2016.8.22
胃がん

胃がんの検査方法と治療法

胃がんは罹患数トップ。しかし死亡数は減少傾向

Gastric Acid日本人の2人に1人がかかり、3人に1人が死亡すると言われているがんは、医療技術の進化により早期発見が可能になってきている。がんの検査方法と治療法シリーズ第3回は、2014年の死亡数第2位の「胃がん」(※1)について紹介する。

胃がんは日本人に発生しやすい悪性腫瘍であるが、死亡数に関しては徐々に減少している。これは胃がん検診による早期発見や治療技術の進歩などが影響しているが、とくにヘリコバクター・ピロリ菌を取り除く処置が普及したことは大きい。ヘリコバクター・ピロリ菌に感染していると、非感染者と比較して5~10倍(※2)も胃がんの発症率が高まることが判明し、この菌の感染の有無を調べる検査が徐々に浸透してきている。このような、最新の胃がんの検査方法や治療法について詳しく解説していく。

胃エックス線検査と内視鏡検査の比較

胃がんは、胃エックス線検査や内視鏡検査によって発見されることが多い。次の表は2つの検査法の特性を比較したものである。

小さな病変 被曝 病変の切除 時間
X線 見えない あり 不可 短い
内視鏡 見える なし 長い

胃エックス線検査とは

胃エックス線検査とは、造影剤であるバリウムを飲んで受ける検査で、人間ドックに盛り込まれている項目でもある。バリウムを飲むことで、胃の形態や粘膜の状態がエックス線画像に投影されるため、胃がんに見られる胃粘膜の増殖や潰瘍(かいよう)といった病変を、黒と白の陰影によって視覚的に捉えることができる。これは胃エックス線検査が大きな病変を見つけるのに適しているポイントである。

メリットは、費用が比較的安く、検査時間も短いこと。デメリットは、被曝することだ。そのほか、バリウムで吐き気をもよおしたり、検査後に一時的な便秘を引き起こしたりする可能性もある。

内視鏡検査とは

内視鏡検査は直接器具を口から胃の内部へと挿入する方法で、病変を映像として捉えることができる。一般的に胃カメラと呼ばれるこの検査法だ。内視鏡カメラは鼻から通るほどの小型で、胃に到達すると微細な異常も鮮明な映像によって見つけることが可能だ。つまり、内視鏡検査は小さな病変に強い検査法といえる。

メリットはエックス線検査と異なり被曝する恐れはないこと。そして何より、検査中に病変が見つかった場合は、その場で切除することも可能なことだ。小さいポリープであれば即切除可能であり、生検のための組織採取も行われる。デメリットは、カメラ挿入時に痛みや咽頭反射が起きるケースがあることだ。そのため、挿入に伴う痛みを軽減するために麻酔が用いられたり、鎮痛薬が投与されたりすることがある。また、内視鏡を口ではなく鼻から挿入することで痛みの軽減を図ることもある。

一度は受けておきたいヘリコバクター・ピロリ菌検査

胃がん患者の多くはピロリ菌に感染していることがわかってきており、胃がんのリスクを知るためには、まず一度、ピロリ菌の感染の有無を調べることも有効だ。検査方法は、尿素呼気試験や抗体検査などがある。尿素呼気検査は、呼気に含まれる二酸化炭素の濃度を測るもので、ピロリ菌に感染している場合は非感染者よりも高濃度となる。抗体検査は、血液中に含まれるピロリ菌の抗体を調べるもので、どちらの検査もピロリ菌の感染の有無を簡便に調べることができる。

ちなみにピロリ菌は、飲み水の環境整備の背景などから50代以上の感染者が多い。該当する人は早めに一度、ピロリ菌検査を受けておきたい。

胃がんのステージ別治療方針

胃がんの治療方針はステージに応じて、ある程度、内容が決まってくる。以下の示す表は、胃がんにおけるステージ別の治療内容である。ただし、治療方針は患者個々人で変わるものであるため、あくまで目安として捉えてもらいたい。

治療方針
ステージⅠa 内視鏡治療
ステージⅡbⅢc 手術 化学療法
ステージⅣ 化学療法 放射線治療 対症療法

ステージⅠaのような早期の胃がんであれば、内視鏡治療で事足りることが多い。それよりステージが進行した胃がんでは、本格的な外科手術が行われる。がんの浸潤度によっては胃を全摘することも珍しくはない。ただ、胃がんの末期であるステージⅣまで達してしまうと、外科手術のような根治療法は望めなくなる。放射線や薬剤を用いた治療をメインに、対症療法に徹するケースが多いといえる。

このように胃がんは、内視鏡という特別な装置を使うことで、病変部の発見や早期治療まで行うことが可能である。それだけに最近は、検診などで胃エックス線検査ではなく、内視鏡検査を採り入れている施設も多い。

※1 人口動態統計によるがん死亡データ1958年~2014年(国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」)
※2 ヘリコバクター・ピロリ菌感染と胃がん罹患との関係:CagAおよびペプシノーゲンとの組み合わせによるリスク(国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター)

小坂 英和(こさか ひでかず)
この記事の監修ドクター
こさか内科・内視鏡内科 院長
医学博士(神戸大学)/日本内科学会 総合内科専門医/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医/日本消化管学会 胃腸科専門医/日本リウマチ学会 リウマチ専門医/日本プライマリ・ケア連合学会 家庭医療専門医・指導医

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Colorda編集部