2016.9.29
胆道がん

胆道がんの検査方法と治療法

世界的に見て日本人の罹患率が高い胆道がん

3D illustration of male Gallbladder, x-ray medical concept.日本人の2人に1人がかかり、3人に1人が死亡すると言われているがんは、医療技術の進化により早期発見が可能になってきている。がんの検査方法と治療法シリーズ第12回は、世界的に見て日本人の罹患率が高い胆道がんについて紹介する。

肝臓で産生された胆汁は、一旦胆のうで濃縮され蓄えられ、胆管を通って十二指腸へと流れ出る。胆のうと胆管を合わせて、胆道という。胆道がんとは、胆管がんと胆嚢がん、また十二指腸の入り口である乳頭部にできるがんの総称なのだ。

胆道がんの症状で最も多いのは黄疸。胆道に悪性腫瘍ができると、胆汁の流れが悪くなり血管に逆流するため、皮膚や目が目に見えて黄色く変わるのだ。しかし、初期は自覚症状に乏しい。ここではそんな胆道にできるがんの検査方法および治療法について詳しく解説する。

血液検査と腹部超音波検査で病気を探る

胆道がんが疑われた場合、まずは血液検査と腹部超音波検査が行われることが多い。腫瘍によって胆道が閉塞すると、閉塞性黄疸となり、血中のビリルビンが高値になることがある。ビリルビンとは、赤血球中のヘモグロビンが肝臓や脾臓などで破壊されることで生成される物質で、通常は、胆管を通り十二指腸に送られたあと、腸内細菌により分解され、便として排出される。しかし、胆道にがんがある場合、血液中に流れ、腎臓から尿として排出されるのだ。ビリルビンのほかにも、胆道が特異的に産生している胆道系酵素の値も高くなる場合があり、それを調べるために血液検査を行う。

また、腹部超音波検査は、胆道にできた腫瘍などを視覚的にとらえることが可能だ。いずれもごく簡単な検査だ。

胆道がんの精密検査、「MRCP」と「ERCP」を比較

CTやMRIの画像検査を行い、胆道がんの疑いがさらに深まれば、MR胆管膵管撮影(MRCP)や内視鏡的逆行性膵胆管造影検査(ERCP)といった精密検査が行われる。両検査の特性を比較した表を以下に示す。

被曝 造影剤 鮮明度 合併症
MRCP なし なし 比較的低い なし
ERCP あり あり 比較的高い あり

MRCPはMRIの一種であり、強い磁石と電波を用いて体内を可視化する検査だ。検査の過程で被曝することはない。また、造影剤が不要で患者は装置の上に横たわるだけでよいため、比較的、手軽な検査といえる。ただ、ERCPと比べると得られる画像の鮮明度が劣るというデメリットはある。

一方、ERCPはエックス線を用いた画像検査で、被曝を伴う。また、内視鏡を用いて直接胆管に造影剤を流し込むため、人によっては痛みや不快を感じる場合がある。さらにデメリットをあげるとすれば、内視鏡を移動させる過程で、胆管炎や胆嚢炎といった合併症を引き起こす可能性がある。そうしたデメリットがある反面、得られる画像の鮮明度が高いという大きなメリットがある検査だ。

胆道がんの治療法

胆道がんでは、進行度が低いほど切除療法が適応しやすくなる。ステージⅠやステージⅡの段階であれば、腫瘍が浸潤した臓器を外科処置によって摘出することが多い。それ以上進行すると、切除療法を適応するかどうかは、それぞれの医師の判断に委ねられることになる。ステージⅣに至れば切除不可能なケースがほとんどで、化学療法や放射線療法で対応するのが一般的だ。ただ、進行度と治療法はあくまで目安であり、どの治療法を選択するかは患者の年齢や身体の状態、医師の方針によって大きく異なる。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部