2016.10.3
骨肉腫

骨肉腫の検査方法と治療法

10〜20代の若い世代に起こる希少ながん

Knee bone pain日本人の2人に1人がかかり、3人に1人が死亡すると言われているがんは、医療技術の進化により早期発見が可能になってきている。がんの検査方法と治療法シリーズ第13回は、10〜20代の若い世代に多く、ただ罹患数は年間200名程度と希少な、骨にできる悪性腫瘍「骨肉腫」について紹介する。

骨腫瘍とは、骨にできる腫瘍全般のこと。そのなかの代表的な悪性腫瘍が「骨肉腫」である。骨肉腫は、小児の骨に発生する悪性腫瘍の中で、最も頻度の高い代表的な骨のがんであり、10代の思春期、つまり中高生に発生しやすい病気だ。「骨のがん」と呼ばれることもあるが、骨肉腫の悪性腫瘍は一般的ながんのように上皮組織由来ではなく非上皮組織であるため、「肉腫」という名称が付いている。ちなみに、上皮組織とは、身体の表面や器官を覆う細胞層のことを言う。

骨肉腫は、脛骨や上腕骨といった比較的太い骨に発生しやすい。膝関節も好発部位のひとつであるため、運動障害を伴うケースも珍しくはない。ここではそんな骨肉腫の検査法や治療法について詳しく解説する。

X線検査からCT、MRI検査へ

問診や触診などで骨肉腫が疑われた場合、まず始めに単純エックス線検査が行われる。つまり一般的なレントゲンを指し、一方向から撮影した二次元の画像で判断する。エックス線は硬組織を描出するのに優れた検査であるため、骨肉腫の診査には有用だ。単純エックス線検査によって、骨の膨隆や変形などが見られたら、続いて精密検査を受ける。

骨肉腫の精密検査では、CTとMRIが用いられる。それぞれの画像診断の違いを見てみよう。

骨破壊の程度 微細な石灰化 組織型の判定 内部構造 病変の範囲
CT 不適 不適 不適
MRI 不適 不適

CTとMRIでは、得意とする領域が大きく異なる。単純にいうとCTはエックス線を使った画像診断で、骨や水分の少ない組織である硬組織の診断が得意だ。一方、MRIは強力な磁力を利用した画像診断で、水分を多く含む臓器や血管などの軟組織の描出に優れている。そのため、CTは骨破壊の程度や骨の微細な石灰化などを判別でき、MRIは腫瘍の組織型を判定できたり、腫瘍の内部構造や病変の範囲なども観察したりすることが可能だ。2つの検査では、見えるものが大きく異なってくる。両検査を活用し該当箇所を細かく輪切りに撮影し診断を下す。さらに、CTによって、内臓やリンパ節に転移があるかどうかを調べたり、放射性同位元素を用いる骨シンチグラフィーを行う。

骨肉腫の治療法

骨肉腫の治療は、外科手術による切除療法が主体となる。腫瘍化している組織を掻き出すのではなく完全に摘出するため、正常な組織を含んで切除する広範切除が行われる。そのため、術後に運動機能が著しく低下することが多い。その際は、併せて再建手術が行われる。また、術前に腫瘍組織を小さくしたり、転移や再発を防止したりするために術後、放射線療法と化学療法が併用される。

骨肉腫は膝の関節などに生じると、術後の運動機能に大きく影響があり、ステージが進むほどQOL、つまり人間らしく自分らしく生活する度合いも低下するため、早期発見早期治療を心がけたい。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部