2015.7.9

水分補給だけでは足りない! 熱中症から身体を守る方法

「熱中症」と「日射病」って違うの?

熱中症夏になると、毎日のように耳にしたり目にしたりする「熱中症」という言葉。20年ほど前は、暑い日に身体の具合が悪くなることを「日射病」と呼んでいたが、この「熱中症」と「日射病」、違うものなのだろうか。熱中症とは、熱けいれん、熱失神、熱疲労、熱射病の4つの症状を総称したもの。主に、眩暈や失神、頭痛、吐き気、体温の上昇、異常な発汗などの症状がある。このうちのひとつである熱射病のうち、強い直射日光に長時間当たることが原因で起こる症状が、以前よく言われていた「日射病」にあたる。
「熱失神」は、直射日光の下での長時間の作業を行った時や、高温多湿の室内で発生する。突然の意識消失を起こすが、体温は正常であることが多い。
「熱痙攣」は、大量の発汗後に水分だけを補給して、塩分やミエネラルが不足した場合に発生する。体温は正常であることが多く、発汗がみられる。
「熱疲労」は、多量の発汗に水分やミネラル補給が追いつかず、脱水状態になった時に生じる。体温が上昇するが、皮膚は冷たく発汗がみられる。
「熱射病」は、屋内外を問わず、高温多湿な環境下に長時間いると生じる病気。40度以上の高体温であるにもかかわらず、発汗がなく皮膚が乾燥していたり、意識が遠のいたり、言動が不自然になったりする症状が出たら、生命に関わる極めて重篤な状態であるため、ただちに救急車を呼んで対処しなければならない。

水分だけを摂っていると怖い! 「自発的脱水」って?

熱中症のピークは、日中の最高気温が高く、熱帯夜が続く8月だ。また、6月下旬~7月の梅雨の晴れ間や、梅雨明けの急に気温が上がった蒸し暑い日にも、熱中症患者が増える傾向がある。まだ暑さに身体が慣れていないときに、急に気温が上がってしまうと、うまく体温調整ができないためだ。こまめな水分補給で熱中症予防を心がけたいところだが、急に大量の水だけを摂ると、体液中のナトリウム濃度が下がり、一時的に喉の乾きが止まり、水が飲めなくなってしまう状態になる。体液中のナトリウム濃度を戻すために、水分が尿として排出され、結果的に体液不足に陥る。これを「自発的脱水」という。身体に必要な水分を確保できなくなり、体温が上昇し、熱中症につながる危険な状態に陥ってしまうのだ。

だから、水だけではなく、汗で失われた塩分(ナトリウム)の補給もしよう。熱中症予防の水分補給として、日本体育協会では、0.1〜0.2%の食塩(100mlあたりナトリウムが40〜80mg)と糖質を含んだ飲料水を推奨している。「水分を補給すれば大丈夫」と、塩分の補給をないがしろにしていると、知らずしらずのうちに熱中症を引き起こしてしまうので注意が必要だ。

寝不足、疲れ、二日酔いは熱中症のもと

近年、さまざまな熱中症対策のグッズが発売されている。濡らして首元などを冷やすタオルや、持ち歩きできる手のひらサイズの熱中症指数計、身体を冷やす冷却スプレーなど手軽に使用できる商品が人気だ。このようなグッズを用意しておくのもよいが、寝不足や疲れで身体が弱っているときや、二日酔いで体内の水分が減っているときは、熱中症にかかりやすくなるため、普段の自己管理が基本の対策になるだろう。朝食を抜かない、帰宅後は、お風呂上がりにストレッチや脚のマッサージなど、身体をケアすることを忘れずに。仕事で外出が多い人は、気温が上がるお昼の12時~15時に、なるべくスケジュールを詰め込み過ぎないなど、可能な限り、調整するように心がけたい。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部