Colordaでたびたび登場する「健康寿命」。健康寿命を少しでも平均寿命に近づけるには?
日々の健康法としてランニングやウォーキングもいいけれど、自転車はいかが?

始めればきっとハマる、“どこでも自転車ライフ”のススメ。(全6回)

健康寿命 日常生活に制限のない期間のこと。元気に健康で自分のやりたいことを行え、行きたい場所に行け、会いたい人に会える状態を指す。
2017.8.3

Vol.3 もっと快適な自転車ライフへ! 知っておきたい疲れの仕組みと疲労回復の栄養素

乳酸は疲れの原因物質ではなかった


これまで乳酸が筋肉疲労の原因とされてきましたが、さまざまな研究結果により乳酸は疲労物質ではないと証明されました。では、何が疲労の原因なのでしょうか。原因には、「活性酸素」が関与しています。

活性酸素とは、物質を酸化させる力が強い酸素のことを言います。私たちが呼吸で取り込む酸素のうち、2%が活性酸素に変化します。しかし、運動をする際は酸素を大量消費することになり、それによって活性酸素が過剰に発生してしまうのです。活性酸素は、殺菌効果が高く、体内に侵入したウイルスや細菌を取り除いてくれる働きがある一方、増えすぎると正常な細胞までも壊し老化や病気の原因につながります。

その活性酸素が細胞を傷つけ、「FF(ファティーグ・ファクター)」という物質が分泌されます。じつはこれこそが疲労を誘発させる根幹要因。FFはさらに細胞機能を低下させます。FFや傷つき壊れた細胞が老廃物として体内に溜まり、私たちに疲労感を与えるのです。

セルフケアと栄養補給がカギ、疲労を残さないポイント

気持ちよく自転車通勤したのはいいけれど、疲れ切って仕事に差し支えては本末転倒。そこで、疲れを残さないためのポイントをまとめてみました。

到着後は5分でもいいので軽いストレッチを

毒素や疲労物質などの老廃物を血中やリンパへ流し体外に出しやすくしましょう。

自転車の乗車時以外でもお水やお茶をしっかりとる

1日約2リットルが目安です。

到着後に必ず補食を入れる

補食とは、自転車通勤で使ったエネルギーを補うための軽食です。疲労回復と筋肉修復を早めるために取り入れます。補食でベストなのは、炭水化物とタンパク質の組み合わせです。両方同時に摂れる鮭おにぎりはおすすめです。

補食におすすめの炭水化物製品:おにぎり、バナナ、和菓子、カステラ、ジャムパン、あんパン、オレンジシュース、ゼリーなど
補食におすすめのタンパク質製品:鮭、チーズ、牛乳、ヨーグルト、バナナなど

普段から野菜やくだものを摂るよう心がける

疲れにくい身体をつくるために、野菜やくだものを意識して食べ、ビタミンやミネラルを摂りましょう。とくにクエン酸とビタミンB群を一緒に摂ることで、回復力がより高まります。そして、ミネラルのひとつである鉄分も、老廃物やその他栄養素を運ぶ大切な役割を持ちます。

入浴時はコップ1杯のお水がお茶を飲み、温冷浴を行う

温浴で体が温まると血管の緊張が溶けて拡張し、血流がよくなります。冷浴では反対に血管が収縮します。温浴と冷浴を繰り返すことでより老廃物が流れやすくなります。

疲労回復のアシストをしてくれる栄養素

疲れを残さない栄養素と、それを含む食材をご紹介します。どれかに偏るのではなく、バランスよく食事から栄養素を摂り入れましょう。

炭水化物(糖質)

どの栄養素よりも早くエネルギーに変わります。内臓だけではなく、脳の栄養素としても活躍します。運動や仕事前は必ず摂り入れて、身体や頭がスムーズに動けるようにしましょう。ただし、摂りすぎると脂肪として蓄えられるので適量を心がけましょう。また、意外かもしれませんが、砂糖や果糖も炭水化物です。炭水化物は、糖質と食物繊維で構成されているためです。

