった、アルツハイマー病を煩っている数多くの患者とその家族に希望の光を与えるかも知れない。治療に使ったココナッツオイルは自然食であり、一般に市販されている食品である点が、これまでのアルツハイマー病の治療戦略と異なる。ココナッツオイル療法は実践しやすく、しかも数日でその効果が確認される人もいる。

治療効果の本体と考えられるケトン体は、グルコースに変わる優れた脳のエネルギー源で、これまでケトン体ダイエットやアトキンスダイエット(低糖質ダイエット)などで注目されてきたエネルギー源だ。認知症の家族を抱え日々の介護に悩んでいる家族に大きな福音をもたらす可能性を秘めている。


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Colorda編集部