2018.4.26

PET(ペット)検査とは? 【はじめてのPET検査 vol.1】

PET検査とは、がん細胞に目印を付ける検査


PET(ペット)とは、ポジトロン・エミッション・トモグラフィー(Positron Emission Tomography) の略称で、日本語では、「陽電子放射断層撮影」と呼ばれている、放射性薬剤を体内に投与して、がんを調べるのに利用される核医学検査の一種だ。従来のがんを形態的に捉えることで、病変の有無を判別するエックス線撮影やCTとは、検査に使用する薬剤や撮影方法、結果画像のがんの見え方などの点で大きく異なり、機能的に異常を見ることで、比較的小さな早期がんでも検出できるメリットがある。PET検査は、がん細胞がブドウ糖を大量に消費する性質を利用して、小さながん細胞にも目印を付けることができるのだ。

がん細胞のグルコース消費量は3~8倍。この特徴を利用

がん細胞は、分裂を繰り返すことで増大していく。そのときに必要になるのがグルコース、つまりブドウ糖である。がん細胞では正常細胞の3~8倍のブドウ糖が消費されている。短期的に増大していくには、それ相応のエネルギーが必要となるのだ。この点に着目したのがPET検査だ。

まず、ガンマ線(放射能)を放出するという性質がある、ブドウ糖に類似した薬剤「FDG(フルオロデオキシグルコース)」を検査前に投与する。一定時間経過すると、投与したFDGは、ブドウ糖消費量の多いがん細胞に集積していく。それを検出器で画像化すると、身体のどの部位にがんがあるのかを調べることができるのだ。

PET検査の有用性とは

PET検査では、エックス線やCTでは調べることのできないがん細胞がブドウ糖であるグルコースを、栄養源として細胞内に取り込むところを画像化することができるため、通常では画像に写りづらい早期がんの検出に優れた検査といえる。

また、痛みなどが少なく、検査時間も30分程度で終わるため、患者の身体的負担も少ない検査だ。

ただし、がんの種類や部位によっては、PETで検出できないケースもあるため、その他の画像検査と併用することがおすすめだ。具体的には、泌尿器系や脳、肝臓、心臓といった臓器は、健常な場合でも多量のブドウ糖を消費しているため、腫瘍が発生していたとしても、FDGの集積像を見極めることが困難だ。また、炎症反応が生じている組織でもFDGの集積が認められることがあるため、PET検査の結果だけで、がんと断定するのは難しいケースもある。

しかし、がんが不安な人は、一度、全身をスクリーニングする意味でPET検査を受けるとよいだろう。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部