炭水化物が多く含まれる食材:ごはん、パン、うどん、そば、芋類、はちみつ、果物類、砂糖など

タンパク質

人間の身体は約60兆個の細胞で成り立っています。その材料になるのがタンパク質です。筋肉をはじめ、内蔵、皮膚、血液、髪の毛、爪、歯などをつくっています。

たんぱく質が多く含まれる食材:肉類、魚介類、たまご、大豆、納豆、豆腐、おから、豆乳、チーズ、ヨーグルト、牛乳など

クエン酸

疲労回復に欠かすことのできないクエン酸は、柑橘類や梅干しに含まれる酸味の成分です。クエン酸には「乳酸を排出する働き」と「エネルギーをつくる働き」があります。先ほどお話ししたとおり、今では、乳酸疲労物質ではありません。しかし、クエン酸が疲労回復に有効ではないということではありません。後者の「エネルギーをつくる働き」があるからです。

クエン酸が多く含まれる食材:レモン、グレープフルーツ、みかん、オレンジ、キウイフルーツ、いちご、パイナップル、梅干し、お酢など

ビタミンB群

ビタミンB群は、三大栄養素と言われる炭水化物糖質、タンパク質、脂質を体内で円滑に使うためのサポートをしてくれます。細かく分けると、ビタミンB1、ビタミンB2 、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビオチンとわけられます。その中でビタミンB1は炭水化物糖質代謝、ビタミンB2は脂質代謝、ビタミンB6はたんぱく質代謝をサポートします。

ビタミンB群が多く含まれる食材:肉類、うなぎ、玄米、雑穀米、ライ麦パン、そば、大豆、甘酒、納豆、チーズ、牛乳、たまご、ナッツ類、バナナ、アスパラガス、ブロッコリー、ほうれん草など

鉄分

血液の赤い色のもとであるヘモグロビンの材料になります。ヘモグロビンは酸素や栄養素を身体のすみずみまで運ぶと同時に、老廃物を体外へ出してくれる働きをします。

鉄分が多く含まれる食材:レバー、肉類、魚類、納豆、小松菜、しじみなど

疲れ知らずのとっておきドリンク「甘酒スムージー」

最後に、私が考案したとっておきのドリンク「甘酒スムージー」をご紹介します。疲れを残さないための栄養学ノウハウを詰め込んでいます。

【材料】
小松菜:1/3束
キウイ:1個
リンゴ:1/2個
オレンジ(みかんで代用可):1/2個
バナナ:1本
水or牛乳or豆乳(お好みでOK):100cc
甘酒(液体のものが市販されています):100cc

【作り方】
すべてミキサーに入れて、スイッチを押すだけ! 水分の多い食材から入れると、撹拌しやすいです。

甘酒には、前節でご説明した「疲労回復をアシストしてくれる栄養素」のうち炭水化物、タンパク質、ビタミンB群の3つが入っています。その他の栄養素として、キウイフルーツ、リンゴ、オレンジなどでクエン酸を、小松菜、豆乳、牛乳などで鉄分をプラスしています。1杯で疲労回復を助けてくれる食材が摂れるドリンクです。

私がサポートしているパラリンピック強化選手(自転車競技)も、トレーニング後に飲んでいます。運動強度のきわめて高いトレーニングをこなした選手たちは、食欲低下の状況が多々あります。しかし、トレーニング後は疲労回復と良質な筋肉をつくるため、速やかに炭水化物とタンパク質を摂る必要があります。そんなときに、コップ1杯の甘酒スムージーを飲んでいるのです。また、甘酒スムージーを飲んで胃を動かすことにより、食欲も出てきます。

甘酒スムージーは、自転車通勤前に飲んでも効果的です。お腹が空いている状態やエネルギーが足りない状態で運動をすると、身体は筋肉を壊してエネルギーに変えようとします。筋肉を壊さないよう、しっかりとエネルギー補給をしておく必要があるのです。適度な炭水化物とタンパク質を身体に入れたうえで自転車通勤することで、効率のよい脂肪燃焼と代謝アップが期待できます。


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Colorda編集部