2015.9.14

不妊原因の半分は男性にある! 「男性不妊」に迫る

男性不妊の割合と症状は?

男性不妊男性不妊という言葉を聞いてもピンとこない方も多いのではないだろうか。不妊症は、女性の問題というイメージが強いが、男性側に原因があることを男性不妊という。国際保健機関(WHO)が1996年に発表した不妊原因の割合は、下記のとおりだ。

  • 女性側に原因がある(41%)
  • 男性側に原因がある(24%)
  • 両性に原因がある(24%)
  • 不明(11%)

少なくとも男性側に原因があるケースは48%。不妊症の約半数にのぼることがわかる。

男性不妊の症状は大きく分類すると「性機能障害」「精液性状低下」の2種類だ。「性機能障害」は勃起不全(ED)に代表されるようなケースで、「精液性状低下」については精子が少ない、あるいは運動率が低いなどの精子に関する異常が見られるケースである。男性不妊の9割は後者で、精子をつくる機能に問題があるケースが多い。

検査と治療は、泌尿器科へ

男性不妊症は、泌尿器科で精液検査を実施するのが一般的だ。

検査では、精液を病院に提出し、精子の濃度・運動量・白血球の数などを計測。基準値に達しているかを調べる。精液性状低下が確認された場合の治療方法は、軽度のものであれば、喫煙やアルコールなどの生活習慣の改善、薬による治療などが中心だ。精子が確認できない無精子症など重度のケースは、外科手術を行う可能性がある。精巣組織の一部を切開し、精子があるか調べ、ある場合は採取して人工授精や体外受精を行う。また、実際は精子が作られているにもかかわらず、排出される経路が塞がれているために無精子症になっている場合は、閉塞がある部分を取り除く手術を行う。

原因が精子ではなく、勃起不全などの性機能障害の場合は、抗うつ薬やPDE-5阻害薬といった投薬を中心とした治療になることが多い。また、誤ったマスターベーションが射精障害を引き起こしている可能性もあり、習慣を改める指導が行われる場合もある。治療しても改善の傾向が見られない場合は、人工授精などの方法の検討に進む。

国の医療費助成金制度も制定

不妊治療のなかで保険適用外の「体外受精」「顕微授精」においては、国による助成金制度ある。2016年4月からは、「妻の年齢が43歳未満」という年齢制限が設けられるものの、通算助成回数は妻の年齢が40歳未満であれば原則6回(妻の年齢が41歳以上43未満の場合は3回)となり、年間の回数制限や通算助成期間などの限度はなくなった(※1)(※2)ため、中長期の計画的な治療もうけやすくなった。

43歳以上は、流産の確率も50%を超える。子どもを望むのであれば、パートナーと早めに検査を行い、体外受精での不妊治療を検討する場合は、国の制度や各自治体の助成制度をあわせて利用してみるとよいだろう。

※1厚生労働省Webサイトより 
※2ただし、730万円の所得制限あり(夫婦合算の所得額)

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部