2016.10.17
60代男性の健康リスク

60代男性が受けておきたい検査

60代男性の4割は生活習慣病

Medical staff moving patient on bed, in hospital corridor
厚生労働省が実施した2014年国民健康・栄養調査によれば、60代男性の42.6%がなんらかの生活習慣病と診断されており、この年代でとくに増加傾向にあるのが糖尿病(20.1%)と高血圧症(31.8%)である。糖尿病には網膜症、腎症、神経障害といった危険な合併症があり、脳梗塞と心筋梗塞のリスクも健常者に比べて2〜3倍になると言われている。高血圧もまた、これらの疾患を助長する要因となる。どちらも初期的には自覚症状が現れないので定期的な検査が必要だ。

糖尿病(耐糖性異常)、高脂血(コレステロール)症、肝機能異常など多くの生活習慣病は身体測定(BMI)、血圧、血液検査などの簡単な項目で診断できるので、生活習慣病リスクの高まる60代になったら少なくとも年に2回程度は受診しておくべきである。

また、血液検査で高脂血、高コレステロールと診断された場合には、心臓疾患や脳血管疾患の原因となる動脈硬化の進行が懸念されるので、CTやMRIによる精密検査で血管の状態(狭窄、血栓、損傷、動脈瘤・静脈瘤)も調べておくことが望ましい。

がんが多発する60代には、全身のがん検査を

2010年の国立がん研究センターの全国推計資料によると、60代男性に発症が多くみられる臓器別がんは胃、前立腺、大腸、肺、肝臓、膵臓の順になっている。50代のデータと比較すると最も増加率の高いがんが前立腺の5.6倍で、次いで肺の3.4倍、そのほかは2.3〜2.9倍である。

死亡者数(全体に占める割合)では肺23.5%、大腸12.7%、肝臓10.5%、胃9.9%、膵臓8.0%、前立腺1.3%の順であり、50代との比較では平均で約3.2倍となっている。さまざまな臓器でがんが多発し始める年代であることを認識しておかなくてはならない。

全身のがんを診断する有効な手段として、PET-CT(全身・肺)、MRI(肝臓・胆嚢・膵臓・腎臓・膀胱・前立腺)、腫瘍マーカー(胃・肝臓・前立腺)、内視鏡(食道・胃・大腸)などがあり、複数の検査を組み合わせて行い、がんを発見する。

年に一回全身のスクリーニングをしておけば、死亡率の高い危険ながんでも早期発見によって治療へとつなげることも可能なので、ぜひとも受診を検討してみてほしい。とくに一回で全身のがんを調べられ、小さながんも発見することができるPET検査は、がんの心配がある人は、一度受けておくといいだろう。ブドウ糖に似たFDGという薬を投与し、全身の細胞の中から、がん細胞だけをマーキングする画像診断だ。その結果をもとに、リスクが高い臓器を定期的に検査し、リスクが低い臓器は3年に一度と間を空けて検査するなどの判断も可能だ。

生活習慣病やがん以外にも呼吸器・循環器の疾患、心機能、脳血管障害などさまざまな病気リスクが高まる年代である。人間ドックなどを上手に利用して健康に長寿を保つためのメンテナンスを続けることが重要である。

安里 満信(あさと みつのぶ)
この記事の監修ドクター
あさと医院 院長
医学博士、日本救急医学会専門医

Colorda編集部