2015.9.17

毎月22日はスワンスワン(吸わん吸わん)「禁煙の日」! 喫煙について再考する

たばこは嗜好品の域を超えて、身体を蝕む悪魔と化す

禁煙、すわんすわんの日
たばこはお酒と並ぶ二大嗜好品といっても過言ではなく、気分転換に味わって楽しむものとして多くの愛煙家が今でも世界中に存在している。その証拠にあまたの銘柄のたばこが市場に出回っている。

しかし近年、喫煙がもたらす身体への悪影響が取り沙汰され、また一部の喫煙者のマナーの悪さなどが問題となり、世界各国で喫煙を取り締まる風潮が増している。

身体への悪影響については世界保健機関(WHO)から、肺がんを筆頭に多くのがんや循環器疾患、呼吸器疾患、消化器疾患の原因となるほか、妊娠中の女性が喫煙あるいは受動喫煙することで胎児の成長障害を引き起こす危険性も持っていることが指摘されている。

受動喫煙とは、自分自身が喫煙していなくてもまわりに喫煙者がいる場合に副流煙を体内に吸い込んでしまうことだ。これは、喫煙者側の配慮ひとつで防ぐことができるものだが、一部マナーを守らない喫煙者がいる悲しい現実もあり、その結果、公共では分煙、あるいは禁煙スペースが急速に増えている。

ニコチン依存症の恐怖とは

身体に与える影響が悪いことを理解しても、なかなか禁煙することができないのが、多くの喫煙者の悩みであろう。きっかけは軽い気分転換のつもりで始めたとしても、喫煙を重ねるごとに依存状態に陥る恐ろしさをもっている。それがニコチン依存症だ。

ニコチン依存症は、身体的にも精神的にも、たばこから離れることができない、れっきとした薬物依存としての病気として認められている。しかし人はなぜたばこから逃れることができなくなってしまうのだろうか。

ニコチンは肺から吸収されると急速に脳内へ到達、ヒトの快感や満足感を引き起こす脳内部分を刺激し、快感を与えることになる。本来この刺激は神経伝達物質によって行われているが、ニコチンを過剰摂取し続けると、ニコチンでなければ脳神経細胞が動かなくなる。つまり、身体的依存に陥ってしまうのである。

また、心理的にもニコチンによって気分が落ち着いたという記憶にとらわれ、ニコチンが切れると精神的不安定状態になってしまう。この状態にまで進むと、喫煙は嗜好ではなく病気として真剣に治療に取り組まねばならない。

肺がんという喫煙と背中合わせの危険

喫煙者が気をつけなければならないのはニコチン依存症だけではない。依存症になるくらいにたばこと密接な関係にある人は、肺がんというさらに恐ろしい病気とも対面しなくてはならないリスクを背負っている。

肺がんの患者数は年々増加傾向にあり、そのうち喫煙者は非喫煙者を大きく上回る。たばこを吸わない人より吸う人のほうが約4倍、肺がんになりやすいというデータがあり、切っても切れない、背中合わせの関係性にあるといえよう。

たばこを嗜好品程度に楽しむのなら支障はないかもしれない。ただ、喫煙年数が長い人や1日に吸う本数が多い人は、肺がんへの険しい道をみずから歩み続けているのである。

しかし、たばこの量を少しずつ減らしていき、禁煙へと舵を切る勇気を持つことができれば、それが何歳であっても肺がんにかかるリスクはどんどん軽減することができるという研究結果がある。早くやめればそれだけ効果は大きいものになるだろう。

スワンスワン「禁煙の日」の取り組み

今まで深い付き合いをしてきたたばこを突然やめるには勇気が必要で、なかなか一歩を踏み出せない喫煙者も少なくない。ただ、禁煙についてひとりで悩むことはない。現在では、行政をはじめ学校や企業、病院といったさまざまな場面で、禁煙をサポートする取り組みがなされている。

その取り組みを活発化し広めていく意味も込めて、毎月22日を「禁煙の日」とし普及活動が行われている。喫煙・受動喫煙がもたらす害について具体的に学び、ニコチン依存症の恐ろしさを知り、実際に禁煙に向けて意識を変えるための支えとなっているのである。

もっとも勇気と安心を与えられるのは、禁煙は医学的治療を要するものとして病院でしっかりとサポートしてもらえることだ。ひとりでは禁煙を続ける自信がない人でも、専門医師と二人三脚で治療と向き合うことで、喫煙という病気から立ち直ろうという意識を強く持つことができる。

なかなか禁煙できないと悩んでいる人は、さまざまな安心サポートが存在することを支えに、禁煙の日をきっけとしてぜひ第一歩を踏み出してほしい。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部