2016.10.20
腎細胞がん

腎細胞がんの検査方法と治療法

50代以上の男性は要注意! 腎がん

Kidney cancer medical concept as cancerouse cells in a human body attacking the urinary system and renal anatomy as a symbol for tumor growth treatment and risk.日本人の2人に1人がかかり、3人に1人が死亡すると言われているがんは、医療技術の進化により早期発見が可能になってきている。がんの検査方法と治療法シリーズ第16回は、50代後半から増加傾向にあり、男性に多い腎がんについて紹介する。

腎臓は血液をろ過し、尿を生成する重要な臓器だ。体内の老廃物を身体の外へ排出する働きがある。そこに悪性腫瘍ができる病気が腎がんである。腎がんには腎細胞がんと腎盂(じんう)がんの2種類が主であるが、腎がん全体の約9割は腎細胞がんが占めている。ここでは、そんな腎細胞がんの検査法や治療法について詳しく解説する。

腎細胞がんを調べる「ダイナミック造影CT検査」と「腹部超音波検査」の比較

腎細胞がんではおもに、ダイナミック造影CT検査と腹部超音波検査が行われる。この2つの検査を比較してみよう。

被曝 時間 費用 リアルタイム
造影CT あり 比較的短い 高い 不可
腹部超音波 なし 比較的長い 安い

ダイナミック造影CT検査とは、通常の造影CTよりも急速に造影剤を静脈から注入する検査だ。およそ2倍の速度で造影剤を注入することによって、血管の状態をより鮮明に写し出すことが可能となる。ただ、造影剤を注入して撮影するという行為を複数回行うため、検査時間が比較的長く、被曝量をはじめ、注射による患者の心身の負担も比較的多くなるといえる。ダイナミック造影CT検査は、腎細胞がんで非常に有用であるが、どこの医療施設でも受けられるわけではない。

一方、腹部超音波検査は非常に簡便だ。腹部にゼリーを塗って、プローブと呼ばれる器具を接触させるだけである。被曝がなく、費用も安い。そして何より、リアルタイムで観察できるため、血流の状態や臓器の動きなどを見て取ることが可能だ。ただし、ダイナミック造影CTほど細かい病変を見分けられるわけではない。

ほかにも通常のCTやMRI、それから血液検査や尿検査も一般的に行われる。

腎細胞がんの治療法

腎細胞がんの治療には、基本的に腫瘍の切除術が行われる。切除する範囲は病態に応じて異なり、部分切除除術と腎摘除術に分かれる。ステージⅢやステージⅣになると、腎臓だけではなく、所属リンパ節も摘出することになる。さらに遠くの組織に転移している場合は、併せて化学療法も実施される。

腎臓は1対存在しているため、ひとつを全摘除したとしても、その機能がすべて奪われるわけではないが、がんの浸潤が激しく、両方の腎臓を摘除した場合は、人工透析などによって腎機能を補っていくこととなる。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部