2015.9.10

いつのまにか不眠症に!? 眠りに悩む人が増加中

日常生活や身体の変化に潜む不眠症の原因

不眠症日本では不眠症の患者数が年々増加しており、実に日本人の5人に1人が不眠を訴えている。「寝つきが悪く、寝付くまでに30分以上かかる(入眠障害)」「途中で目覚めてなかなか寝付けない(中途覚醒)」「質の良くない眠りで熟睡できない(熟眠感欠如)」「思っていたよりも早く起きてしまう(早期覚醒)」、このいずれかの状態が週に3回以上起こり、1ヶ月以上続く場合は、不眠症の可能性が高い。

不眠の原因として、「急激な環境の変化などによるストレス」「睡眠環境の悪さ」「不規則な生活による昼夜逆転や時差ボケ」「加齢」「更年期のホルモンバランスの変化」「アルコール・カフェイン・ニコチン」などがあげられる。ほかには、睡眠時無呼吸症候群や前立腺肥大、不安や抑うつ、自律神経失調症などの疾患や、蕁麻疹や関節リウマチなど、痒みや痛みを伴う疾患が不眠症を引き起こすこともある。

意外な症状が不眠症を引き起こす場合も

生活環境や疾患から不眠症になることが多いが、意外な身体の状態が不眠を引き起こしていることがある。それは「しゃっくり脚症候群」。正式名は「周期性四肢運動障害」といい、あまり知られていない病気だ。睡眠中に脚がしゃっくりのようにぴくっと動き、多い人では100回以上動いてしまうという。たとえ小さい動きであっても繰り返すことで脳が小さな覚醒を起こし、目が覚めてしまうのだ。寝つきは悪くないため、自覚がないまま不眠になっていることが多い。

睡眠薬が効かないタイプの不眠症を治す方法

脚のしゃっくりが原因である場合、睡眠薬を飲んでも効かない。では、どうすればよいのか? 脚のしゃっくりは、脳から長く伸びている脊髄が興奮しすぎてしまうことにより生じる。しかし、体内に鉄分を貯蔵する役割を果たしている「フェリチン」により、脳に鉄が十分に届けられるとドーパミンが増え、脳の働きがよくなり、骨髄の興奮を抑えることができる。
よって治療には鉄分の補給が必要だが、効果が現れるのに2〜3ヶ月ほど時間がかかるのが難点。そこで脳の働きを高める「ドーパミン受容体作動薬」という薬を飲めば即効性があり、1日で治る場合もある。

不眠予防に大切なことは?

日常生活でできる予防法は、まず体内時計を整えるべく、毎日同じ時間に起き、朝の光を浴びること。体内時計が整うことで、感情をコントロールする脳内物質が活性化され、寝つきがよくなる。寝る前には、脳を刺激するカフェインやアルコールを摂取しないようにするのはもちろんのこと、脂っこい食べ物も避けたい。夜中まで胃が消化活動を続け、よく眠れなくなるからだ。また、強い香辛料などの刺激物や糖分も神経を高ぶらせてしまうので、食べる時間帯に注意しよう。

入浴は、寝る30分~1時間前に済ませること。熱い湯は避け、38〜40℃前後のぬるめのお湯につかり、さらに軽いストレッチをして心身をリラックスさせた態で床に入ると、心地よい睡眠へと誘われるはずだ。

また、睡眠環境を整えることも大切。部屋は真っ暗か月明かり程度の明るさにし、室温を夏場は26℃前後、冬場は18℃前後にするとよい。枕は、自分にあったものを選ぼう。

睡眠は、心身の健康の源。不眠は免疫力の低下やホルモンバランスの乱れを引き起こし、動脈硬化や高血圧、うつ病、肥満などさまざまな疾患につながる要因だ。「よく眠れない」と思ったら、そのままにせずに診察を受け、正しい治療をするようにしたい。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部