2016.3.10
検査食

人間ドック前日の検査食、食べなければNGなの?

大腸がんに有用な内視鏡検査

highlighted colon検査食が必要なケースは、おもに大腸を調べるときだ。大腸がんの罹患率は、国立がん研究センターの報告によると、年々増加する傾向にある。死亡数においても、肺がんと並び減少する兆しが見えない。それだけに大腸がんへの備えはといえる。

そこで有用なのが大腸内視鏡検査だ。肛門から内視鏡を挿入して、大腸の内壁を観察する検査法である。大腸内視鏡検査には痛みを伴うことがあるが、より快適に検査を受けるのであれば、検査食を利用したい。おいしくないという風評が流れている検査食であるが、そのメリットについて考えてみたい。

検査食は大腸検査の痛みを和らげる

大腸はとても軟らかい組織で、血管や神経も豊富に分布している。そこに金属などから成る内視鏡を挿入し、大腸の壁を引っ張れば、痛みを感じてもおかしくはない。検査中の身体への負担やリスクを軽減することが、事前の検査食が必要な理由のひとつだ。

具体的には、消化時に出るガスを減らし、内視鏡の通りをよくする。口腔から摂り入れた食物は、食道、胃、小腸を経て大腸へと運ばれる。その過程で徐々に消化が進むとともに、ガスを発生させる。空気やガスが充満した大腸は膨張するため、内視鏡を挿入しにくくなる。無理に押し込んで、内壁を構成する大腸粘膜に器具が接触すれば、痛みを伴うことも少なくない。

そこで消化によい検査食の出番だ。お粥やスープという食品形態が多く、前日に食べても翌朝にはきちんと消化されるようにできているので、検査時には消化に伴うガスの発生を抑えることができる。

検査食は大腸検査の精度もあげる

検査食は、検査の精度を高めるためにも検査食が必要だ。検査食は消化によいだけでなく、便通をよくする働きもある。

消化途中の食物残渣や糞便などが大腸に宿っていると、そもそも視界を遮ってしまう。もしも、ポリープなどに糞便が重なっていたら、疾患を見逃す可能性もある。大腸内視鏡検査は、触診のように患部に直接触れることができず、診断材料は、内視鏡カメラを通してモニターに映し出される映像のみ。精度の高い診断ができるように、腸の状態を万全にするために検査食は必要なのだ。

つまり、消化しやすい検査食を食べることで、大腸内視鏡検査に伴う痛みを軽減するだけでなく、検査結果も得られるということになる。これが検査食を利用する2つのメリットといえる。正確な診断材料が得られない検査は、かえって有害となることもあり得る。そういう意味では、ふたつ目のメリットの方が重要といえるかもしれない。

最近では、グリコやキューピーといった食品メーカーが検査食を販売している。味の面でも優れた、普段の食事に近い満足感も得ることができる検査食だ。大腸検査を有益なものにするためにも、検査食はすべて残さず食べることをおすすめする。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部