2015.10.26

検査を受けなければ見つけにくい! 初期症状に乏しい口腔がん

罹患率は男女比3:2! 中年以上の男性がかかりやすい口腔がん

口腔がん日本における口腔がんの罹患数は、年間で7,800人前後となっており、がん全体では1%程度を占める。ただ、口腔がんというのはあくまで総称であり、実際は部位に応じたさまざまな病名が存在している。その中でも、舌がんの発症率が高く、頭頸部がん全体の40%程度を占めている。そのほか、歯肉や口腔底、頬粘膜、口蓋などにも生じるのが口腔がんの特徴だ。好発年齢は部位に応じて異なるが、総じて60歳代の患者が多い。また、男女比は3:2で明らかに男性が高くなっている。この数字には、生活習慣と口腔がんに因果関係があることの現れだ。

口腔がんのリスクを高める生活習慣とは

口腔がんのリスクファクターは、その多くが生活習慣に由来している。もっともリスクが高いのは喫煙習慣で、喫煙者の口腔がん罹患率は非喫煙者の7倍、死亡率は4倍にまで高まる。また、飲酒や偏食なども一因となる。からいものや熱いものを日常的に口にしている場合も注意が必要となる。意外に知られていないのが、適合の悪い入れ歯や被せ物だ。これらは口腔組織に不必要な刺激を与え続け、がんの発生を誘発する。初期症状が乏しい病気だけに、悪習慣に由来する口腔組織へのダメージが徐々に蓄積する。

視診や触診の効果が高い! CTやMRIで確定診断を

口腔がんは、病変を肉眼で確認できる珍しいがんで、視診や触診が大きな力を発揮する。ただの口内炎だと思っていたものが頬粘膜がんであったり、気にも留めていなかった舌のしこりが舌がんだったりする可能性がある。そのため、まずは専門家に診てもらうことが早期発見のカギとなる。異常が見受けられると、CTやMRIなどの画像診断に移る。病気が進行している場合は、他臓器への転移もあり得るため、PET-CTを用いて頸部リンパ節などを検査することもある。発見が遅れがちな口腔がんは、摘出することが多く、予後も悪い。それだけに、早期発見を心がけたいものである。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部